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幻想帝都 神州御親領衛記  作者: ニュートリノ鈴木
一章 神州と言う國
44/189

四十二話 景道院の午後


四十二話


42-1 景道院の午後



「……ここを使うのか」


車両の窓越しに見える石造りの門を見て、紺野健太郎は低く言った。

国立景道院。 帝都の神術師養成学校として名が通っている場所だ。名門という言い方もできるし、位階社会の早い段階からの振り分け装置だと言っても、たぶん間違いではない。どちらの顔を先に見るかで、この場所の印象は変わる。

助手席の護国宗一が地図を膝に載せたまま答える。


「会場は本棟ではなく西側の公開講義棟です。外部団体への貸し出し実績もあります。形式上は問題ない」


後部座席の東雲丈雲が続けた。


「問題がないこと自体が、今回の問題だな」


その隣で護国綾瀬が窓の外を見たまま、少し棘のある声を落とす。


「景道院の名を借りれば、父兄も警戒を緩めます。しかも“低位神術師向け生活相談会”の名目なら、止めにくい。……上手いです」


言い方は冷えているが、冷え方の奥に苛立ちがある。 自分の通う場所を、明灯会に使われることへの苛立ちだ。そこは兄より妹の方が先に怒る。

紺野は振り返らずに訊いた。


「お前の学校じゃ、こういう外部講師は珍しくないのか」


「珍しくはありません」


綾瀬は即答したあと、一拍置いて言い足す。


「ですが、今日は集まり方が不自然です。神術適性の低い生徒の家族が多い。普通の公開講義なら、もっと成績上位の家庭が前に出ます」


護国が小さく頷く。


「羽場桐中尉の読み通りですね。表向き善性を崩さず、内部の焦りだけが出始めている」


紺野はそこで鼻を鳴らした。


「焦ってるなら尻尾くらい出せ」

「出さないために明灯会です」


綾瀬が言う。


「……あそこは、悪人の顔をしてくれません」


その言い方が妙に年齢に合っていなくて、東雲が綾瀬を横目で見た。 庇うでも諭すでもない、ただ見ている視線だ。東雲は若い隊員が年相応でなくなる瞬間を、止められないことを知っている。


車両が門の手前で止まる。 今日は軍の車両で堂々と乗り付ける場ではない。羽場桐がその辺りの段取りを間違えるはずもなく、紺野たちは一般の見学者に紛れる格好で降ろされた。

降りる前に、護国が紺野へ向き直る。


「確認です。今日の主眼は拘束ではありません。会場の運営線、資金流入先、接触対象の絞り込み。現場での制圧は、明確な逸脱が出た場合のみ」

「分かってる」


紺野は短く言ってから、短いまま終わらせなかった。


「分かってるが、向こうが子供を使うなら話は変わる。手順の綺麗さより先に切ることがある」


護国はすぐに否定しなかった。 否定しないで、宗一らしい順番で言葉を返す。


「切るなら、切った後の線も一緒に引いてください。今日ここで誰か一人を潰しても、景道院の中に“近衛が学校を荒らした”だけ残れば負けです」

「だから俺一人で先に出るなって言いたいのか」

「言いたいですね。できれば、かなり強く」


綾瀬が小さく口を挟む。


「兄さん、言い方が柔らかすぎます。紺野少尉は“かなり強く”では止まりません」

「お前も人のこと言えないだろ」


紺野が返すと、綾瀬はようやくこちらを見た。 少しだけ目を細めて、しかし口元は崩さない。


「私は止まります。止まる訓練をしています。あなたは止まらない前提で段取りを組まれている」


車内に一瞬だけ静かな笑いが生まれかけて、東雲が咳払いで潰した。


「その話は現場の後だ。行こう。今日は“正しい顔”が多い」


それは東雲なりの警告だった。 正しい顔をした場は、間違ったことが起きてもすぐには音を立てない。


42-2


公開講義棟の一階ホールは、妙に明るかった。


灯りの数ではない。人の表情の明るさだ。 相談受付、健康相談、進学相談、生活支援の案内。机の上に並ぶ紙はどれも丁寧で、言葉は優しく、説明は平易で、神術位階の低い者に向けた配慮が行き届いている。雑な悪意なら、この時点で見つかる。明灯会が厄介なのは、そういう雑さを出さないことだ。


