第10話 信頼を託すとき
聖導教会本部。
静まり返った大広間に、七人の視線が集まっていた。
リオはその中央へ、1号の手を引いて進み出る。
アレン、フィオナ、ヴァルセリオ。
そしてノエル、ラウレン、ジーク、イゼリア。
1号には、事前に「大切な話がある」とだけ伝えていた。
首を傾げながらも、特に嫌がる様子はなく、大人しくついてきた。
だが、この顔ぶれを見た瞬間──つないだ手に、ぎゅっと力が入った。
アレンが歩み寄り、1号の前で片膝をつく。
「1号、お前に頼みがある」
目線を合わせ、穏やかに言う。
「だが、これは願いであって命令じゃない。受けるかどうかは、お前が決めてほしい」
1号はアレンを見つめ、ゆっくりと頷いた。
アレンの表情が、和らぐ。
「いつまでという期限はない。これから先──俺たちが道を誤らないよう、客観的に見ていてほしい」
「……え?」
一瞬、言われたことの意味が分からなかったのか、1号が声を漏らす。
「甘やかすつもりはない。ただ、俺たち自身を律するための存在になってほしい。それが、俺からの願いだ」
1号は何度も瞬きをする。
その顔に、戸惑いが広がっていく。
「……でも、我は……」
ぎゅっと眉を寄せ、視線を落とす。
「我には、そんな資格は……」
アレンは、静かに首を横に振った。
「もう十分に、貢献してくれている」
はっきりと言い切る。
「たった三年でここまで発展できたのは、お前の協力があったからだ」
頬を緩め、柔らかく続ける。
「……ありがとう」
まるで理解できない言葉を聞いたかのように、1号の瞳が大きく見開かれる。
「……っ」
声にならない。
喉が詰まり、言葉が途切れる。
頬を、雫が伝った。
「……我で、いいの?」
震える声で、問いかける。
「そんな大切な役割を……我に与えて、いいの?」
「ああ」
アレンは、迷いなく頷く。
「これは俺を含む、我々の総意だ」
その一言が引き金になった。
「うあぁぁ……!」
堰を切ったように声を上げ、1号は泣き崩れる。
リオの手を離し、アレンにしがみついた。
小さな体が震え、嗚咽が大広間に響く。
その姿は、ようやく居場所を見つけた子どものようだった。
リオは、胸が熱くなる。
アレンは小さく息を吐き、ふっと笑うと、静かにその背を撫でる。
「やる……我は、やる」
たどたどしく、言葉を繋ぐ。
「はじめは、だめなところがたくさんあるかもしれない。でも……頑張る……」
その決意を、この場の誰もが温かく見守っていた。
「一人で頑張らなくてもいい。まずは、リオと一緒に。な」
「……リオ?」
目をこすりながら、1号がアレンから体を離して振り向く。
「リオの言いだしたことなんだ。だから、リオにもしっかり責任を担ってもらう」
リオは視線を横へ流し、首の後ろに手を当てる。
その瞬間、1号の瞳にまた涙が溢れた。
「りおぉお……」
今度は、リオへと飛び込む。
リオは受け止め、小さく笑う。
そして、その小さな頭をそっと撫でた。




