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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第11章 未来を紡ぐ手
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第3話 闇を抜けて

 1号とともに、潜水艇のところに戻る。

 1号は興味津々といった様子で、潜水艇を眺めていた。


「ただの鉄、しかもこの厚みで、よく水圧に耐えられたね」


 リオは、潜っている途中で潜水艇がミシミシと軋んだことを思い出す。


「水魔法で周りを覆ったんだ」

「……便利なものだね」


 1号には中に入ってもらい、アレンとリオが二人がかりで押す。

 ギギギ──鉄板が悲鳴を上げ、潜水艇はゆっくりと岸を離れた。


 内側から窓に手を当てて、1号が言う。


「魔法……なんて常識外れな力なんだ。……汝たちはもう、人間を辞めていいんじゃないかな」


 リオは苦笑を返した。


「科学の方が、よっぽどすごいよ。見えるものも、見えないものも、全部言葉で捕まえようとする。そこに、諦めない強さを感じる」


 たとえ、魔法に対抗することがきっかけだったとしても。

 科学というものに、世界を諦めない闘志を感じていた。


 *


 海底都市の灯りが遠ざかり、周囲は再び闇に呑まれていく。

 1号はどこか名残惜しそうに、リオの背後を見ていた。


 アレンがヴァルセリオの位置を示してくれて、浮上の方向を調整していく。


「ヴァルセリオ先生にも共鳴石を?」


 リオが尋ねると、アレンは嫌そうな顔をした。


「距離が近ければ、無くてもわかる。そんな気軽に配ってたまるか」

「そっか……」


 リオは、はにかんだ。

 胸元で揺れているのは、たぶん二つ目のものなのだろうと思った。


 上下の感覚すら曖昧な、深い黒の水。

 だが浮上するにつれて、少しずつ色が変わっていく。


 中から漏れ出てくる話し声を聞いているうちに、闇のようだった水が、ゆっくり青を帯び始めていく。


 見上げた先で、揺れる光が波に砕けている。

 水面だ。


 一気に潜水艇を押し上げる。

 白波を裂きながら、海面へ飛び出した。


 音で気づいたのか、すぐにヴァルセリオが駆け寄ってくる。

 潜水艇の扉が開き、フィオナたちが顔を出すのを見て、ヴァルセリオはヘナヘナと船縁(ふなべり)にもたれた。


「良かった……本当に、良かったです……」


 目尻に滲む涙を見て、リオはアレンと顔を見合わせ、頬を緩めた。


 *


 帰りは、のんびりとした航海になった。

 魔法で動く船に、またもや好奇心に満ちた目を向ける1号を見て、ヴァルセリオは何か言いたげだった。


 だが、リオはユリウス、イリスと肩を寄せ、黙っていた。

 アレンやフィオナより先に話すのは、躊躇われた。


 二人は、船の先の方で話している。

 アレンが何かを告げると、フィオナは少し頬を膨らませ、眉を寄せた。

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