キョクトウ連邦②
「もうすぐ遊郭や。ハル、いまんとこ、この国はどうなん?」
俺達はヨギリの案内で遊郭へ向かっている。
「かなりあり。」
街の雰囲気は好きだ。食べ物も文句なし。まあこの辺は個人的な意見だが、それを差し引いてもこの国は良い。庶民や冒険者だけでなく、富裕層である貴族も遊郭へこぞって通っている。つまりキョクトウ連邦では遊郭遊びは一般的な娯楽として広く楽しまれていると言う事だ。後は遊郭が胡蝶を建てるに相応しい場所かどうか。
「やんな。わかるわ。うちもこの国好きやで。」
「でもこの国は好き嫌いが分かれそうだよね。」
コハル達留守番組の意見も聞いた方がよさそうだ。
「せやね。ユイカの蛇が視てるし、帰ったらどう思うか聞いてみたらええわ。」
「そうだな。ところでユイカ、コハルは静かに留守番してるか?」
いつものように俺の肩に乗っている蛇に尋ねると、蛇は少し戸惑った素振りをみせた・・・気がした。そしてユイカの蛇は気まずそうに体で×を作る。
「コハル、暴れてるのか・・・ヒスイ辺りが八つ当たりされてそうだな。」
「間違いなくされてるんちゃう?うちやったら3枚におろしてバーべーキュー大会してる頃やわ。」
俺の大事な竜族の友人を肉として見るのはいい加減やめて欲しい。確かにポンコツドラゴンだけど、なんだかんだでいい奴なんだから。
「そういやヨル達は例の魔法、もう使ってるのか?」
「認識阻害のやつならもうつこうてるで。だからハルは好きに動いてええよ。」
それならよかった。
だが俺は知っている。
本気で好きに動いたら、酷い目に遭うと言う事を。
「ほどほどにします。」
「ん、ようわかっとるやん。ほら、着いたで。あそこの角曲がったら遊郭や。」
エンにある遊郭は、俺の知っているいつもの花街と少し毛色が違う。ノーテファル王国やレガス帝国にあった花街は明らかに「夜の街」といった雰囲気で、少なからず派手な部分があった。だがキョクトウ連邦の遊郭は騒がしくなく、良い感じに落ち着いている。
「うん、面白い。なるほどね。」
「何が面白いんです?」
俺の隣を歩いていたサクヤが首を傾げながら尋ねてくる。
「ああ、文献で読んだ通りだなって。」
「ハルさんの世界の花街ですか?」
「うん、俺の世界の『遊郭』だね。ただ俺がいた時代は既に花街になっていて、こんな感じの遊郭ではなかったけど。ノーテファル王国に近いかな。まあもっと煌びやかで派手だけどさ。」
「あれより派手なんですか?それはちょっと興味ありますね。」
地球の花街はネオンだらけで昼間のように明るい。まあこちらの世界には電気という技術がないので、どうしても夜は火の灯りにだけになってしまう分、薄暗い。
「それより女の子が檻?に入ってます。あれが遊女なんですかねー?」
マシロが興味津々に格子窓の中にいる遊女達を眺めている。
まさにこの花街は江戸時代の吉原遊郭を彷彿とさせる造りだ。遊女は木で出来た格子窓の部屋に入れられ、そこから客引きをしている。いわゆるかごの中の鳥。実際この言葉が生まれたのも、遊郭の格子窓の様子からだと言われている。
「なんか動物みたいですね。」
ボソッと呟くマシロ。
この世界に動物園はないが、生物や奴隷を輸送する時は鉄格子の檻にいれるらしい。マシロがそういう印象を受けるのも当然か。
しかし動物か・・・
狐・・・は動物・・・
ヨギリやサクヤをあの中にいれたら・・・
「あ、あのハルさん?そんな欲望に満ち溢れた目でこっちを見ないでください。」
「うちらをあの中にいれて狐鑑賞しようとかおもてんちゃうやろな!?」
あれ、バレてる。
「少し前に自重するって決めてませんでしたー?ハルさんは我慢って言葉知ってます?大体ですね、そんなに欲望を垂れ流してたら・・・ってなんでそんな目でこっち見てるんですかー!今絶対『兎もいいなぁ』とか思ってましたよね!?」
