第3話 闇を抜けて
1号とともに、潜水艇のところに戻る。
1号は興味津々といった様子で、潜水艇を眺めていた。
「ただの鉄、しかもこの厚みで、よく水圧に耐えられたね」
リオは、潜っている途中で潜水艇がミシミシと軋んだことを思い出す。
「水魔法で周りを覆ったんだ」
「……便利なものだね」
1号には中に入ってもらい、アレンとリオが二人がかりで押す。
ギギギ──鉄板が悲鳴を上げ、潜水艇はゆっくりと岸を離れた。
内側から窓に手を当てて、1号が言う。
「魔法……なんて常識外れな力なんだ。……汝たちはもう、人間を辞めていいんじゃないかな」
リオは苦笑を返した。
「科学の方が、よっぽどすごいよ。見えるものも、見えないものも、全部言葉で捕まえようとする。そこに、諦めない強さを感じる」
たとえ、魔法に対抗することがきっかけだったとしても。
科学というものに、世界を諦めない闘志を感じていた。
*
海底都市の灯りが遠ざかり、周囲は再び闇に呑まれていく。
1号はどこか名残惜しそうに、リオの背後を見ていた。
アレンがヴァルセリオの位置を示してくれて、浮上の方向を調整していく。
「ヴァルセリオ先生にも共鳴石を?」
リオが尋ねると、アレンは嫌そうな顔をした。
「距離が近ければ、無くてもわかる。そんな気軽に配ってたまるか」
「そっか……」
リオは、はにかんだ。
胸元で揺れているのは、たぶん二つ目のものなのだろうと思った。
上下の感覚すら曖昧な、深い黒の水。
だが浮上するにつれて、少しずつ色が変わっていく。
中から漏れ出てくる話し声を聞いているうちに、闇のようだった水が、ゆっくり青を帯び始めていく。
見上げた先で、揺れる光が波に砕けている。
水面だ。
一気に潜水艇を押し上げる。
白波を裂きながら、海面へ飛び出した。
音で気づいたのか、すぐにヴァルセリオが駆け寄ってくる。
潜水艇の扉が開き、フィオナたちが顔を出すのを見て、ヴァルセリオはヘナヘナと船縁にもたれた。
「良かった……本当に、良かったです……」
目尻に滲む涙を見て、リオはアレンと顔を見合わせ、頬を緩めた。
*
帰りは、のんびりとした航海になった。
魔法で動く船に、またもや好奇心に満ちた目を向ける1号を見て、ヴァルセリオは何か言いたげだった。
だが、リオはユリウス、イリスと肩を寄せ、黙っていた。
アレンやフィオナより先に話すのは、躊躇われた。
二人は、船の先の方で話している。
アレンが何かを告げると、フィオナは少し頬を膨らませ、眉を寄せた。