紺野は会場の端を歩きながら、壁際の配布棚へ目を向ける。 資料はよく刷られている。紙質が揃っている。印字の濃さも均一だ。 だが今回は、そこを見て終わらない。終わらせない。


「紺野少尉」


護国が小声で呼ぶ。


「受付の右から二番目、緑の腕章。父兄対応の割に、靴が現場向きです」


紺野は視線だけ動かす。 言われて見れば、確かにそうだった。立ち仕事に向いた靴ではあるが、屋内の相談員が履くには踵の減り方が変だ。屋外を歩く人間の減り方だ。それも、人混みではなく、荷の出入りがある場所の歩き方。


「綾瀬」


護国が呼ぶ。

綾瀬は配布棚の前で資料を見ているふりをしながら答えた。


「見えています。あの人、景道院の警備導線を避けて立っています。偶然ではないです」

「断糸は出すな」


護国が釘を刺す。

綾瀬は資料を一枚抜きながら、素っ気なく返す。


「出しません。ここで罠を張るほど子供じゃありません」


その返しに紺野が横から言う。


「言い方がもう子供だろう」


綾瀬はそちらを見ずに、しかし口の端だけ動かした。


「紺野少尉よりは、たぶん」


軽口の形はしているが、空気は緩み切らない。 緩めないまま、四人は会場を散る。東雲は展示資料と避難口の位置を見て、護国は受付の流れを追い、綾瀬は学校側の人間の動きと外部スタッフの混ざり方を見て、紺野は――人の顔を見た。


紺野の仕事は、本来こういう場に向かない。 人の顔から善悪を見分けるような器用さはない。だが、恐怖と、隠された命令の癖には敏い。触れなくても分かる時がある。分かってしまう時がある。

会場の奥、臨時講義室で人だかりが動いた。 次の講演が始まるらしい。


「行きます」


綾瀬が言う。 護国が頷き、四人は自然な距離で講義室へ入った。

壇上には男が一人立っていた。 年齢は三十前後に見える。背広は派手ではない。立ち居振る舞いも目立たない。だが声が通る。腹から張るのではなく、人の耳が嫌がらない高さでよく通る声だ。こういう声は、怒鳴る必要がない場所で強い。

男は自己紹介を簡潔に済ませ、すぐ本題へ入った。


「神術の位階は、才能の差です。これは否定しません。否定しても現実は変わらないからです」


室内が静まる。 反発を受けにくい入り方だ。まず現実を認める。その上で切り込む。言葉の順番を知っている。


「ですが、才能の差をそのまま人生の価値へ直結させていいのか、という問いは別に残ります。ここを分けて考えないと、神術の話はすぐに信仰か怨嗟のどちらかになる」


父兄の何人かが頷いた。 景道院の教員らしき男が腕を組んだまま聞いている。否定はしない。否定しづらい言い方だからだ。

男は言葉を重ねる。


「高位の神術師が特権を持つこと自体は、国家運用として合理です。危険だから管理する。強いから使う。それは分かる。私が問題にしたいのは、その合理が、低位の人間にどんな顔で降りてくるかです」


