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アルの還る場所  作者: 無名の記録者
第12章 積み重ねたもの
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第7話 言葉にできないもの

 リオはヴァルセリオから古代遺物の管理について相談を受け、錬環区(アルケイン)の倉庫を訪れていた。

 許可がなければ立ち入れない区域で、今はリオと1号しかいない。


 壊れたマグナ・オルビスと、野外訓練で拾った薄片。

 他にも細かな黒い欠片が厳重に保管されている。


 それを見て、1号が眉を寄せた。


「管理の仕方がずさんだね」


 聞き逃せない一言だった。


「テラはどういう管理をしてた?」

「暗所で隔離して、外壁は魔金属(エーテリウム)層で二重保護するんだよ」


 思っていた以上に厳重だ。


「使用者が生気を吸われるのは、ヴァルセリオの件で知っているだろうけど。近接者は短期的には集中力の低下が見られて、長期接触では敵対感情や抑うつが現れるんだよ。ガラスや普通の金属で囲うだけだと危険だね」

「ん……ん!?」


 リオは額に手を当てる。


「ちょっと待った。ヴァルセリオ先生……もだけど、そんな精神面にも影響するの?」


 1号は頷く。


「例えば、マグナ・オルビス。瘴気を利用した魔法代わりの武器で、性能はいいけど、扱いづらいし代償も大きい。テラの中でも罪人に使わせていたくらいだよ」


 ぞくりと背筋が冷える。

 それが事実だとすると、本当に危険だ。


「今すぐ何とかしないと……壊せばいい?」

「それは初期の不良品だね。黒冥鉱(ネクロライト)としても失敗作だから大丈夫。小さいのは、その程度なら常時身につけなければ問題ないよ」

「……よかった」


 ほっと息をつく。

 落ち着いたところで、聞きなれない単語があったことに気づく。


「それで、“ねくろらいと”って?」

「ここにある金属のことだよ。ほら、マグナ・オルビスの主な素材になってる」


 1号が箱を指す。まるで、中身が見えているかのようだった。


「瘴気に極めて高い親和性を持っていて、瘴気を引き寄せ・吸収・安定化して内部に保持することができるんだ。でもマグナ・オルビスの扱いづらさも、黒冥鉱(ネクロライト)の性質のせいだからね」


 1号が困ったように息をつく。


黒冥鉱(ネクロライト)魔金属(エーテリウム)と真逆の役割を持つんだよ。魔金属(エーテリウム)が高密度・高圧縮するのに対して、黒冥鉱(ネクロライト)は低お──」


 その瞬間、リオの身体が強張った。

 1号が口に出そうとしている内容を、理解してしまった。


 思わず口元を押さえる。

 手の中で、声なく1号の唇が動く。


 心臓が、どくどくと、うるさいくらいに音を立てる。


「だめだ、1号」


 1号が、目を見開く。


「それは、言葉にしたら、だめなんだ」


 しんと静まり返った。


 1号の瞳には、戸惑いと──ためらいが浮かぶ。


 リオがゆっくり手を離すと、1号は小さく息を吐き、開いていた口をぎゅっと閉じた。

 そして、深くうなずく。


 それだけで、十分だった。


 マグナ・オルビスなどを作る素材。

 その危険な金属の作り方。


 それは──決して知ってはいけないものだ。

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