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第11話 猫耳姫の初夜を断った青魔導士、当然の報いを受ける

アリステルは、絹でできた不祥事としか呼びようのないものを身にまとい、戸口に立っていた。


白。

だいたいは。


蝋燭の光にまで言い分を持たせるほど薄い。


胸元は大胆に開いていた。もっとも、仕立てた人間が期待したほど中身は多くなかったのだろう。


腰から太腿にかけて両脇が開いており、そこをつないでいるのは、役に立たなさすぎて儀式用としか思えないリボンとレースだけだった。


下に穿いている小さなショートパンツは、透け方が侮辱に近く、慎みへの譲歩と呼ぶにはあまりに頼りない。


尾は背中側の切れ込みから通されていて、彼女が羞恥に耐えかねて一度尾を振るたびに、その全体がますます弁護不能になっていった。


廊下の五歩ほど先では、ミラが腕を組んで立っていた。殺意が職務の一環に思えてきた女の顔をしている。


アリステルの顔は真っ赤だった。


俺は彼女を見た。


それからミラを見た。


もう一度、アリステルを見た。


「名家の姫君って、本当に変態なんだな」


ミラが目を閉じた。


アリステルは背筋を伸ばした。


それによって、リボンがかなり危険なことになった。


「慣習です」


「だろうな」


彼女の顎が固くなる。


「公の仮誓約の後、当人同士は初夜を私的に過ごすものとされています」


俺はもう一度、彼女を見た。

いやらしい意味ではない。

職業的にだ。


判定は、なお壊滅的だった。


「駄目だ」


俺は扉から一歩下がった。


「絶対に駄目だ」


拒絶は、彼女が取り繕うより先に届いた。


耳が止まる。尾が硬直する。息が詰まる。


それから怒りが駆け込んできて、もっと柔らかいものから彼女を救った。


「ずいぶん早い拒否ですこと」


「ああ」


「考えるふりすらなさいませんでしたわね」


「姫さん、扉を開けた瞬間には考えた。それが問題だった」


ミラが笑いを噛み殺したような音を漏らし、それを咳に変えた。


尊敬に値する自制心だった。


アリステルは肩越しに彼女を殺しそうな目で睨み、それから俺へ向き直る。


「私は、望んでここに来たわけではありません」


「それは安心だな」


「三人の女と一人の巫女に、拒めば明日が耐えがたいものになると告げられたから来たのです」


「宗教らしい話だ」


「この街らしい話です」


彼女は噛みつくように言った。それから、少しだけ声を落とす。


「私が生まれた場所らしい話です」


「なら、状況を改善してやる」


俺は横へ退き、親切に廊下を指した。


「拒め」


彼女の顔が、さらに危険な赤へ変わった。


「そんなに単純なことだと思っていらっしゃるの?」


「最初のうちは、たいていそうだ」


彼女は俺を見つめた。


怒っている。

屈辱に染まっている。


そして、そのどちらでもない何かが、必死に表へ出ないよう耐えていた。


「あなたは、早すぎました」


「ああ」


「誇ることではありませんわ」


「誇ってはいない。実務的なだけだ」


彼女の耳が一度、鋭く揺れた。


裏切られたような動きだった。


「実務的」


彼女は繰り返した。


「ええ、そうでしょうね」


そこで目をそらした。


それだけで、次に出る言葉にどれほどの代償がかかったのかは十分だった。


「このような家で育つ娘が、そういう夜がどうあるべきか、一度も聞かされずに育つと思いますの?」


声は低くなっていた。


「誓いと、絹と、正しく選ばれるということの意味を、誰にも頭に吹き込まれずにいるとでも?」


俺は何も言わなかった。


「わかっています」


彼女は早口になった。


一度出始めた言葉に追いつこうとしているみたいだった。


「今日が何だったのかも、彼らが何に仕立てたのかも、私に何を期待しているのかも、わかっています。これは政治で、信仰で……」


そこで一度、言葉を噛み殺す。


「……追い詰められた者たちが、儀式という衣を着せたものです」


彼女は唾を飲んだ。


「わかっています」


目が俺に戻る。そこにあったのはほとんど怒りだった。怒りしか、彼女に残っていなかったからだ。


「それでも、せめて少しは、私がそこまで選びようのない相手ではないふりくらい、してくださってもよかったのではありませんか。私が敷居を越える前から、答えが出ていたような顔をなさるのではなく」


