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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第11章 未来を紡ぐ手
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第1話 支え合う手と足

 1号に案内されたのは、工房のような場所だった。

 静寂を裂くように、金属同士がかすかに擦れ合う音だけが響いている。


「そこに我を置いてくれるかな」


 示されたのは、ちょうど子供が寝ころべるくらいの台だった。

 アレンが、ゆっくりと1号を下ろす。


 リオは欠損した右腕と両脚をじっと観察し、アレンと視線を交わした。


「完全に切断されてしまって……金属の芯も途切れてるね」


 一応、ユリウスとイリスに頼んで切断された手と脚を持ってきたが、そのままくっつけてどうにかなるものではなさそうだった。


「我の見立てでは、左脚は根元から切断、関節も死んでるね。右脚も駆動系が完全に破損しているよ」


 1号が損傷を確認し、淡々と報告する。


「右腕も欠損、動力系統は半壊。補助関節も停止している」


 皮膚のような外装の裂け目から覗く内部は、生き物の筋肉や血管を思わせるほど入り組んでいた。

 欠損の深刻さは一目でわかり、修理の難度を、リオたちに直感させた。


 どうしようかとリオとアレンが顔を見合わせていると、1号が口を開いた。


「少し、手伝ってほしいんだ」


 まずは、右腕を直す。


 頼まれた素材を持ってきて、アレンとリオで、細かな工具を使いながら、微細な関節と金属の支柱を慎重に組み立てていく。


 フィオナが、光魔法で手元を照らす。

 ユリウスは、水魔法で洗浄する。

 イリスは、風魔法で金属の熱を冷まし、埃を払った。


「これ、何の金属?」

魔金属(エーテリウム)だよ。瘴気を高密度で圧縮するとできるんだ」


 リオは、眉を寄せて首を傾げる。


「こうみつどで……圧縮?」

「瘴気を、箱にぎゅうぎゅう詰めにするようなものかな。限界まで詰めると、魔金属(エーテリウム)になるんだ」


 1号の言葉を受けて、アレンが補足する。


「集めて、逃げ場がなくなるくらい()し固めると、性質そのものが変わるということだな」


 箱にぎゅうぎゅう詰めにする──その表現で、リオは、瘴気が“集められる何か”として確かに存在しているのだと想像できた。


「集めて、別のものに変えてしまう……科学って、面白いな」


 理解できてすっきりしたリオは、示された金属を必要箇所に当てる。

 どういう原理かは不明だが、接合そのものは1号自身で行えるらしい。


 ところどころ金属の線が飛び出し、表皮の剥げている部分もあるが、どうにか腕の接合に成功する。

 不格好ながらも、右手を何度か握り感覚を確かめる1号は、ほんの少し嬉しそうだった。


「関節角度を少し補正すると、負荷分散が最適化されるんだよ」


 そんなことを言いながら、1号は腕の調整を終え、次に脚の接合へと移っていく。


 リオは右脚を支えながら、尋ねた。


「ふかぶんさん?」

「一点に負荷が集中すると、壊れやすくなるからね。全体に分散することで、耐久性や安定性を高めるんだ」

「へえ……地面じゃなくて、水の上に卵を落としたら割れにくい、みたいな感じ?」


 1号が小さく微笑む。


「そうだね」

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