「あはは、マシロは何言ってるんだ。思ってたよ!!!」
「だから少しは隠してください!!!」
はい、すいませんでした。
「ハルよ・・・お主にはがっかりじゃ・・・」
「大丈夫だ!アーネの事もちゃんと檻にぶち込んでロリババア鑑賞するから!」
「そういう意味ではないわ!!!たわけ!!!お主後でしばく!絶対しばく!」
アマネ達から蔑んだ目で見られてる気がする。俺の好感度の急降下が止まらない。まあ自業自得なのだが。
「反省はしている。後悔はしていない!」
「・・・少しは後悔もしてくださいませんか?」
「断る。」
俺はサクヤやヨギリの尻尾が大好きだ。そしてマシロやサラの獣耳も大好き。アマネの少女のような見た目も可愛いし、鬼人族の角もかっこいい。コハルのエルフ耳も滅茶苦茶愛らしい。
俺は好きな物は好きだと言いたい。絶対に誤魔化したくない。今まで獣人が好きだというのは隠していたが、嫌いだと嘘を吐いた事は一度もない。
それにこれらは全部アマネ達の個性の一部だ。異種族だからこその特徴であり、誇りに思うべき部分だと思う。それを家族である俺が否定するなんてありえない。
「だからこそ俺は全力で褒め称えるのだ!!!」
「そ、そんな言われたら文句言えへんやん・・・あほ・・・」
ヨギリが頬を膨らませて拗ねている。だが心なしか嬉しそうだ。
「さて馬鹿騒ぎはこのくらいにして、この遊郭だけど・・・女の子達を動物のように扱っている点を除けば、結構理に適っていると思うんだよね。」
「そうなんですか?」
「うん、男からしてみればこの方がじっくり娼婦を選べる。自分の好みの嬢が一目瞭然だしね。お気に入りの嬢がいるならともかく、そうでないならどの女の子と遊ぼうか決めるの大変でしょ。娼館に入ってみないとどんな娼婦がいるかわからない。でもこれだとその必要はない。だって目の前に並んでるんだしね。」
それにこれは初めて娼婦を買おうと思ってる初心者さんにも優しい仕様だ。
娼館に入って自分好みの娼婦がいたならいいが、いないなら店を出るか、妥協してその場にいる女の子を選ぶしかない。一旦そういう店に入っておいて、やっぱりやめますと全員が言えるわけではない。それに高いお金を払って娼婦を買うのだから妥協なんてしたくないはず。だからどんな女の子が出てくるかわからないという意味で娼館に入りずらいと感じる人は多いだろう。
だがキョクトウ連邦にあるこの遊郭では、好みの女性を路上から選ぶ事が出来る。これから客を取ろうとしている遊女が並んでいるのだから非常にわかりやすい。
「なるほど。言われてみれば確かにそうですね・・・」
納得ですとサクヤがうんうんと頷いている。
「それにこの方法だと嬢が路上で客引きをする必要がない。」
客引きは正直鬱陶しいと思える部分が多い。娼婦を買う気がないのに声をかけられても邪魔なだけだ。男に娼婦を買う気があったとしても、お気に入りの嬢が既にいたり、行く店が決まってるとかなら声を掛けるだけ無駄。
「客引きする嬢も大変そうだし、精神的ストレス多いだろ。男は男で興味ないのに声掛けられても・・・って感じだろうしな。」
「あれはそうですね・・・もう二度とやりたくないです。」
サクヤがどこか遠い目をしている。どうやら客引きの経験があるらしい。
「俺が来る前はやってたの?」
「はい。だからそう言う意味でもハルさんには凄く感謝してるんです。」
「ですです。娼婦としてのお仕事だけ考えてればよくなりました!」
俺が胡蝶を完全予約制にした以上、客引きをする必要なんてないからな。それに客引きしなくていいと言う事は、こういう嬢の負担を減らすだけじゃない。嬢や娼館同士の変ないざこざもなくなる。格子窓の中からしか客引きが出来ないのだから、縄張りが非常に分かりやすい。
