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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第12章 積み重ねたもの
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第10話 信頼を託すとき

 聖導教会本部。

 静まり返った大広間に、七人の視線が集まっていた。


 リオはその中央へ、1号の手を引いて進み出る。


 アレン、フィオナ、ヴァルセリオ。

 そしてノエル、ラウレン、ジーク、イゼリア。


 1号には、事前に「大切な話がある」とだけ伝えていた。

 首を傾げながらも、特に嫌がる様子はなく、大人しくついてきた。


 だが、この顔ぶれを見た瞬間──つないだ手に、ぎゅっと力が入った。


 アレンが歩み寄り、1号の前で片膝をつく。


「1号、お前に頼みがある」


 目線を合わせ、穏やかに言う。


「だが、これは願いであって命令じゃない。受けるかどうかは、お前が決めてほしい」


 1号はアレンを見つめ、ゆっくりと頷いた。


 アレンの表情が、和らぐ。


「いつまでという期限はない。これから先──俺たちが道を誤らないよう、客観的に見ていてほしい」

「……え?」


 一瞬、言われたことの意味が分からなかったのか、1号が声を漏らす。


「甘やかすつもりはない。ただ、俺たち自身を律するための存在になってほしい。それが、俺からの願いだ」


 1号は何度も瞬きをする。

 その顔に、戸惑いが広がっていく。


「……でも、我は……」


 ぎゅっと眉を寄せ、視線を落とす。


「我には、そんな資格は……」


 アレンは、静かに首を横に振った。


「もう十分に、貢献してくれている」


 はっきりと言い切る。


「たった三年でここまで発展できたのは、お前の協力があったからだ」


 頬を緩め、柔らかく続ける。


「……ありがとう」


 まるで理解できない言葉を聞いたかのように、1号の瞳が大きく見開かれる。


「……っ」


 声にならない。

 喉が詰まり、言葉が途切れる。


 頬を、雫が伝った。


「……我で、いいの?」


 震える声で、問いかける。


「そんな大切な役割を……我に与えて、いいの?」

「ああ」


 アレンは、迷いなく頷く。


「これは俺を含む、我々の総意だ」


 その一言が引き金になった。


「うあぁぁ……!」


 堰を切ったように声を上げ、1号は泣き崩れる。

 リオの手を離し、アレンにしがみついた。


 小さな体が震え、嗚咽が大広間に響く。

 その姿は、ようやく居場所を見つけた子どものようだった。


 リオは、胸が熱くなる。


 アレンは小さく息を吐き、ふっと笑うと、静かにその背を撫でる。


「やる……我は、やる」


 たどたどしく、言葉を繋ぐ。


「はじめは、だめなところがたくさんあるかもしれない。でも……頑張る……」


 その決意を、この場の誰もが温かく見守っていた。


「一人で頑張らなくてもいい。まずは、リオと一緒に。な」

「……リオ?」


 目をこすりながら、1号がアレンから体を離して振り向く。


「リオの言いだしたことなんだ。だから、リオにもしっかり責任を担ってもらう」


 リオは視線を横へ流し、首の後ろに手を当てる。


 その瞬間、1号の瞳にまた涙が溢れた。


「りおぉお……」


 今度は、リオへと飛び込む。


 リオは受け止め、小さく笑う。

 そして、その小さな頭をそっと撫でた。

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