第11話 決意の境界
両親を見ていたリオは、ゆっくりと息を吐いた。
胸の奥で、何かが静かに崩れ落ちていく感覚があった。
テラの生き残りが、俺たちを消し去ろうとしているなら。
だったら、テラをすべて消さなくてはいけない。
やられる前に、仕掛けなければ。
はっと息を呑んだ。
心臓がどくん、と強く鳴る。遅れて、全身に冷たいものが広がっていく。
一瞬でもそんな考えが脳裏をかすめたことに、ぞっとした。
「あの……」
か細い声に、皆の視線が向く。
小さく手を上げたユリウスは、びくりと肩を震わせながら口を開いた。
「瘴気魔獣が増えたのは、四十年前からですよね」
言われて、リオも思い出す。
──確かに、ヴァルセリオがそんなことを言っていた。
「それまで、テラは三百年近く沈黙していた。つまり、その時に何か……彼らの気に障る出来事があったんじゃないですか?」
張りつめていた空気が、わずかにゆるむ。
確かにそうだ。
三百年前に“殲滅”を宣言しながら、長らく行動を起こさなかったのだ。
「じゃあ、話し合えば解決できるかもしれないってこと!?」
イリスが、ぱっと顔を明るくする。
「そうよね、怒らせちゃったなら、謝ればいいのよね!お互いにごめんなさいってすれば……いいのよね……?」
周囲の反応を見て、イリスの表情からすっと光が消えていく。
声も次第に細くなり、口元の笑みもすぐに消えた。
──互いの謝罪で済ませるには、こちらの受けた痛手は大きすぎた。
昨日の戦いが、それほどまでに苛烈だったからだ。
ユリウスが視線を落とし、静かに首を横に振る。
リオはユリウスとイリスのやり取りをじっと見ていた。
不思議と、先ほどの考えはもう消えていた。
「……許すかどうかは、また別の問題じゃないかな」
リオは口を開く。
胸の奥に、確かな答えが沈んでいく。
「生き残りのテラを探そう。きっと、この街のどこかにいるはずだよ」
知りたいと思った。
理解したいと思った。
「確かめよう。どうしてこんなことをしたのか。何が引き金になったのか」
そして──
「俺たちと、これからどうありたいのか」




