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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第11章 未来を紡ぐ手
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第10話 力を形に

 その日、リオは寮の自室にいた。

 机に向かい、紙とにらめっこしていると、訪問者があった。


 アレンと1号だった。

 アレンが、さっそく口を開く。


「共鳴石の件、聞いたぞ」


 リオは顔を上げ、笑みを浮かべる。


「うん、魔石という名前にしようと思ってるんだ」


 最近、属性を意識しなければ、純粋な魔力だけを充填できることが分かった。

 これで、魔石としての用途がさらに広がる。


 1号が頷く。


「テラも、魔金属(エーテリウム)の容器に瘴気を充填して、動力を持ち運んでいたんだよ。でも、大きさと濃度を考えると、こっちの方がずっと効率的だね」

「それに、魔力を込めることで石自体の強度も上がるし、中が空になると割れるから、わかりやすいんだ」


 そう言って、リオは再び机へ視線を落とす。

 アレンがその隣に立った。


「それは?」


 紙に描かれていたのは、複雑な図形だった。

 外側に大きな円があり、その内側を線や文字が埋め尽くしている。


「今、詠唱の代わりになるものを考えてるんだ」


 アレンの気配がわずかに揺れる。


「詠唱の、代わり……」

「魔力を詠唱で属性に繋げて現象化する。それを、図形で表現できないかと思って」


 1号も反対側から机を覗き込む。


「どうしてなのかな?」

「詠唱は時間がかかるから、魔力量や魔法の詳細まで入れられないんだよ」


 あれは、そう。つむじ風先生の授業でのことだった。


「前に、同じ魔法でも使い手によって全然違うと習って、不便だなって思ってたんだ」


 1号が唇に弧を描く。


「なるほど。図形で表現することで、情報量を増やしつつ、瞬時に発動できるようにするわけだね」

「そうなんだよ」


 やっぱり1号は理解が早い。リオは嬉しくなる。


「でも、文字がすぐいっぱいになって……」


 紙の上は黒く塗り潰され、どこが境目かも分からない。

 それを見ていたアレンが、ふと口を開いた。


「古代語で書いてみたらどうだ?」

「え?」


 思わず聞き返す。


「古代語は、一つの文字に複数の意味が含まれる。少ない文字数で、同じものを表現できるんじゃないか?」


 言葉の意味をゆっくりと咀嚼して、リオは目を見開いた。


「それだよ!」


 思わず声が弾む。


「さすが父さん!」


 アレンが頬を緩め、目を細める。

 1号も図形の一部を指さした。


「安定させるなら、線は対称にして、文字も整然と配置した方がいいね。我なら一切の狂いなくできるよ」

「さすが1号!」


 1号も嬉しそうに笑った。

 すぐに新しい紙を取り出すと、1号が滑らかに円を描いた。


「でも、どうしてこんなことを?紙に書かなくても、頭の中で形にすればいいんじゃないのかな?」


 1号がアレンを見ながら言う。

 リオは、頬を緩めた。


「それじゃあ、ダメなんだ」


 ずっと胸の奥に残っている言葉がある。


「誰にでもできるって、それだけで価値があるんだよ」


 この図形が完成すれば、誰でも、瞬時に、同じ威力の魔法を発動できる。

 それはきっと、生活を豊かにし、自衛など様々な役に立つ。


「魔法陣……なんてどうかな?」

「いいと思うぞ」


 右を見ても、左を見ても、そこには温かい視線があった。

 リオは口元を緩め、再び紙へと視線を落とした。

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