「ゆっくり花街を歩けるのもいいよね。俺がこうして歩いていても、誰からも声かけられないし。レガス帝国の時はあの犬耳娼婦にすぐに声掛けられてあまりのんびり出来なかっただろ?」
「確かにそうじゃ。そう言う意味ではこの遊郭は平和じゃな。じゃあハルよ、この国にするか?お主がここが良いと言うならわらわは構わんが。」
「いや、ここは駄目だな。」
「何故じゃ?割と気に入ってると思ったのじゃが?」
確かに悪くはないと思っている。国としてもキョクトウ連邦が今のところ一番好きだ。だがこの国に胡蝶を作るくらいなら、俺はレガス帝国に作りたい。胡蝶を運営するとなるとレガスの方が明らかに向いているからだ。
「胡蝶にこの方法は合わない。何故ならうちはアーネ達をああやって『展示』する必要がないからな。胡蝶は予約制の高級娼館。フリーの嬢なんて1人もいない。だがこの国で胡蝶を作るなら、ある程度この遊郭の流儀に合わせる必要がある。勿論格子窓を採用しない方向で娼館を作ってもいいけど・・・絶対周囲からは浮くだろ。だからこの国は候補には入れるが、第一候補ではないかな。」
「・・・ちゃんと考えてるんやな。えらいで、ハル。」
ヨギリに褒められたけど、何か釈然としない。何も考えていなかったように言わないで欲しい。これでもちゃんと下見しているのだから。
「とりあえず値段は調べようか。あとどんなサービスなのかも知りたいんだよな・・・娼館と遊郭って違うのかな?」
「あー・・・どうなんやろ。うちもよくわからんわ・・・」
値段はその辺にいる遊女に聞けばわかるだろう。だがサービスについては遊女を買って見ない事にはわからない。
「そうだなー・・・アマネに貰ったお金で遊女買ってみるか・・・」
俺がそう呟いた瞬間、アマネやヨギリがカッと目を見開いて叫ぶ。
「はぁ!?何言うてんの!そんなんあかんに決まってるやろ!!」
「絶対ダメじゃ!娼婦遊びする為に金を渡したわけではない!!!」
いやいや、仕事だから。あくまで仕事で遊女を買うだけだから。
「なあ、サクヤ、買ってもいいよな?買うべきだよな?」
「だ、駄目に決まってます!駄目です!絶対駄目!」
そんなに必死に否定しなくてもいいだろう。目が怖いぞ、サクヤ。
「一応聞くが・・・マシロはどう思う?」
「え?いいんじゃないですー?」
マシロが平然とした顔で答える。
・・・何だこの温度差。
「とりあえずマシロの許可が出たし、ちょっと買ってくる・・・」
「「「ダメッ!!!」」」
なんでだよ。何で駄目なんだよ。買わないと調査出来ないんだけど。
「ハ、ハルさん!そもそもハルさんは娼婦を買った事あるんですか!?」
「な、ないけど・・・?」
「大体ハルさんは・・・そ、そういう経験はあるんですか!!!」
「な、ないです・・・」
「つまりど、どどど童貞!ハルさんは童貞なんですよね!!!」
この狐は往来で何を叫んでるんだ!いくら魔法でサクヤ達の姿は認識されてないと言っても俺が何か恥ずかしいから!
「サクヤ!そうじゃ!もっと言ってやるのじゃ!」
「ええでサクヤ!もっと言ったり!!!」
おい、そこ。何の応援なんだよ。
「ハルさん、ドンマイですー」
マシロがぽんぽんと俺を慰めるかのように肩を叩いてきた。
そんな慰めいらない・・・これはこれで何か辛いし惨めだ。
「つまりですね!私が言いたいのは!童貞のハルさんが遊女を買ったところで何かわかるんですか!童貞なんですから何もわかりませんよね!比べようがないですもんね!だから童貞であるうちはそう言う事する意味はないんです!!!」
何回童貞って言うんだよ!もうやめて!