そして、かなり意外なことに、彼女はそのまま中へ入ってきた。


招かれてもいないのに、ミラが外から扉を閉める。


裏切り者め。


アリステルは部屋へ三歩ほど入ったところで、文机の上に広げられたものに気づいた。


顔に浮かんでいた怒りの形が変わる。

和らいだわけではない。ただ、向きが変わった。


「持ってきたのですか」


俺はすぐには答えなかった。


彼女の目が、祈祷札と、書き写した名前と、割れた神殿の標をなぞる。


「これは、何ですの」


「名前だ。残っていた分だけな」


彼女はしばらく机を見つめていた。


「あなたについては、いろいろ想像していましたけれど」


ようやく、彼女は言った。


「村の書記官は候補にありませんでしたわ」


「期待外れだろうな」


「少し。ほとんどならず者で決まりかけていましたもの」


「ほとんど?」


その視線が俺へ滑る。


また鋭さを取り戻していた。


「あなたは、印象をややこしくしすぎます」


屋敷の奥のどこかで、鐘はようやく興奮するのをやめ、ただの飾りに戻っていた。


部屋の中では、繋ぎが俺たちの間に座っている。

まるで、何かを聞いているみたいに。


アリステルはもう一度、名前へ目を落とした。


「この方々は、見知らぬ者として葬られるところだったのですね」


「ああ」


彼女の視線が、俺の肩に濃くなり始めた痣へ移る。それから、また机へ戻った。


「評判を悪く見せたい男にしては、悪い癖ですわ」


もう、会話が本物に近づきすぎていた。


即座に気に入らなかった。俺は顔をそらした。


「青魔導士が、俺の家族に返せるものより多くのものを奪っていると気づける年になった頃、俺は家を出た」


部屋が、その言葉の周りで静止した。


俺は一度、肩を回した。すぐに後悔した。山で転がった時にやった関節が、奥から恨みがましく痛んだ。


「最初は噂だった」


俺は続けた。


「それから買い手が減った。やがて司祭が、前より頻繁に村へ来るようになった。人は、不幸に名前をつけられるとわかった途端、やたら信心深くなる」


アリステルは何も言わなかった。


「何年かして戻った」


「自分が間違っていたのかもしれないと思えるくらいには、年を取ってからだ。あるいは、役に立てるかもしれないと。もしくは、その両方だな」


口元が歪む。


「家には別の子供がいた。俺が知るべきではない子供だ。母の顔をした者はいなかった。父の名を持つ者もいなかった。ただ、その土地を使っている家族がいて、俺の記憶と合う記録は何も残っていなかった」


アリステルの声は、思ったより静かだった。


「名を変えたのですね」


「たぶんな」


「確かめてはいないのですか」


「ああ」


また沈黙が落ちた。今度は空っぽではない。ただ、近かった。


アリステルが一歩近づく。触れるほどではない。意味を持つには十分だった。


「あなたにも、柔らかいところはあるのですね」


彼女は小さく呟いた。目が俺を見上げる。


「なんて、不都合なことでしょう」


「姫さん――」


「今は、姫さんと呼ばないでください。あなたはこの二日、私を荷物か、厄介事か、ひどい間違いのように扱ってきました。それなのに、私がこんな格好で来て、わかりやすい得を取れる状況になっても、一人で座って、見知らぬ人たちの名前がきちんと残るようにしている」


その視線は、俺から離れなかった。


「そういうことを知ってしまうのは、とても腹立たしいことなのです」


空気の中には、誠実さが傷をつけるだけの余白がありすぎた。俺のような男は、そういう瞬間を信じて生き延びてきたわけではない。だから俺は、誠実さが危険になった時に、俺のような男がいちばん得意なことをした。


