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一条戻り橋  作者: yukko
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あとがき (面白の駒と右近の少将について)

「あとがき」で、この物語の男性に付いて記します。

それは、兵部の少輔(ひょうぶのしょう)と右近の少将です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

黄金の透き箱([透かし彫りのある箱])で衣箱の大きさの物が結んであって、朽葉([赤みを帯びた黄色])の薄物([上等の絹])が包んで、入れてありました。

四の君が「これはどこからの贈り物でしょう」と訊ねると、「ただ『北の方(四の君)がご覧になれば分かります』と申して、使いの者が申しておりましたと答えたので、不思議に思って見ると、薄物が、海の色に染めて、敷き([箱の底])に敷いてありました。

黄金の洲浜([線を描いて州が出入りしている浜])が、中に造ってありました。沈の箱([沈香=香料。を入れておく箱])の船を浮かべて、島には木をたくさん植えて、洲崎([州が海中または河中に長く突き出て岬のようになった所])は、とても趣きがありました。

何か書いてあると思って見ると、白い色紙に、とても小さな字で、舟を浮かべた所に押し付けてありました。それを取って見ると、こう書いてありました。


「今となっては、島を漕ぎ離れて、行く舟から、領巾ひれ([布])を振るあなたの姿を、見るのさえ悲しいことなので。こう書いただけでも、あなたはわたしを悪く思われることでしょう。ならば、他には何も申しません」と書いてありました。

面白の駒の筆跡でしたので、四の君は今までにないほど、びっくりしました。

「いったい誰がこのようなことを」と、四の君の北の方も文を見て驚きました。

そして怪しみました。

四の君は、面白の駒とは心から契らず、普通の人のように、想う気持ちもなかったので、面白の駒を思い出すことはまったくありませんでしたが、文を見て、さすがに思い出さずにはいられませんでした。

少将(故大納言の三男)は、「これを左大臣殿の姫君に差し上げよう」と言うと、母である北の方は「とてもいい物じゃありませんか。ずっと、あなたが持ってなさい」と言いましたが、四の君も、⦅すべて左大臣殿のおかげです。⦆と思って、少将に「左大臣殿に差し上げてください」と答えました。

少将も、「それはよいことです」といって、「わたしがお持ちします」と言って取って行きました。

皆面白の駒のことは考えもしませんでしたが、妹を思う気持ちもあり、二人の間には子もあることと思って、よいことと、落窪の君が気をきかせたのでした。


面白の駒は、病を重らせて法師になったので、消息も分からなくなってしまいました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


