第6話 信じてた
「今はとにかく、フィオナを探そう」
アレンにそう言われ、リオは疑問を振り払い、頷いた。
アレンがフィオナの気配を探り、都市の奥へと足を踏み入れる。
完全に建物の内部に入ると、どこまでも無機質な白い廊下が続いていた。
「こっちだ」
アレンも、地図を持っているわけではない。
大体の方向しかわからず、時折、突き当たりにぶつかる。
距離が近いのか、急ぐ様子を見せるアレンは、小さく舌打ちをした。
そうして、いくつもの曲がり角を曲がった先──ようやく、アレンが足を止めた。
「……ここだ」
壁に触れたアレンが、確信を持って言う。
よく見ると、それは扉のようだった。
単なる壁とは異なり、人が一人通れるほどの大きさで、縦横に走る溝が枠のように浮かび上がっている。
リオは手の甲で叩いてみた。
壁と同じ、金属のような材質だ。
「硬そうだね、これ」
近くをペタペタと触ってみるが、開け方は分からない。
「下がっていろ」
アレンが剣を抜く。
リオはぎょっとして、イリスとユリウスの手を引き、距離を取った。
アレンは剣を構え、鋭い一振りを扉に叩きつけた。
金属特有のきしむ音が鳴り響く。
だが、びくともしない。
アレンの目が鋭く光る。
口元だけがわずかに動き、低い声が短く漏れた。
「……へえ?」
もう一度、力を込めて剣を振るう。
衝撃で一部がささくれ、ひび割れが広がった。
三度目の一撃で、扉が割れた。
ひび割れた部分が崩れ、ゆっくりと開く。
崩れる金属の音が、廊下に反響した。
アレンが剣をゆっくりと下ろす。
その瞳は、一点を見つめていた。
口元がわずかに動き、静かに足を踏み出す。
次の瞬間──小さく駆ける音とともに、部屋の中から誰かが飛び出してきた。
この真っ白な空間でも輝きを失わない、銀色の髪が舞う。
アレンがその体を受け止め、尻もちをつくように倒れ込む。
一瞬硬直した後、そのまま、強く抱きしめた。
リオは目を見開く。
見間違えるはずがない。
「母さん!」
アレンの背に腕を回し、顔を埋めるその人は──間違いなく、リオの母、フィオナだった。
*
部屋の中は、簡素だった。
人工的に整えられた白い空間に、白いベッドがぽつんと置かれ、光を受けて壁に冷たい影を落としている。
足を踏み出すたび、床は金属のように硬く、ひんやりと冷たい。
部屋の角、天井に何かが付いている。
それに気づいたリオは、風魔法で叩き落とした。
真っ二つになったそれは落下し、砕けた。
金属の割れるような音。
ひしゃげた内部からは、金属の細い紐のようなものが、複数のぞいていた。
何だか気持ち悪く、思わず壊してしまった。
細い紐を親指と人差し指でつまみ、ぽいと部屋の端へ投げた。
「恥ずかしいところを、お見せしました……」
フィオナが照れたように、イリスとユリウスに言った。
その手は、しっかりとアレンの手を握っている。
イリスが、ほっとした笑顔を浮かべる。
「無事でよかったです……」
ユリウスも安堵したように笑った。
「お元気そうで、何よりです」
リオも、その輪に加わる。
フィオナが攫われてから、四日。
変わりない様子に、リオはようやく、胸の奥の力を抜いた。




