幕間 フィオナ
おそらく食事である謎のゼリーを口にする。
フィオナの目は据わっていた。
そして決意する。今日こそ、ここを抜け出すと。
昨日、突然闇に飲まれた。
足元が消えて、浮遊する感覚。
リオは外へ出すことができた。
それだけで、フィオナはひとまず満足だった。
一日目は、混乱して、部屋の中をぐるぐると歩き回っていた。
だが二日目、それは無駄だと気づく。
そして、心配がよぎった。
落ちた瞬間に振り返り、アレンに大丈夫だと伝えた。
でも、あの顔は師を──ダリオスを喪った時の顔に似ていた。
リオはきっと大丈夫、アレンが傍にいるから。
でも、そのアレンが心配だった。
絶対に無茶をする。
だから、こちらから迎えに行かないといけない。
詠唱し、光魔法で壁を攻撃する。
ほとんど傷はつかない。
歯を噛みしめる。
アレンやリオのように、攻撃魔法が使えたら……。
せめて剣士であれば。何でもいい、武器があれば。
フィオナは振り返った。
そこには、切断された杖が落ちていた。
それを拾い、胸元で抱きしめる。
負けない。
何度も、何度も、同じところを攻撃した。
時折、天井が開いて瘴気魔獣が降って来た。
フィオナにとっては、恐れる必要すらない。
だが、もしあの闇に吸い込まれたのが、自分でなかったら。
ぞっとして、力任せに瘴気魔獣を浄化した。
己の魔力量を確認しつつ、何度も壁に魔法をぶつける。
黒い跡が付いたが、壁はびくともしなかった。
四日目。
フィオナは出される謎のゼリーを数え、日数を把握していた。
だが、昼夜の感覚までは把握しきれない。
ひっそりと、常に細く、魔力を体外に放出していた。
これは賭けだった。
ここがどこかは見当もつかない。
だが、アレンならきっと探し出してくれる。
諦めてはだめだ。
できることを、するんだ。
その時だった。
胸元が、熱くなった。
フィオナは目を見開いた。
温かい、よく知る魔力が体を包み込み、そして消えた。
一瞬だった。
だが、既に懐かしさを感じるその温もりに、涙が零れた。
*
見つけてくれた。
アレンはきっと来てくれる。
そう信じて、今日も壁に魔法をぶつける。
金属の軋むような音が聞こえて、フィオナは手を止めた。
今まで見向きもしなかった方の壁から、音がした気がする。
続けて、また音がした。
壁にひび割れが走る。
そして、三度目の音で、壁が割れた。
扉のように、ゆっくり開く。
金属の崩れる音が、部屋に響き渡る。
アレンだった。
アレンがそこに立っていた。
視線が絡み、フィオナは駆け出した。
「フィオナ」
アレンが名を呼び、一歩、踏み出す。
次の瞬間、その胸に飛び込んだ。
アレンの体がぐらりと揺れ、そのまま尻もちをつくように倒れ込んだ。
一瞬、硬直する。
それから、ゆっくりと、抱き返してくれる。
互いの震えが、伝わり合う。
アレンが、安堵の吐息を漏らす。
──信じてた。