「サクヤ!そんなに顔真っ赤にして言わなくてもいいから!恥ずかしいならもうやめよう!っていうかやめて!な!?な!?」
「うるさい!ハルさんは黙っててください!」
「俺が黙ったら駄目だろ!?・・・よし、サクヤ、落ち着け。1回深呼吸して落ち着こう。はい、ひーひーふー。」
「ひぃ・・・ひぃ・・・ふぅー・・・」
サクヤが胸に手をあて、必死に落ち着こうとしている。
しかしいくら俺が遊女を買うと言っても、何も童貞を捨てようとしているわけじゃない。あくまで遊女から話を聞こうと思ってるだけだ。誤解しないで欲しい。それに俺も初体験をこんなところで散らしたくはないし。
「サクヤの言いたい事はわかった。いくら俺が遊女を買って話を聞くだけだと言っても、経験がない俺には何もわからないって言いたいんだよな?そう言う事だよな?」
「そ、そうです!そう言う事です!」
「でもさ、俺が話を聞いて、それをサクヤに確認すればいいんじゃない?」
「は、はぁ!?な、なんで私にそんなの聞くんですか!!やっぱりハルさんは変態さんなんですか!?女の子にえっちな話をして辱めて喜ぶ変態さんなんですか!!!」
「なんでだよ!お前らが娼婦だから聞くんだろうが!それになんでちょっと恥ずかしがってんだよ!?あと変態言うな!断じて違うからな!」
娼婦の事を娼婦に聞いて何が悪い。何もおかしくはない。
「じゃあサクヤはいい!アーネとヨルに聞く!」
「な、なんでじゃ!?そんな事わらわに聞かれても困るのじゃ!!!」
「へ、変態や!やっぱりハルは変態なんや!うちにそんな事するなんて!!!」
人聞きの悪い事言うな。何もしてないだろ。
しかし収集が付かなくなってきた。
どうしたものか。
今から遊女を買う方向に持って行くのは絶対無理だ。
「じゃ、じゃあ・・・とりあえずそこの遊女に値段だけ聞いてくるのはどうだ?この国に胡蝶を作るってまだ決めたわけじゃないし、何も遊女を買う必要はないよな?」
「「「それなら許す!!!」」」
よし、なんとかまとまった・・・のだろうか。問題を先送りしただけのような気もするが。これは胡蝶を作る国を決めたら色々と話し合う必要がありそうだな。
とりあえず遊女に少しだけ話を聞いて、さっさと胡蝶に引き揚げるとしよう。
「すいません、お姉さん。ちょっといいですか?」
さっきからユイカの蛇がもの凄く存在をアピールしてくるしな。これは「早く帰って来て、こっち大変、助けて」というユイカからのSOSに違いない。
「あら、どうしたの?私を買いたいのかしら?」
格子窓の向こうにいる女性が小さく微笑みながら見つめてくる。
俺は整然と並ぶ遊女達の中から、煌びやかで最も気品があると感じた女に声を掛けた。彼女は長い黒髪を簪でまとめ上げ、重厚感のある紋織物を着ている。所謂打掛だろう。確かこの種類の着物は高級遊女、つまり花魁、にしか許されていないと何かの文献で覚えがある。この世界でもその法則が通用するのかはわからないが、彼女の雰囲気からして、ある程度の人気がある遊女には間違いなさそうだ。
「この国に今日到着したので色々と見て回ってるんです。遊郭があると聞いて来てみたんですが・・・作法がよくわからなくて。お姉さんの事は買えるんですか?」
「あら、そうなの?エンへようこそ。初めてなら何もわからないわね。いいわ、お姉さんが教えてあげる。私はヨシノ。よろしくね?」
「いいんですか?ヨシノさん、ありがとうございます!」
「ふふ、可愛い男の子は大歓迎ですもの。もし気に入ったら私を買ってね?」
そう言って妖艶な笑みを浮かべるヨシノ。
