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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第9章 海への旅
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幕間 アレン

 目を瞑るたび、あの光景が脳裏に浮かんだ。


 漆黒の裂け目に飲まれるフィオナ。

 リオを助けた後、振り返った彼女は、胸元──揃いの指輪が揺れているはずの場所を強く握り、口を動かした。


「私は、大丈夫だから」


 咄嗟にできることはした。

 ユリウスの杖を投げ込み、裂け目の特徴を少しでも掴もうとした。


 だが、助けられなかった。

 どれだけ強くなっても、大切なものはこの手を零れ落ちていくのか。



 リオにかけた言葉は、すべて自分へ向けたものだった。


 どんな時でも、揺らいではいけない。

 頭がいっぱいになったら、体を動かせばいい。


 取り乱したところで、何も解決しない。

 うろたえる()も、足踏みも、無駄だ。



 眠れない夜、己を限界まで酷使した。

 日中はいつも通りに過ごし、夜は魔力を使いつぶす勢いでフィオナを探す。


 円の中央に立ち、花びらを数えるように。

 刻まれた十二の扇を順に探索する。

 一日で、十二のうち一つが限界だった。


 一番怪しんだのは、竜と戦った北。

 だが魔力の痕跡はない。


 次は人の多い南。

 ここも空振り。


 だったら東だと思ったのに、やはり見つからない。


 完全に範囲内に収まらなくても、近ければわかるはずなのに。

 焦燥だけが広がっていく。



 四日目。

 リオとともに、竜を──竜の偽物を討伐した。


 白銀の剣を振るうその姿は、まるで自分を見ているかのようだった。


 すべてが終わった後、海に浮かぶリオの笑顔を見てほっとする。

 ふと目を上げると、夕焼けが視界を染めていた。


 まさか、西?


 西には海しかない。

 だから、最後にしようと思っていた。


 だが、アレンは己の直感を信じた。


 日中に魔法を使い、魔力は少ない。

 それでも、限界まで絞り出す。


 ゆっくりと探索範囲を広げる。

 取りこぼさぬように。

 決して、逃さぬように。


 目は閉じたまま、魔力の感覚だけを頼りに探索する。


 脳裏に、白が揺らめく。


 ──見つけた。


 アレンは目を開けた。

 ようやく、見つけた。


 すぐに迎えに行く。

 だから、どうか無事でいてくれ。


 その思いだけを魔力に込め、か細い白の光を包む。


 魔力が切れた。

 意識が、飛びそうになる。


 リオに伝えなければ。

 あの子も、心配していた。

 早く、伝えなくては。


 足がもつれ、転ぶ。


 ベッドにもたれかかるように倒れ込み。

 アレンは、完全に意識を失った。

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