第1話 支え合う手と足
1号に案内されたのは、工房のような場所だった。
静寂を裂くように、金属同士がかすかに擦れ合う音だけが響いている。
「そこに我を置いてくれるかな」
示されたのは、ちょうど子供が寝ころべるくらいの台だった。
アレンが、ゆっくりと1号を下ろす。
リオは欠損した右腕と両脚をじっと観察し、アレンと視線を交わした。
「完全に切断されてしまって……金属の芯も途切れてるね」
一応、ユリウスとイリスに頼んで切断された手と脚を持ってきたが、そのままくっつけてどうにかなるものではなさそうだった。
「我の見立てでは、左脚は根元から切断、関節も死んでるね。右脚も駆動系が完全に破損しているよ」
1号が損傷を確認し、淡々と報告する。
「右腕も欠損、動力系統は半壊。補助関節も停止している」
皮膚のような外装の裂け目から覗く内部は、生き物の筋肉や血管を思わせるほど入り組んでいた。
欠損の深刻さは一目でわかり、修理の難度を、リオたちに直感させた。
どうしようかとリオとアレンが顔を見合わせていると、1号が口を開いた。
「少し、手伝ってほしいんだ」
まずは、右腕を直す。
頼まれた素材を持ってきて、アレンとリオで、細かな工具を使いながら、微細な関節と金属の支柱を慎重に組み立てていく。
フィオナが、光魔法で手元を照らす。
ユリウスは、水魔法で洗浄する。
イリスは、風魔法で金属の熱を冷まし、埃を払った。
「これ、何の金属?」
「魔金属だよ。瘴気を高密度で圧縮するとできるんだ」
リオは、眉を寄せて首を傾げる。
「こうみつどで……圧縮?」
「瘴気を、箱にぎゅうぎゅう詰めにするようなものかな。限界まで詰めると、魔金属になるんだ」
1号の言葉を受けて、アレンが補足する。
「集めて、逃げ場がなくなるくらい圧し固めると、性質そのものが変わるということだな」
箱にぎゅうぎゅう詰めにする──その表現で、リオは、瘴気が“集められる何か”として確かに存在しているのだと想像できた。
「集めて、別のものに変えてしまう……科学って、面白いな」
理解できてすっきりしたリオは、示された金属を必要箇所に当てる。
どういう原理かは不明だが、接合そのものは1号自身で行えるらしい。
ところどころ金属の線が飛び出し、表皮の剥げている部分もあるが、どうにか腕の接合に成功する。
不格好ながらも、右手を何度か握り感覚を確かめる1号は、ほんの少し嬉しそうだった。
「関節角度を少し補正すると、負荷分散が最適化されるんだよ」
そんなことを言いながら、1号は腕の調整を終え、次に脚の接合へと移っていく。
リオは右脚を支えながら、尋ねた。
「ふかぶんさん?」
「一点に負荷が集中すると、壊れやすくなるからね。全体に分散することで、耐久性や安定性を高めるんだ」
「へえ……地面じゃなくて、水の上に卵を落としたら割れにくい、みたいな感じ?」
1号が小さく微笑む。
「そうだね」




