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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第11章 未来を紡ぐ手
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第7話 理論の光

 翌日、瘴気についての情報共有が行われた。


 大人の事情で休校中のヴェルディア学園。

 その教室の一つで、リオは1号と並んで教壇に立っていた。

 目の前に座るのがアレンたち大人という、なんとも奇妙な構図だ。


 集まっているのは、アレン、フィオナ、ヴァルセリオ、ノエル、ユリウス。

 他の面々は「考える作業は任せる」と言い残してどこかへ行った。


「では、まず瘴気を魔力に戻す理論について……」


 1号が、やや緊張した様子で口を開いた。


「ちょっ……ちょっと待ってください!今、瘴気を何に戻すと!?」


 ヴァルセリオが勢いよく立ち上がる。


 1号は目を丸くする。

 リオは苦笑した。


「……1号、順番に説明しないと」

「うん、我としたことが……」


 軽く咳払いして、1号は語り始める。


「まず、魔力は生命の力で……」


 それが世界を巡っていること。

 そして、人の悪意といった感情と結びついたとき、瘴気へと変質すること。


 さらに──瘴気は浄化すれば魔力へと戻ること。

 そして、瘴気は動力として利用可能だということ。


「つまり、光魔法による浄化と同じ仕組みを応用すれば、魔法なしでも瘴気を魔力に戻せるってこと?」


 リオの問いに、1号は頷く。


「理論的には、可能だね」


 それで、最初の一言が出たわけだ。リオは納得した。


「素晴らしい発見ですね。これまで“増え続ける瘴気をどう減らすか”を考えてきましたが、無害に戻せるうえ、瘴気自体にも使い道があると……」


 そう呟くノエルに、1号は少し困ったように笑う。


「瘴気を直接動力として利用するのはおすすめしないよ。大陸を吹き飛ばしたくらいの力を秘めているからね」

「そうでした……」


 ノエルが自分の腕をさすった。


 リオは、ふと疑問がわいた。


「そういえば、瘴気を魔力に戻す理論って、1号が考えてくれたの?」


 テラたちは魔力を使えないから、そんな理論は不要なはずだ。

 ならば──。


「うん。リオは、瘴気より魔力の方がいいでしょ?」


 1号は、何でもないことのようにそう言った。


 リオは言葉を失う。

 そんなリオを気に留めることなく、1号は続ける。


「それで、その理論なんだけど──魔金属(エーテリウム)が使えると思うんだ」

「えーてりうむ?」


 ヴァルセリオがたどたどしく繰り返す。


「瘴気を高密……箱にぎゅうぎゅう詰めにして小さくして、強くしたものだよ」


 その言い換えに、ヴァルセリオが小さく笑った。


「急に子ども向けの説明になりましたね」


 アレンが腕を組む。


「それで、どう使うんだ?」

「元は瘴気だから、内部構造が魔力と悪意の結合に親和的でね。魔金属(エーテリウム)自体を触媒に、瘴気を魔力に戻せるんじゃないかと考えたんだ」


 リオは、その言葉を頭の中で反復する。

 ……ダメだ、わからない。


 1号が黒板に式を書く。

 ──魔力 + 悪意 = 瘴気。


魔金属(エーテリウム)は、“魔力側”──つまり左辺に近い構造を宿している可能性があるんだ。だから瘴気に触れると、悪意を切り離し、魔力だけを呼び戻す“偏った媒介”として働くんじゃないかと思ってね」


 リオは首を傾げる。


「しょくばい?」

「ある反応や過程を促進するけど、自分は反応の前後で変化しない存在のことだよ」


 リオは反対側に首を傾ける。


 まだ完全には理解できていない。

 だが、魔金属(エーテリウム)が瘴気を魔力に戻す“触媒”だという感覚は、なんとなく掴めてきた。


「それって……杖みたいなもの?」


 フィオナがポンと手を打つ。


「魔法を使うとき、杖を通した方が力を扱いやすいものね。でも杖が魔法そのものを生み出しているわけじゃなくて、間に入って補助しているだけ……」


 話を聞いていたユリウスが、納得したように口を開く。


「へえ……じゃあ、触媒っていうのは、媒介できる物質そのもののこと?」


 1号が笑顔で頷く。


「そういうことだね。じゃあ早速実験してみよう。アレン、頼んでいたものは用意してあるかな?」

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