第2話 崩壊の記憶、再生の光
そうして修理を進めながら、1号は世界の過去や瘴気の仕組みについて語り始めた。
「細かい数字は意味をなさないから、三百年前と言わせてもらうね。三百年前、大陸の四分の一が海に消えるとともに、世界は一度、崩壊したんだよ」
「世界……ルミナスも、影響を受けたんだ」
大陸が吹き飛ぶほどの瘴気爆発。
崩壊は、当然のことかもしれない。
「残り四分の三も、都市や村、森の大部分が被害を受け、生活や自然環境が激変したんだろうね。我が目覚めた時、文明の退化具合には驚いたよ」
アレンが納得したように呟く。
「文明崩壊後、生き残った人々は“生きること”が最優先になる。建築や農業、狩猟など、生活に直結する技術だけを維持・再建する」
しかも、生き残った人々──ルミナスには、魔法があった。
「魔法のお陰で生活には困らない。芸術や学問、科学技術は後回しになり、全体として文明水準は低くなったまま、科学が発展しない……というわけか」
1号は、手を動かしながら頷いた。
「厄災の本当の原因は、瘴気の暴発だった。けれど、リュミナという人が竜と瘴気に関する記録を残してしまったから」
「リュミナの、碑文か……」
アレンが、苦々しく呟く。
「生きているだけで精いっぱいだった人々は、瘴気を恐れ、その記憶には“竜が厄災をもたらした”とだけ、残ったんだろうね」
だが、それは──悲しい勘違いだった。
「瘴気が何かは、知ってる?」
学園でも教わった内容だ。
リオが答える。
「人の悪意から生まれるものだよね」
「それは、半分正しくて、半分間違った理解なんだよ」
1号は右脚の作業を終えた。
アレンが、左脚を1号に渡す。
「さっき結果を確認したばかりだけど、汝らの光魔法の解析で、わかったことがあるんだ」
それを聞いて、フィオナが複雑そうな顔をした。
「魔力は、世界の隅々まで広がる生命の力なんだ。すべての木や風、海に宿り、星々の運行さえ支えている」
「魔力って、そんなにあちこちにあるんだね……」
ユリウスが、驚きを声に滲ませる。
「人間が生み出す恐怖や憎悪、悲しみは、この魔力と結びつき、瘴気となる。けれど、光の浄化によって穢れだけが消え、再び魔力として世界に還るみたいなんだ」
「瘴気が……魔力にもどる……」
イリスが1号の言葉を繰り返す。
一生懸命話を聞いているが、すでに頭が痛そうだ。
「こうして、星と人と魔力の循環は止まらず、続いていくんだね」
そうして話している間に、脚はきれいに接合できていた。
関節を動かし、試運転する。
1号は軽く動きを確かめる。その声に、ほんのわずかに感情が混じった。
「……うん、動いた」
1号が台から飛び降りる。
「協力、ありがとう」
声が、かすかに震えた。
「誰かに直してもらうというのも……いいものだね」
1号の動きには、まだ、ぎこちなさが残っている。
それでも、そこには確かな安心感が宿っているように見えた。
リオの胸にも、ほんの少し、温かい気持ちが広がった。