最初に、俺の手が彼女の腰を捕まえた。役に立たないほど薄い絹越しに、指が沈む。


彼女が硬直した。


そこで止めるべきだった。


代わりに、俺は手を滑らせた。衣の脇が開いた、むき出しの肌へ。温かい肌に掌を押し当て、腰のリボンのひとつを親指で引っかける。それを使って、彼女を半歩だけ引き寄せた。


それだけで、彼女は言葉を失った。


一呼吸のあいだ、目を見開いたまま、驚きに身体を強張らせて立っているだけだった。


絹越しに、彼女の熱が伝わる。


掌には、彼女の腰から尻へかけての確かな丸みが収まっていた。恥知らずなほど温かく、現実味がありすぎて、俺の脈が古く疲れた飢えみたいなもので乱れた。


そんなものに従う資格など、俺にはなかった。


この瞬間に、何か意味を持たせることもできた。


だからこそ、俺はそうしなかった。


「なるほどな」


声が自然と低くなった。


「足りない分は、そっちに回っていたわけだ。家も、絹を使う場所を間違えたな」


平手が俺の頬を打った。


乾いた木が割れるような、鋭く澄んだ音だった。


俺の顔が横を向く。


いい当たりだ。

手首が強い。

振り抜きも綺麗だった。


アリステルはそこに立ったまま、荒く息をしていた。


片手はまだ半ば上がったまま。目には怒りが燃えている。


その下に、気づいた瞬間こちらが後悔したくなるほど傷ついた何かがあった。


「あなたという方は……本当に最低ですわ」


「ああ」


「今のは――」


彼女は言葉を止め、唾を飲み込んだ。


二度目の試みは、もっとひどく失敗した。


「私は、ただ――」


そこで自分から言葉を断ち切り、身を翻して、扉を壁に叩きつける勢いで開けた。


ミラは外にいた。

さっきとまったく同じ場所に。

少しも驚いていなかった。


アリステルは裸足のまま、リボンと怒りをまとって彼女の横を通り過ぎていった。


ミラは一秒だけ残った。俺を見た。


それから、すでに頬に浮かんでいるはずの赤い跡を見た。


「当然です」


そう言って、扉を閉めた。


俺は静かな部屋に立っていた。


肩は疼き、頬はひりつき、机の上ではまだ墨が乾ききっていない。


それから椅子に戻り、筆を取って、目の前の未完成の名前を見つめた。


見えてはいなかった。


ネフェレットは、叩きもせずに現れた。扉からではない。ただ唐突に、そこにいた。


庭を背にした大きな窓枠の上で、あぐらをかいている。あの馬鹿げた白い髪が、月光が礼儀を忘れたみたいに、彼女の周りへこぼれていた。


「せっかくのご褒美を台無しにしたわね」


俺は顔を上げなかった。


「点数を稼いでいた覚えはない」


「あら、稼いでいたわ」


裸足が窓枠の上で一度揺れた。


「忠実な街。由緒ある家。そこそこ礼儀正しい夜。わたしの基準では、あなたはほとんど模範的だったのよ」


「リボン姿の娘が、あんたの言うご褒美だったのか」


「そうよ。かなり気前のいいご褒美だったわ」


「俺は、彼女の父親でもおかしくない年だ」


ネフェレットは首を傾げた。


「違うわ。あなたは、節度を年齢と取り違えるくらいには年を取っているだけ。別の欠点ね」


「そこが問題じゃない」


「ええ」


彼女はあっさり認めた。


「問題は、あの子が部屋に入ってきた時、あなたの顔に全部書いてあったこと。欲しかった。けれど拒んだ。なかなか勉強になる光景だったわ」


俺は筆を置いた。


「彼女は命じられて来た。義務に喉を掴まれて、ここまで引きずられてきたんだ。従うことと選ぶことを、まだ同じものだと思っている娘から、そんなものを受け取る気はない」


未完成の名前へ視線を戻す。


「それに、俺はそこまで扱いやすくない」


