第6話 ゼロからの
リオは、ヴェルディア学園の寮ではなく、市場区のとある宿の一室にいた。
アレンとフィオナは食事を取りに行っている。
ベッドに腰掛け、剣の手入れをしながら二人が戻るのを待っていた。
リオの隣で、磨かれる剣を見ていた1号が口を開く。
「はじめは……受け入れてもらえるわけがないと思ったんだ」
リオは手を止めて、1号を見る。
「誰がどう見たって、我は怪しい。それなのに、気づけば皆、我を普通の子どものように扱う」
1号がリオの目を見て、首を傾げた。
「何で、無条件に信じられるのかな?」
リオはその目をじっと見返した。
無条件──それは違う。
「ちゃんと理由があるんだよ。父さんと母さん……二人がこれまで積み重ねてきた信頼。それがあるから、みんな信じてくれたんだ」
「信頼……相手の能力や誠実さ、判断などを疑わずに、任せることだね」
思わず渋い顔になる。
「その言い方、好きじゃないな。意味はあってるかもだけど……」
「どうして、好きじゃないの?」
リオは唸りながら天井を見上げた。
「もっとこう……きれいで、繊細なものなんだよ。信頼って、壊れやすくて、一度失うと回復が難しいから」
1号は首を傾げ、小さく眉を寄せる。
「……つまり、命のようなものなのかな?」
「うーん……?」
リオもわずかに首を傾げ、「それもちょっと違う気がする」と返した。
「難しいね。どちらにしても、そんな曖昧なもので我を迎え入れるなんて、どうかしているよ」
リオは1号を見る。
口ではそう言っているが、そこに戸惑いの色が見えて、頬を緩めた。
「じゃあ、一緒に信頼を築こう。俺と一緒に、ゼロから」
剣を置き、右手を差し出す。
「これは?」
不思議そうにその手を見返す1号に、リオは笑いかける。
「信頼の第一弾。握手だよ」
リオは笑顔で1号の右手を取る。
両手でぎゅっと握ると、なんだか嬉しくなって。そのままもう片方の手も取って、包み込むようにゆっくり覆った。
1号は眉を寄せ、困惑している。
扉が開いた音がしたが、リオは振り向かなかった。
繋いだままの手を、そっと揺らした。




