第11話 社会の再建
時は、静かに流れていく。
グランゼリアの照明に、実験的に魔石が使われ始めていた。
現在は、1号の知識をもとに、防御結界の開発が進んでいる。
これが完成すれば、都市や街は魔獣に怯える必要がなくなる。さらに携帯用が実用化されれば、旅をする者たちの安全も、大きく変わるだろう。
狩人本部や聖導教会本部周辺の修繕も着実に進み、学園や街には少しずつ笑顔が戻り始めていた。
生活は、確かに豊かになりつつある。
「これが広まれば、怯えずに生きられるようになるんだ」
城壁の上で、リオは胸元の共鳴石を指先で転がした。
隣で街を見下ろす1号の横顔には、まだ感情の色はない。
リオは言いかけて──やめた。
今の1号には、きっと届かない。
そう思うと、ほんの少し寂しくなり、視線を落とした。
*
復興の中で、新たな秩序が形を取りつつあった。
狩人と聖導教会に続き、魔法局が設立されたのである。
「狩人は外を、教会は心を、魔法局は知識を守る。三つが揃って初めて、人は秩序を持てるんだ」
ふと、アレンの言葉が脳裏に浮かぶ。
それは“三権分立”と呼ばれる仕組みらしい。
「力だけでも、祈りだけでも足りない。全部を繋げて、やっと未来に進めるんだよ」
フィオナの声も、静かに重なった。
知恵と力と信仰を束ねて──人は再び未来へ歩き出そうとしている。
*
錬環区を訪れた日のこと。
リオがある部屋をのぞくと、1号が研究者たちに囲まれていた。
その少し後ろには、アレンの姿もある。
1号の知識は、研究者にとって垂涎の的だ。
馴染んでいるようで何よりだと、リオはそっと踵を返そうとした。
そのとき──研究者たちの、ひそやかな声が耳に入る。
「あの子、すごいけど……どこか不気味だな」
「そうそう。何を考えてるのか、さっぱり分からない」
「……わたし、あの無表情が時々こわいの」
歩き出しかけていた足が、止まった。
──ああ、そうだ。
いつまでも、隠し通せるわけじゃない。
胸の奥で、何かが静かに揺れ、リオは静かに顔を上げた。
まだ迷いは消えていない。
それでも──向き合わなければならないと、思った。