ネフェレットはしばらく黙っていた。彼女が黙る時は、たいてい危険か誠実のどちらかだ。もっとも、彼女にとってその境目は飾りでしかない。


「ただ一人でいるのが上手なだけかと思っていたわ」


小さく呟く。


「独り身でいるのは、それなりに上達した」


「ええ。痛々しいくらいに」


彼女は窓枠から音もなく降り、文机へ歩いてきた。床板に触れる髪の端を引きずりながら、書き写された名前を見下ろす。どれにも触れなかった。


「だからこそ、あなたは自分で思っているよりそのクラスに向いているのよ」


俺は乾いた声で一度だけ笑った。


「半裸の姫君を拒んだからか」


「差し出された身体と、預けられた心の違いに気づいたから」


緋色の瞳が俺へ移る。


「大抵の男なら、自分は運がいいと思ったでしょうね。あなたは面倒な生き物だから、絹に縫い込まれた傷の方に気づいて、理屈で身を引いた」


俺は眉を寄せた。


「褒め言葉にしては、ずいぶん嫌な響きだな」


「わたしには、証拠に聞こえるわ」


「何の」


彼女の笑みが、ゆっくり深くなる。


「あなたが、女たちが身を滅ぼすにはちょうどいい青魔導士だという証拠」


ネフェレットは窓の方へ向いた。


「青魔導士は、昔からそうだった。古い物語では、それは警告として語られていたの」


今度の笑みは、少し遅れて浮かんだ。


「女たちは、あまり聞き入れなかったけれど」


俺は彼女を見た。


「ずいぶん甘いことを言うな」


「でしょう」


彼女は身を寄せた。髪が俺の肩を越え、机の上へ帳のように流れる。


「それに、悲劇みたいに扱うのはやめなさい。絆は選ばれなければならないと知っている男は、あなたが思うより珍しいのよ。そういう男ほど、自分には資格がないふりをしたがるけれど」


「それは、かなり呪いに近い響きだな」


「ん」


ネフェレットは身体を起こした。


「弱った瞬間を、口に刃物をくわえた傷ついた犬みたいに噛み荒らし続けるなら、そうでしょうね」


正論だった。

不愉快だった。

どちらも気に入らなかった。


ネフェレットは窓の方へ戻りかけ、そこで足を止めて肩越しに振り返った。


「扉の外にいた小さな角の侍女」


「ミラか」


「ええ。もうあなたのことが嫌いみたいよ」


「心強いな」


「違うわ。あなたがアリステルに感じさせるものが嫌いなの」


ネフェレットは訂正した。


「別の問題よ。ずっと面白い問題」


俺は鼻筋をつまんだ。


「頼むから、俺の周りに厄介事を集めるのをやめてくれ」


「いやよ」


楽しそうに言って、彼女はまた消えた。


残されたのは月明かりと、香の匂いと、天が俺の睡眠を台無しにすることへ個人的な関心を持ち始めたような感覚だけだった。


俺は紙の上の名前へ目を戻した。

未完成の名前へ。

筆が途中で止まったせいで、墨が溜まっている線へ。


屋敷のどこかで、扉が静かに開いた。

それから、もう一つ。

そして沈黙。


フリルグレイヴは、金持ちの場所が眠る時の眠り方をしていた。


朝まで醜いものなど届かないふりができる程度には、安全な眠り方だ。

俺は違うと知っていた。


肋骨の下で、繋ぎが一度脈打つ。痛むほどではない。ただ、この屋敷のどこかで、絹の衝立と古い法と多すぎる灯籠の向こうに、俺が侮辱して平手打ちさせた姫君が、怒りより悪いものを感じまいと必死になっていることを思い出させる程度には。


その努力は理解できた。だからといって、楽になるわけではない。


俺はもう一度筆を取り、名前がすべて終わるまで書き続けた。


死者の方が、生者より単純だった。


少なくとも、リボン姿で部屋に現れたりはしない。

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