紺野はそこで、少しだけ眉を動かした。 言っていること自体は、かなり正しい。少なくとも、聞く側が抱える息苦しさの形を外していない。


男の視線が、客席を一度ゆっくり掃いた。 その視線が紺野の列を掠める。掠めて、止まらない。止まらないのに、こちらの人数と位置だけきっちり拾っていく目だった。


「支援とは施しではありません。支配でもありません。本来は、潰れないための足場です。明灯会は、その足場を作る側でありたい」


ここで拍手が起きた。 大きくはない。だが迷いの少ない拍手だ。言葉に酔っている拍手ではない。救われたい側の拍手だ。そこが厄介だった。

護国が小さく口を動かす。


「表向きの善性維持。……見事ですね」


東雲がさらに小さく返す。


「見事だから長くやれた」


綾瀬は前を向いたまま言う。


「でも今、嘘も混ぜました。“支配でもありません”のところ、会場の右三列目だけ呼吸が揃いすぎた。あの言葉を聞く前から知ってる人間がいます」


紺野が横目で綾瀬を見る。


「分かるのか」

「学校で似たのを見ます。教師の言葉に頷くふりをして、答えを先に持ってる人間」


綾瀬は淡々と言った。


「……景道院にも、います」


講演が終わる。 会場は拍手と人の動きでざわつき始めた。相談ブースへ戻る者、講師へ話しかけに行く者、資料だけ取って帰る者。その流れの中で、壇上の男は水を一口飲み、質問を受ける体勢を作った。

そこで、男の方から先に声を投げてきた。


「後ろの方の方。近衛の方ですよね。せっかくですから、質問があればどうぞ」


室内の空気が一度凍りかけて、すぐに溶けた。 「近衛」という単語を出されたのに、ざわめきが爆発しないのは、男の声が平らだからだ。責めてもいない。迎合もしていない。事実を事実として出す声だった。

護国が前へ出ようとするより先に、紺野が一歩だけ前へ出た。


「質問、か」

「ええ」


男は笑う。


「批判でも構いません。公開講義ですから」


紺野はしばらく男を見た。 見てから、単刀直入に言う。


「お前の言葉で助かった人間はいるだろう。だが、お前の言葉で走らされてる子供もいる」


室内の空気が、今度は確かに止まった。

男の笑みは崩れない。崩れないまま、少しだけ目の温度を落とす。


「重い言い方ですね。具体例はありますか」

「ある」


紺野は言った。


「だがここで並べる気はない。子供の顔を使ってお前と口喧嘩する趣味もない」


護国が内心で舌を巻いた気配がした。 粗い言い方だが、線は踏み越えていない。断定はしても証拠は出さない。出さないことで、明灯会に“公開の場で反撃する材料”を与えていない。

男は水の入った紙コップを机に置いた。


「近衛の方にそう言われるのは、正直、光栄ではありませんが興味深い。……ただ、ひとつだけ訂正します。私は誰かを“走らせる”より、止まれる国にしたい」


綺麗な言葉だった。 綺麗すぎる言葉は、たいてい現場で血を払わせる。そこを見誤ると、明灯会の話は毎回同じ顔に見えてしまう。今回の男が厄介なのは、綺麗な言葉の裏で、本当にその理想を少しは信じている顔をしていることだった。

紺野は答える。


「国の話をする前に、子供の足を止めろ」


男は少し黙った。 沈黙は短い。短いが、計算していない人間の黙り方ではない。


「……覚えておきます」


男はそう言って、柔らかく会場を見渡した。


「次の質問をどうぞ。個別の事案に関しては、この場では答えられないこともありますが、制度の話なら逃げません」


上手い。逃げないと言って、逃げる。 逃げた形を悪く見せない。こういう人間が前に立つと、組織は強くなる。

講義室を出たあと、護国が低い声で言った。


「今の一往復だけで、会場の空気を取り返されました」

「最初から向こうの空気だ


紺野は言う。


「こっちは穴を開けただけだ」


綾瀬が講義資料を折りたたみながら言った。


「穴は開きました。あの人、最後に水を置く手が少しだけ早かった。怒ってます」


東雲が頷く。


「怒る相手なら、まだ追えるな」


42-3


追えたのは、会場の外に出てからだった。

男は講義終了後すぐに父兄の輪に囲まれたが、十分ほどして裏手の職員通路へ抜けた。護国と東雲が正面を押さえ、綾瀬が景道院の校舎側の細い連絡通路を見て、紺野が半歩遅れてその後を追う。捕縛ではない。会話の続きを取りに行く形だ。