以上が原作の面白の駒(兵部の少輔)です。

落窪の君に対して、何もしていないのに、右近の少将の北の方への復讐の一つと何も知らない四の君と結婚。

勿論、面白の駒も右近の少将の魂胆を知りません。

女性にモテない面白の駒は少将の計略に乗ってしまいます。

後朝の文も上手く書けない、見た目も悪く、女性を楽しませる言葉も無ければ態度も無い……という無いない尽くしの少輔です。

北の方に「恥」だと言われて、四の君の元へ通えなくなります。

所謂、締め出しですね。

源中納言は、殿上人の兵部の少輔を許さなかったわけではありません。

婿としての官位は充分なのです。

ただ、知らぬ間に……が許せなかったのですね。

それで、お披露目に出てきたものですから「許さへん!」となったわけですが、離婚させたいとは思っていませんでした。

離婚させたかったのは北の方なのです。

それで、締め出された面白の駒は「なんとなく離婚」になってしまったのです。

この時代の娘の処遇に対する母親の力は絶大でした。


兵部の少輔は二人の間の娘(姫)には会えず仕舞いでしたが、四の君の再婚にはお祝いを贈っているのです。

それが、「黄金の洲浜」です。文を添えて……。

そして、次に面白の駒が出て来るのは「病を得て法師になって旅に出、その旅先で消息不明になった。」ということです。消息不明とは……亡くなったということでしょう。



三の君も四の君も落窪の君を助けなかった。

三の君は「針子」扱いをし、四の君も笑っている姉妹の中の一人なのです。

だから、今の目で見ると「加害者側」ですね。

虐めを見ていたけれども助けなかった人達は、ある意味「加害者」だと言う人も居ますから……今なら「加害者側」だと言えると思います。


それに対して、面白の駒は何もしていません。全く何も……。

ただ、急に登場して直ぐに消えてしまう人物なのです。

しかも、右近の少将は母方の親族なのに面白の駒を笑っています。

「四の君との結婚」を面白の駒に話した時、後に「四の君と面白の駒の結婚話」を話した時に笑っているのです。


何故、何も全くしていない面白の駒がこんな目に遭わねばならないのか理不尽だと私は思いました。

然も、四の君と三の君には便宜を図った右近の少将が、親族(右近の少将の母の叔父の長男)なのに面白の駒には何一つ便宜を図らなかったのです。

こんな人(右近の少将)は私から見ればヒーローではありません。

だから、右近の少将をヒーローにするためにも、面白の駒を笑い者で終わらせないためにも、変えました。

変えようとすると、どうしても田辺聖子・著の「舞え、舞え、蝸牛。」(今は「おちくぼ姫」として本が出ています。}の設定になってしまいました。

それで、書いた物を少し経ってから書き換えました。(以降は「面白の駒」ではなく「兵部の少輔」にします。)


1.「兵部の少輔の初恋の人=四の君。」という設定で書きましたが、それを「会って少輔の顔を見ても笑わなかったから心惹かれた。」という設定に変えました。

2.田辺聖子・著では「四の君は落窪の君のように誰か公達に連れ出して欲しいと夢見ていた少女。」と書かれていますが、兵部の少輔と会って話して「兵部の少輔の心に惹かれた。」にしました。

3.田辺聖子・著では「源中納言家と三条邸での再会により、和解。右近の少将の働きにより四の君と兵部の少輔夫婦も子を連れて同席して和解。」でお話は終わります。

…ですが、出来るだけ原作の最後近くで終わりたかったので、原作から大きく変えてしまった兵部の少輔と四の君夫婦の人生を書き換えて、四の君は兵部の少輔と離婚せずに、子宝にも恵まれて幸せに暮らしたことにしました。


田辺聖子・著「おちくぼ姫」から人物設定は大きく外れられなかった私でございました。

やはり、凄いですね。本物の作家は!

ググったり出来るようになるより、ずっと前に、「和宮様御留」を書かれた有吉佐和子は亡くなられ、ググれるようになった頃には田辺聖子はご高齢でした。

調べるのも、現代語訳も全てググったりなさらずに作品を書き上げられました。

私はググりまくりました。これが素人の証ですね。



原作では「右近の少将は全く兵部の少輔のことを考えてずに利用しただけ」で「通うように言った」を「私を助けてくれ!と言った」にし、「人が良い兵部の少輔は右近の少将に頼まれて断れなかった。」ことにしました。

そして、一度も兵部の少輔を笑わなかったことにしました。

それは、右近の少将を今の時代のヒーローにしたかったからです。

親族なのに「顔を見て笑うのか!」、親族なのに「利用してポイっと捨てるのか?」などが、私のヒーロー像に当てはまらないのです。

⦅こんな人、ヒーローではない!⦆と思いましたので、そんなことしない右近の少将に変えました。

私好みのヒーローに変えました。


兵部の少輔の性格も変えました。

それは、田辺聖子・著「おちくぼ姫」の影響が大きかったです。

真面目で優しくて、そして少しだけど男らしく思える所もある男性にしました。

そして、立身出世を望んでいない男性という設定にしたのは、原作で官位が上がっていないからです。

ただ、本当に出番が少ない人物ですので、官位が上がったのかどうかさえ書かれていません。

それで、出世ばかりを望む源中納言との対比の人物にしたいと思ったのですが、そのように描き切れませんでした。


そして、原作の「面白の駒」の最期、法師になって旅先で亡くなる。―を、私は公廉の最期にしました。

妻・孝子を失い、旅立ってから亡くなった所で、この「一条戻り橋」を終えました。



全て揃っているヒーローである右近の少将。

官位に重きを置く当たり前の公家である源中納言。

それに対して、持てる物が無いけれども、殿上人である兵部の少輔。(ちょっと世間とズレている。)

ヒーローを支えて序盤は出ていたけれども、いつの間にか出なくなった惟成。

中の君という良き妻を得た蔵人の少将。


よく見れば……妻はたった一人。同時に多数の女性の元へは通っていないのが、「落窪物語」に出て来る男性陣なのですね。


さぁ、女性の皆さん、皆さんなら、何方さんがお好きさんであらしゃいますか?


「あとがき」はまだまだ続きます。

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