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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第11章 未来を紡ぐ手
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第6話 ゼロからの

 リオは、ヴェルディア学園の寮ではなく、市場区(マーケット)のとある宿の一室にいた。

 アレンとフィオナは食事を取りに行っている。


 ベッドに腰掛け、剣の手入れをしながら二人が戻るのを待っていた。


 リオの隣で、磨かれる剣を見ていた1号が口を開く。


「はじめは……受け入れてもらえるわけがないと思ったんだ」


 リオは手を止めて、1号を見る。


「誰がどう見たって、我は怪しい。それなのに、気づけば皆、我を普通の子どものように扱う」


 1号がリオの目を見て、首を傾げた。


「何で、無条件に信じられるのかな?」


 リオはその目をじっと見返した。

 無条件──それは違う。


「ちゃんと理由があるんだよ。父さんと母さん……二人がこれまで積み重ねてきた信頼。それがあるから、みんな信じてくれたんだ」


「信頼……相手の能力や誠実さ、判断などを疑わずに、任せることだね」


 思わず渋い顔になる。


「その言い方、好きじゃないな。意味はあってるかもだけど……」

「どうして、好きじゃないの?」


 リオは唸りながら天井を見上げた。


「もっとこう……きれいで、繊細なものなんだよ。信頼って、壊れやすくて、一度失うと回復が難しいから」


 1号は首を傾げ、小さく眉を寄せる。


「……つまり、命のようなものなのかな?」

「うーん……?」


 リオもわずかに首を傾げ、「それもちょっと違う気がする」と返した。


「難しいね。どちらにしても、そんな曖昧なもので我を迎え入れるなんて、どうかしているよ」


 リオは1号を見る。

 口ではそう言っているが、そこに戸惑いの色が見えて、頬を緩めた。


「じゃあ、一緒に信頼を築こう。俺と一緒に、ゼロから」


 剣を置き、右手を差し出す。


「これは?」


 不思議そうにその手を見返す1号に、リオは笑いかける。


「信頼の第一弾。握手だよ」


 リオは笑顔で1号の右手を取る。

 両手でぎゅっと握ると、なんだか嬉しくなって。そのままもう片方の手も取って、包み込むようにゆっくり覆った。


 1号は眉を寄せ、困惑している。


 扉が開いた音がしたが、リオは振り向かなかった。

 繋いだままの手を、そっと揺らした。

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