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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第9章 海への旅
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第6話 信じてた

「今はとにかく、フィオナを探そう」


 アレンにそう言われ、リオは疑問を振り払い、頷いた。


 アレンがフィオナの気配を探り、都市の奥へと足を踏み入れる。

 完全に建物の内部に入ると、どこまでも無機質な白い廊下が続いていた。


「こっちだ」


 アレンも、地図を持っているわけではない。

 大体の方向しかわからず、時折、突き当たりにぶつかる。


 距離が近いのか、急ぐ様子を見せるアレンは、小さく舌打ちをした。


 そうして、いくつもの曲がり角を曲がった先──ようやく、アレンが足を止めた。


「……ここだ」


 壁に触れたアレンが、確信を持って言う。


 よく見ると、それは扉のようだった。

 単なる壁とは異なり、人が一人通れるほどの大きさで、縦横に走る溝が枠のように浮かび上がっている。


 リオは手の甲で叩いてみた。

 壁と同じ、金属のような材質だ。


「硬そうだね、これ」


 近くをペタペタと触ってみるが、開け方は分からない。


「下がっていろ」


 アレンが剣を抜く。


 リオはぎょっとして、イリスとユリウスの手を引き、距離を取った。


 アレンは剣を構え、鋭い一振りを扉に叩きつけた。

 金属特有のきしむ音が鳴り響く。


 だが、びくともしない。


 アレンの目が鋭く光る。

 口元だけがわずかに動き、低い声が短く漏れた。


「……へえ?」


 もう一度、力を込めて剣を振るう。

 衝撃で一部がささくれ、ひび割れが広がった。


 三度目の一撃で、扉が割れた。

 ひび割れた部分が崩れ、ゆっくりと開く。


 崩れる金属の音が、廊下に反響した。


 アレンが剣をゆっくりと下ろす。

 その瞳は、一点を見つめていた。


 口元がわずかに動き、静かに足を踏み出す。


 次の瞬間──小さく駆ける音とともに、部屋の中から誰かが飛び出してきた。

 この真っ白な空間でも輝きを失わない、銀色の髪が舞う。


 アレンがその体を受け止め、尻もちをつくように倒れ込む。

 一瞬硬直した後、そのまま、強く抱きしめた。


 リオは目を見開く。

 見間違えるはずがない。


「母さん!」


 アレンの背に腕を回し、顔を埋めるその人は──間違いなく、リオの母、フィオナだった。


 *


 部屋の中は、簡素だった。


 人工的に整えられた白い空間に、白いベッドがぽつんと置かれ、光を受けて壁に冷たい影を落としている。

 足を踏み出すたび、床は金属のように硬く、ひんやりと冷たい。


 部屋の角、天井に何かが付いている。

 それに気づいたリオは、風魔法で叩き落とした。


 真っ二つになったそれは落下し、砕けた。

 金属の割れるような音。

 ひしゃげた内部からは、金属の細い紐のようなものが、複数のぞいていた。


 何だか気持ち悪く、思わず壊してしまった。

 細い紐を親指と人差し指でつまみ、ぽいと部屋の端へ投げた。


「恥ずかしいところを、お見せしました……」


 フィオナが照れたように、イリスとユリウスに言った。

 その手は、しっかりとアレンの手を握っている。


 イリスが、ほっとした笑顔を浮かべる。


「無事でよかったです……」


 ユリウスも安堵したように笑った。


「お元気そうで、何よりです」


 リオも、その輪に加わる。


 フィオナが攫われてから、四日。

 変わりない様子に、リオはようやく、胸の奥の力を抜いた。

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