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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第11章 未来を紡ぐ手
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幕間 共鳴石

 アレンが、まだ二十歳の頃だった。


 贈り物を探しに、グランゼリアのバルテラン商会を訪れていたアレンは──例によっていつもの熱い抱擁を受け、ソファでぐったりとしていた。


 当のギルベルトは得意先の対応に回っており、部屋にはアレンだけが残されている。


 少しずつ息を整えていたアレンの視界に、ふと光るものが映った。

 テーブルの上の箱に、透明な丸い石が山のように積まれている。


 ガラス玉だろうか。

 ひとつ手に取り、光にかざす。


「それはクズ石だ。ガラス玉より綺麗かと思って買ったが、すぐに割れる。俺の目も曇ったもんだ」


 びくりと肩が跳ねた。

 いつの間にか、すぐ後ろにギルベルトが立っていた。


 アレンはそっと目を逸らし、もう一度石を見つめる。

 驚くほど透明度が高く、背景が澄んで透けて見えた。


 補強できるかもしれない。試しに──魔力を流してみる。


 瞬間、石が茶色く染まった。


 思わず手の中に隠した。

 幸い、ギルベルトは気づいていないようだった。


「……これを、少し分けてもらえないか?」

「別に構わんが……?」


 訝しむ視線を受けながらも、アレンはいくつかの石を譲り受けた。


 *


 持ち帰り、試行錯誤を繰り返す。


 どうやら、属性と魔力量によって色が大きく変わるらしい。


 力作を灯りにかざす。

 温かみのあるテラコッタ色の輝きに、アレンはわずかに口元を緩めた。


 *


 数日後。再びバルテラン商会。


 いつもの抱擁に体を軋ませながら、なんとか言葉を絞り出す。


「装飾品を、作ってほしい」

「装飾品?」


 締め上げるような腕が解け、ギルベルトの口元がにやりと歪む。


「ほほう?」


 アレンは据わった目で見返した。


「それで、どんなのがいい?首飾り?指輪?腕飾り?髪飾りなんてのも……」

「これを使いたい」


 取り出したのは、あの丸い石。

 テラコッタ色に染まったそれを見て、ギルベルトが眉を顰める。


「宝石……じゃないな。いいのか、こんなもので?」

「いいんだ」


 じっと探るような視線が向けられるが、アレンは徹底して無視した。


 そうして、相談の末に出来上がったのは──指輪を通した首飾りだった。


「戦う君たちには、手に付ける装飾品は向かん。こうしておけば、常に持ち歩ける」


 その一言で決まった品だった。


「で?あの石の出どころは?」


 アレンは、すっと視線を逸らす。


「すーごく硬いんだが?大きさも透明度も、どこかで見たクズ石そっくりなんだがな」


 さらに視線を逸らす。


「しかも、魔力を吸うらしいじゃないか」


 低い声が、落ちてきた。


「赤を多めに、緑を少し混ぜたら……」


 すぐ後ろから、低い息づかいが迫ってくる。


「ああいう色になるよなあ」


 迫る圧。

 アレンは、観念した。


「たまたま発見したから、作ってみただけだ」


 ため息交じりの答えに、ギルベルトは生温かい笑みを浮かべる。


「意外と独占欲が強いんだな」

「……口に出すな」


 こうして装飾品は完成し、フィオナの手に渡った。

 大喜びした彼女は、すぐにアレンの分も作って贈り返してくる。


 フィオナが、それはそれは嬉しそうに身につけて歩くものだから、瞬く間に噂が広まった。


 その圧倒的な宣伝効果によって、やがてその石は──“共鳴石”と呼ばれるようになる。

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