第5話 守る者の選択
早速、海底都市で得た情報を共有した。
「まさか、古代人の住処だったとは……」
ヴァルセリオが呆然と呟く。
イゼリアは、腕組みをしたまま眉を寄せた。
「いや。それよりも、西の未開域が実は爆心地で、三百年前に一度、世界が滅びかけただと……?」
「魔法を使えない人間、テラってのも、空想の話みたいだ」
ジークが、イゼリアの隣で息を吐く。
ノエルも少し青ざめながら言った。
「魔法が使えないから、瘴気を武器にした……しかも、竜にまで手を出そうとしたとは。にわかに信じがたいですね」
ラウレンも、ゆっくりと頷く。
「竜の伝説に、そのような裏があったとは……」
アレンが、1号の肩に手を乗せた。
「すべて、1号が過去の記録をもとに教えてくれたんだ」
「ほう……小さいのに、すごいな」
イゼリアが頬を緩め、賞賛を送る。
1号は、アレンの足にしがみつきつつ、イゼリアを見上げた。
アレンが、重く告げる。
「海底都市にある古代の知識や技術は、世界を何度でも壊せる。だからこそ、公表せずに、監視下に置くことを提案する」
フィオナが、ゆっくりと頷いた。
「知識もないまま不用意に手を出して、三百年前の悲劇を繰り返すわけにはいかないから」
ジークが、首の後ろを掻く。
「まあ、それはいいんだけど」
その視線が、1号に向く。
「イチゴウ、っていったか?お前はそれでいいのか?一応、故郷なんだろ?」
1号はジークを見上げて目を丸くした。
戸惑いがちに眉を下げ、頷く。
「我は、汝たちに従うよ」
「……しゃべった。しかも、じいちゃんみたいな話し方だ……」
なぜか、ジークの方がもっと驚いたような顔をする。
イゼリアが、呆れを含んだ目をジークに送った。
「生きてるんだ、話すくらいするだろう」
「いや、まあ、そうなんだけどさ……」
ノエルは膝を折り、1号と目線の高さを合わせた。
「ごめんなさい。あなたのことを拒んだり、怖がらせようとしたわけじゃないんです。ただ……私たちは、立場上、何でも簡単に受け入れるわけにはいかないんですよ」
その言葉に、1号はゆっくりと頷いた。
ノエルが微笑んで、1号の頭を撫でる。
その様子を、リオは少し離れたところで見ていた。
すぐ近くに、ユリウスとイリスもいる。
ユリウスが重たげに口を開く。
「ねえ、僕たち……」
その声は、小さい。
「言っちゃだめ、なのよね……?」
イリスも小声で呟いた。
リオは小さく頷く。
アレンとフィオナが、すべての責任を負ってくれた。
そしてそれは、リオたちのためだけではない。
1号のことを考えてだと、言われなくてもわかった。
ここで本当のことを話すのは、二人を裏切るようなものだ。
けれど。
嘘はついていない。
それでも、罪悪感はあった。
少し息を詰め、1号の背中と皆の顔を交互に見た。
言えない真実の重みが、胸をぎゅっと押し潰すように感じられた。
リオは、自分に言い聞かせるように言った。
「俺たちは、何も見てない。何も、知らないんだ」