裏階段は人が少ない。 窓が細く、古い壁の冷えが残る場所だった。

階段の踊り場で、男は振り向かずに言った。


「学校の中で近衛に尾行される経験は、あまりできるものじゃありませんね」


紺野は段差を二段残して止まる。


「尾行のつもりはない。さっきの続きを聞きに来ただけだ」


「続きを?」


男はゆっくり振り向いた。


「近衛の方が、明灯会に個人的な説教をする続きをですか」


「説教に聞こえたなら、お前の耳がいい」


男は笑った。 今度の笑いは会場のものより少しだけ薄い。人に見せる顔の層が一枚減っている。


「では、こちらも少し本音で話しましょう。あなた方は強い。強いから、被害が出る前に切るべきだと判断できる。こちらは弱い。弱いから、切られた後の人間を拾うところから始めるしかない。やっていることが違うんです」

「違うな」


紺野は即座に返した。


「お前は拾う顔をしながら、切られる側を寄せてる」


男の目が、今度ははっきりと細くなる。


「証拠は」

「まだない」

「なら、今のは勘ですか」

「勘だ」


紺野は言ってから、そこで終えない。


「だが、勘で動かないと間に合わない時がある。お前らはそこを狙ってる」


男は数秒黙ったあと、小さく息を吐いた。


「……近衛にも、そういう話し方をする人がいるんですね。もっと命令と分類だけで喋るものだと思っていました」

「お前の“近衛像”に合わせる義理はない」

「それはそうだ」


会話は噛み合っている。 噛み合っているのに、歩み寄ってはいない。ここで無理に分かり合うような書き方をすると、この場の温度が嘘になる。


階段の上で、何かが落ちる音がした。

乾いた音。続いて、短い悲鳴。

綾瀬の声が上から飛ぶ。


「宗一兄さん、上です! 立入禁止区画に生徒が入ってる!」


男の視線が一瞬だけ階段上へ跳ねた。 跳ねた、その速さだけで分かる。偶然ではない。少なくとも、何が起きたかの見当がついている反応だ。


紺野が駆ける。 男も同時に動いた。止める理由はない。あるいは、ここで止め合う方が不自然だった。


三階の旧実験室区画は、改修途中で立入禁止になっていた。 古い外象術式の補助設備が撤去されきらず、配線と金具が露出したままの部屋がある。そこへ景道院の低学年らしい生徒が二人、見学気分で入り込んだらしい。

問題は、入り込んだだけではなかった。


──部屋の中で、光が噛んでいた。


火花ではない。漏電でもない。 術式補助具の残滓と、誰かが持ち込んだ薄い力場が噛み合って、現象の向きが決まらないまま部屋の中心で渦を巻いている。強くはない。だが子供には十分すぎる。

生徒の一人が足を滑らせ、露出した金具の方へ倒れかける。

綾瀬の声が鋭くなる。


「届く——」


届く。だが綾瀬がここで断糸を出せば、見えない斬撃概念が改修中の梁を巻く可能性がある。 護国も同じ判断に入ったらしく、一瞬だけ踏み込みを止めた。

その一拍で、紺野が前に出た。


──部屋の中心の光が、沈んだ。


消えた、ではない。 押し潰したのでもない。 中心へ向かって、現象そのものが引き剥がされるように痩せた。


俯瞰すれば、起きたことはこうだ。 渦巻いていた光と熱の偏りが、半径三メートルほどの範囲ごと急速に崩落し、残っていた術式補助具の金具が砂を噛むみたいな鈍い音を立てて砕け、部屋の中央床面が円形に抉れて消えた。爆発音はない。火も残らない。後に残るのは、形の悪い穴と、削り取られたような空白だけだ。


