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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第10章 真実との邂逅
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第4話 壊れぬ牙

「1号、ひとつ問う」


 アレンが口を開く。


「お前は瘴気を増やして、何がしたい」


 1号はしばらくアレンを見つめた後、何か思い当たったように表情を明るくする。


「ああ!汝らの行動と真逆だから、理解できないんだね」


 鈴の音のように澄んだ声で、笑う。


「我は世界を正す。瘴気はその目的を達成するための、手段に過ぎない」


「その“正す世界”に、人は存在するのか?」


 アレンが問いかける。


 1号の唇が、弧を描く。


「存在しないよ。そもそも、この世界における人間は異物だ。瘴気を生み出す、毒でしかない」


 1号が、両腕を広げる。


「人間さえいなくなれば、自浄作用で瘴気も消える。それが、正しい世界の姿なんだよ」


 それは、そうかもしれない。

 だが、リオは思わず問い返す。


「テラは……テラの人達は、どうなるの?」


 人間を異物とするなら、テラも例外ではないのでは──。


 1号が、ため息をつく。


「汝は、本当にくだらないことを気にするね。ルミナスにとって、テラがどうなろうと関係ないでしょ?」

「そんなことない。ルミナスもテラも、古代の人が決めた、ただの枠組みだ。俺たちは、同じ人間なんだ」


 魔法が使えるから、何だ。

 技術を持っているから、何だ。


 魔法も技術も、人を助けるために使える。

 その素晴らしさを知っている。


 だから、協力できるはずだ。

 いがみ合わず、手を取り合えるはずだ。


「……リオ、もういい」


 アレンが、リオの思考を止めた。


「自分の内にある“守りたいもの”だけを指針にしろ。道理の通じない相手には、“俺たちの理由”を突き付けて戦うしかないんだ」


 リオは、言葉を返そうと口を開きかける。

 だが、その前に。


 フィオナが1号を見据え、静かに告げた。


「リオ、ユリウス、イリス。自分の心が壊れないための、答えを持ちなさい」


 理由。

 答え。


 目の前の少年が人類の敵ならば──止めなくてはいけない。


 同じ結論に至ったイリスが、1号に槍を突き付ける。

 それに呼応して、リオが剣を振る。


 1号の肘が、反対方向に曲がる。

 両腕でイリスの攻撃を捌き、垂直に脚を上げ、リオの追撃を受け止める。


 空気がビリビリと裂けた。


 ユリウスが水魔法で、床についた1号の脚を封じる。

 1号が煩わしそうに顔を歪める。


「ああもう、鬱陶しいなあ」


 腕が伸び、鞭のようにしなって振動が壁まで伝わる。

 瓦礫が舞い、砂塵が辺りを包む。


 イリスとユリウスは宙を舞い、壁に叩きつけられる。


「イリス!ユリウス!」


 リオは叫ぶ。

 二人とも、打ち付けられ、意識が朦朧としているのか、すぐには起き上がれない。


 1号が、自由になった脚で床を蹴り、体を回転させる。


 アレンが剣で、蹴りを受け止める。

 両足を床に滑らせ、蹴り返す勢いのまま、瞬時に体勢を立て直す。


 リオも剣を合わせるが、うまく着地できない。

 左手と両足で体を支え、床を滑らせながら反転し、反撃の構えを作る。


「どうせすぐに朽ちるのに、どうしてそこまで必死になるかな。朽ちたら、何も残らないでしょ?」

「そんなこと、ない!」


 立ち上がり、リオは力強く断言する。


「過去の人の……先人の積み上げたものを、侮辱するな!」


 今の平和は、先人の──アレンたちの努力の結晶だ。

 それを踏みにじられるのは、許せなかった。

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