第6話 隣にいる理由
旅から戻ったあと、1号はリオの後ろをついてくるようになった。
アレンは、その変化を何も言わずに見守るだけだった。
学園生活も再開した。
はじめて1号と一緒に教室へ入ったとき、当然のように驚かれた。
だが、預かっている子で、事情があって一緒に学ばせてほしいと伝えると、みんなあっさり受け入れてくれた。
「……実は、隠し子ってことはない?」
同級生の一人が、興味本位でそんなことを尋ねてきた。
1号はその生徒を見上げたまま、じっと見つめる。そして微笑んだ。
「残念ながら、違うよ。我も、アレンの息子だったらよかったんだけどね」
「わー、わかる!アレンさんの息子とか、憧れるよね!」
すぐに別の声が乗る。
「いや……息子なんて、憧れでなるものじゃないでしょ」
リオが引き気味に返した瞬間、教室の空気が止まった。
全員の視線が、一斉にリオへ向く。
「俺、今日ほどリオが憎らしいと思ったことないよ」
「うん、本当、そうだよね」
「えぇ……」
納得いかず、眉を寄せる。
隣で、1号が笑った。
その穏やかな空気のまま、1号は自然とクラスに溶け込んでいった。
*
寮の自室で、リオは新しい魔法陣を作っていた。
部屋には椅子が一つ増えている。1号の分だ。
隣に座った1号が、完成していく魔法陣を見つめている。
「リオ」
ふいに声が落ちた。
「ここ、制御が甘いね。これだと六割くらいの確率で暴発するよ」
「ん?……本当だ。ありがとう、1号。これ今日納品予定だったんだ、助かった」
リオはすぐ、修正に取りかかる。
だが、途中でふと手を止めた。
「どうしたの?間に合わないよ?」
不思議そうに首をかしげる1号に、リオはゆっくり目を向けた。
「1号……もし俺たちが間違えそうになったら、止めてほしい」
1号が一瞬、きょとんとした表情を浮かべた。
リオはまっすぐ見つめ、言葉を選ぶようにして付け加える。
「殴ってでも、ね」
少しだけ間を置き、頬を緩めて続けた。
「もちろん、1号が踏み外しそうになったら、俺たちも怒るから」
1号は目を丸くする。
ゆっくりと瞬きをして、眉を下げた。
「我が殴ったら、リオは吹き飛ぶよ?」
「大丈夫。俺だって鍛えてるんだから」
どちらからともなく笑みがこぼれ、二人は小さく笑い合った。




