第9話 息づく覚悟
これで説得できなかったらどうしよう。
緊張で、心臓が激しく打ち続ける。
「……よく考えたな」
リオは、わずかに目を見開いた。
アレンは口元に微笑を浮かべ、優しい目でリオを見つめていた。
「まだ粗い部分はある。だが、説得力は十分だ」
胸の奥で、強く拳を握る。
喜びが、静かに込み上げた。
「聖導教会と魔法局への説明も考えると、もう一段、実用に落とし込む必要がある」
アレンは紙を取り出し、迷いなくペンを走らせた。
「まずは定義だ。“監視”の対象を明確にする必要がある」
「えっと……権力の乱用、兵器の製造、極端な人権侵害……とか?」
リオの言葉を拾いながら、アレンは次々に書き留めていく。
「透明性の確保もだな。1号の記録は定期的に提出させる。要点は公開し、住民にも示すといいだろう」
ペンは止まらない。
「年に一度以上、1号自身の検査だけでなく、監査も必要だ。加えて、初期段階では重大な判断に人間の承認を必須とする」
リオは紙を見つめ、息を呑む。
自分の提案が、形になっていく。
「最初は観察と記録に限定する。次に助言、合意時の限定介入……そして最終的に、評価を経て段階的に権限を拡張する」
書き終えたところで、アレンが顔を上げた。
「1号には、説明責任も課す。判断の理由を常に言語化させる」
そして、まっすぐにリオを見る。
「リオ。お前が責任をもって、1号を評価しろ」
その瞳にあるのは、揺るぎない信頼だった。
リオは一瞬だけ息を呑み、それから力強く頷いた。
*
最後に、リオは一つだけ、お願いをした。
「もし、1号がやりたくないって言ったら……この話はなかったことにしてほしいんだ」
1号に実際に依頼する段階までには、相当な準備が必要だ。
時間も手間もかかる。それをすべて棒に振ることになりかねない願いだった。
「俺にできることなら、何でもする。だから……」
ペンを持ったまま、アレンが頬を緩めた。
「そんな心配はしなくていい。だが……本当に、お前は……」
一拍置き、顔を上げると、アレンが目を細める。
「立派になったな」
胸の奥がぎゅっと熱くなる。
言葉にならない感情がこみ上げ、自然と目尻が熱くなった。
「俺は、父さんの息子だから」
リオは、自信と誇りを持って、笑顔でそう返した。