人は死なない。 子供も、綾瀬も、護国も、誰も斬られていない。

それでも、見た側の背中は冷える。 破壊の仕方が、人間の手順に見えないからだ。


倒れかけた生徒の襟首を、護国が間一髪で掴む。 もう一人は東雲の影が抱えるように引き戻した。影は一体だけ。最小限。東雲の額に汗が浮く。


綾瀬が息を詰めたまま紺野を見る。 男も、見る。

紺野の右手は空だった。刀は抜いていない。 抜いていないのに、部屋の真ん中だけが“無くなっている”。

喉の奥が焼けるようなざらつきに、紺野は歯を噛んだ。


今のは制御した。出力も抑えた。抑えたはずだ。それでも掌の内側に、何かを飲み込んだ後みたいな嫌な静けさが残る。

男が先に口を開いた。 声は低い。講義室の声より、ずっと本音に近い。


「……なるほど。近衛が勘で急ぐ理由が、少し分かりました」


紺野は男を見た。


「お前は今、何をした」

「何もしていません」


男は即答した。


「少なくとも、今この瞬間の事故に関しては。利用できる状況が落ちてきただけです」


言い切るのが早い。 早すぎる否定は、用意していた人間の速度だ。

護国が生徒を教員へ引き渡しながら、紺野へ声を投げる。


「紺野少尉、ここは学校です。これ以上は——」

「分かってる」


紺野は答える。そして男から目を切らずに言った。


「……次は、会場の外で話せ」


男は数秒紺野を見たあと、薄く笑った。


「いいですよ。こちらも、学校の中でこれ以上長居したくはない」


その「これ以上」が、どこまでを指すかは言わない。 言わないまま、男は教員の方へ向き直り、何事もなかった顔で生徒の容体確認に回った。手つきも声も丁寧で、公開講義の講師として完璧だった。

綾瀬が小さく吐き捨てる。


「……嫌いです、ああいう人」


護国がすぐに制した。


「感情は後です。今は回収」


東雲が部屋の中心に残った空白を見下ろし、静かに言う。


「回収する物が増えたな。明灯会だけじゃない」


誰もすぐには返せなかった。 増えたのは証拠だけではない。紺野の危うさを見た人間の数も、確かに増えたからだ。


階段を下りる途中、綾瀬が紺野の横へ並んだ。 目は前を向いたまま、声だけ寄せる。


「さっきの、抑えたんですね」

「……ああ」

「.....それでも、あれですか」


紺野は少し考えてから答えた。


「それでも、あれだ」


綾瀬は頷いた。 頷いて、少しだけ言い方を柔らかくした。


「なら、次は私が先に糸を置きます。あなたが前に出る前に、逃げ道だけでも削る。そういう役なら、できます」


紺野は綾瀬を見た。 この妹は、兄に似て理屈で喋る。だが兄より少しだけ、感情の置き場所が分かりやすい。


「助かる」


紺野は言った。 短いが、今度は簡潔すぎる言い方にはしなかった。


「……お前が先に動く理由があるなら、俺も止まりやすい」


綾瀬は一瞬だけ目を丸くして、すぐにいつもの硬い顔へ戻る。


「覚えておきます。忘れないでください」

「善処する」

「それ、忘れる人の返事です」


護国が前から振り返って言う。


「二人とも、廊下では静かに。ここは景道院です」


東雲がその背中へ重ねた。


「いや、少しくらい喋っていた方がいい。今日は皆、静かすぎる」


確かにそうだった。 静かな場所で、静かな善意に囲まれ、静かな笑い方の男と向き合ったあとだ。静かすぎると、人間は簡単に均される。

外へ出ると、夕方の風が校門の旗を揺らしていた。 今度はちゃんと音がした。小さい音だが、遅れずに鳴った。

それだけのことが、少しだけ救いに見える日だった。


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