表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第10章 真実との邂逅
83/84

第5話 意志の力

 1号は表情を消した。そして、首を傾げる。


「そんなもの、理解できないしどうでもいいよ。まあ……時には興味深いこともあるけれど」


 心底わからないと、とぼけたように呟く。


「それだけだよ、結局は不必要。邪魔なものなんだ」


 ああ、ダメだ。

 リオは泣きそうになって顔を歪めた。


 言葉が通じないのは、わかっているのに。

 わかってほしくて、言葉を重ねてしまう。


 その矛盾に気づいていて、やめられない。


 だって、問えば言葉が返ってくるのだ。

 会話は、できるのだ。


 それなのに、ただ、わかり合えない。


 アレンが斬り込む。


「またそれかい?我に一度見せたものは、繰り返さない方がいいよ」


 どれだけ早く斬り込んでも、正確に弾かれる。


 弾かれた勢いのまま宙で回転したアレンの足元に、光が収束する。


「おや?」


 1号が、少し驚いたように眉を上げた。


 それは光の盾だった。

 1号の周囲に、フィオナが作った白銀の盾がいくつも浮かぶ。


 アレンはそれを足場に、軌道を変えて斬り込む。


 1号が眉をひそめた。

 アレンの動きを目で追おうとするが、フィオナの魔法の槍が現れ、そちらに視線が向く。


 1号が魔法の無効化を優先した。

 左腕を結晶化させる。


 魔法が無効化された──それと同時に、アレンが右腕を斬り落とした。


 ガシャン、と腕が落ちた。

 生身でない、金属のような音。


 断面には、金属の紐のようなものが詰まっている。


「ふうん……優先順位を間違えたね。失敗したよ」


 片腕を失ったのに、1号は何事もないようにそう言った。


「痛く……ないの?」


 リオが問うと、1号はおかしそうに笑う。


「痛覚のことを言っているのかな?そんなものはないよ。体の異常は、構造上の変化を見ればわかるから」


 言葉は淡々としていた。

 だが、その瞳に、初めて好奇心が宿る。


「汝は、我をすぐに人間と同等のものとして扱おうとする。何度無意味だと言っても、繰り返すんだろうね。なんて愚かで……おもしろい」


 アレンが再び、踏み込む。

 一瞬で間合いを詰めた。


 1号は話の邪魔をされたことを不快に思ったのか、視線を向けずに左腕で受け止めようとする。


 アレンの右腕が振り下ろされる──そう見えた瞬間、体の後ろに隠していた左腕が、振りかぶられる。

 右手の炎の剣が掻き消え、入れ替わるように、左手の本物の剣が振り抜かれた。


 1号の左脚が飛んだ。

 その体が、ぐらりと傾ぐ。


 この隙を、逃してはいけない。

 リオも駆け出した。


 しかし、1号はすぐに、一本の脚で姿勢を保った。


「はは!すごいね!さっきのもだけど、これも“見た”ことがない!」


 1号が右の蹴りで深く床を叩いた。

 その反動で、体が螺旋を描くように回る。


 左の腕が弧を描き、リオたちの視線を奪う――その刹那、右の脚が横へ跳ね、リオとアレンの足元を掬った。


「うわっ!」


 リオの手から剣がこぼれ落ちる。


 アレンも体勢を崩した。


 軸の慣性を乗せた左腕が突き出される。

 刃のように伸び、アレンの胴を抉った。


 右脚で床を蹴り返し、勢いのまま距離を詰める。


 アレンが呻いた。


「……っ!」


 左腕でアレンの動きを封じたまま、右脚の鋭い一撃が振り下ろされる。


 その脚を見上げたアレンは、ふっと口角を上げて、剣を投げるように手放した。


 1号が、目を丸くする。


「……は?」


 予想外の動きに戸惑い、一瞬、動きが鈍る。


 リオが、空を舞うアレンの剣を掴み取る。

 体をひねり、下から、迎え撃つように振り上げた。

 脚と刃がぶつかる──その衝突ごと、断ち割った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