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一条戻り橋  作者: yukko
87/95

栄耀栄華ーその参ー

太政大臣の子である少将達(長男と次男)は、一緒に、昇進しました。

少将達の祖父(故太政大臣)は、亡くなられていましたが、「私を思うのなら、次男の昇進を()()()()()させるやない。」と、何度も言い残しました。

太政大臣は子ども達を、長男を左大将、次男を右大将に、順に昇進させました。

母である女君が、大層喜んだことは、言うまでもありません。

右衛門(三河守の妻)は中宮尚侍になりました。

後々の栄えが、あることでしょう。


兵部の大輔は父親と同じ官位の治部卿になりました。

兵部の大輔の父が亡くなる前に官位を息子に譲ったのです。

四の君は一男二女の三人の子に恵まれて、出世には無頓着な夫・治部卿と末永く幸せに暮らしました。



それから、お忘れかもしれませんが……

典薬の助は、蹴られて病気になり、死んでしまいました。

典薬の助が亡くなったことを聞いた太政大臣は「落窪の君と……そない呼ばれてたお(ひい)さんが、今は私の妻でこない暮らしていることを、見ずに()()()()とは……悔しい。私の妻になった落窪の君が幸せな姿を見せたかったのや。そやのに……なんで、あの者らは、あないに強う蹴ったんや。暫し生かしておいたら良かった。」と言いました。


あの北の方ですが……

にわかに亡くなることもなく、七十歳余りまで生きました。

女君は「お母さんは大層()()()()()遊ばしました。功徳をなされませ。」と言って、大層目出度く尼にさせてあげました。

故大納言の北の方はとても喜んで、仏門に入りました。

「世の人は、継子を憎んではなりません。継子を大事にすればよいことがあります」と言っていましたが、その一方で腹を立てた時には、「()()()が食べたいのに、なんで私を尼にしたのや。継子は、ほんまに()()()や。」と言っていました。。

北の方が亡くなった後には、太政大臣が盛大に法要を執り行いました。


そして……

和泉守(阿漕の叔母の夫)は女御の家司になって、たいそう徳を受けました。

昔阿漕と呼ばれていた落窪の君の女房は、典侍になったに違いありません。

典侍(阿漕)は二百歳まで生きたということです。



⁂―――⁂―――⁂―――⁂―――⁂―――⁂―――⁂―――⁂―――⁂―――⁂



ぼんやりと庭を眺めている父・公廉に大君は書き終えた落窪の君の物語を渡しました。


「これで宜しおすか?………お(もう)さん。」

「……ああ……大君か……。」

「お(たあ)さんの落窪の君の物語を終わらせましたえ。」

「さよか………ありがとう。」

「不出来やと思いますけれども、お(たあ)さんの落窪の君の物語を終わらせたいと仰せ

 遊ばしましたのは、お(もう)さんであらしゃいます。

 読ましゃりませ。

 お(もう)さん……どうぞ読ましゃりませ。」

「……大君……ありがとう。」

「お(もう)さん……どうぞお息文字であらしゃいませ。

 お(たあ)さんの分まで………。」

「そやな……そやなぁ……。」


公廉は大君が終わらせた落窪の君の物語を、涙を目にいっぱい溜めながら読みました。

中宮尚侍…内侍司の長官。

おそそもじ…遅いこと。

功徳…現世・来世に幸福をもたらすもとになる善行。

女御…中宮。

家司…親王家・内親王家・摂関家および三位以上の家に置かれ、家政をつかさどった職。

典侍…内侍司=後宮の礼式などを司ったの次官。

おかくれ…死ぬこと。

おとしめし…老人。

おまな…魚。

いけず…意地悪。(京都弁ですが、御所言葉ではありません。)

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