色っぽい。そして美人だ。俺に免疫無ければ有り金を全て差し出してでも彼女を買っていただろう。こういう時ばかりはアマネ達に感謝だな。
「それでこの遊郭のお作法はどうなってるんです?」
「あら・・・ふふ、面白い子ね?」
どうやら先程の「妖艶な笑み」は彼女の渾身の営業スマイルだったのかもしれない。あまりにも俺の反応が薄かったのが気に入らなかったのだろう。
「まあいいわ。お気に入りの子を見つけたら、今のあなたみたいに声をかければいいのよ。そして値段交渉ね。お互いに納得したら、そこの入り口から中に入って頂戴。受付の人にお部屋代を払えば私に会えるわ。」
「遊郭では部屋代がいるんですか?」
「あ、そうね。他国から来た人だと知らないわよね。この遊郭ではそうなのよ。遊女と遊ぶお金以外にお部屋代が必要よ。その代わり私の値段交渉が出来る。初めて遊郭に来た人は結構驚くんだけど、ここではこれが普通。」
「確かに吃驚しました。」
「でも奮発してくれたらお姉さん嬉しいわ。いっぱい遊んであげるわよ?」
なるほど、これは上手い手だ。男なんてのは見栄の塊。女の前ではかっこつけたい生き物。しかも遊郭にまで来てケチろうとする男はほとんどいないだろう。それに金払いもよければ遊女も色々とサービスしてくれる。
うん、悪くない。最低の金額だけ決めておいて、そこから客と交渉する。この方法の方が確かに稼げそうだ。将来的に胡蝶に取り入れるのもありかもしれない。
「あまり値段交渉するのは愚策ですね。」
「ふふ、そうね。駄目とは言わないけど、程々にしておいたほうがいいわ。私達だって人だもの。気分がよければその分・・・ね?」
「それでヨシノさんはおいくらで買えるんですか?」
「さっそく来たわね?でも回りくどいのはお姉さん嫌いだから、単刀直入に来たのは褒めてあげる。うん、お姉さんの好感度あがったわよ?はなまるあげちゃう。それで・・・いくらまでなら私に出せる?出したい?」
あなたの甲斐性を見せてみなさいと挑戦的な笑いを浮かべるヨシノ。
いくらだろう。
馬鹿正直にヨシノに出そうと思う金額を答えてもいいが・・・これはあくまで遊郭の調査。なら以前と同じように胡蝶でアマネを買うのに必要な金額をいっておくのが得策か。
「1000金までなら出しますよ。」
「せ、せんっ・・・!?こ、こほん・・・お姉さんちょっとびっくりしちゃった。そ、そんな金額を言われたのは初めてよ。」
予想外の金額だったのか、驚きの表情を浮かべるヨシノ。どうやらさすがに一晩1000金はないらしい。
「そうなんですか?ちなみにこの遊郭で一番高い人はどれくらいなんです?」
「そうね・・・さすがに1~4金もあれば十分じゃないかしら?」
「じゃあヨシノさんを例えば・・・100金で買えばいっぱいサービスしてくれるんですか?」
「そ、そりゃするわよ!っていうかさすがに100金はちょっと・・・も、申し訳ないから・・・そ、その3・・・いや5金でどうかしら・・・?」
大金すぎて逆に恐れ多いのかもしれない。
「ははは、ヨシノさんが値下げするんですか?」
「だ、だって私との一夜にそんな価値ないわよ!それにお金をもらう以上、あなたにはその金額に見合った時間を過ごして貰いたいもの!」
どうやらヨシノに声をかけて正解だったようだ。彼女は素晴らしいプロ意識をもった遊女だ。誇りを持ってこの仕事をしているのがわかる。うちに娼婦が足りなかったら今すぐにでも引き抜きたいところだ。
「ヨシノさん、お話ありがとうございました。実は・・・今日は見学に来ただけなんです。冷かしですいません。でもヨシノさんのような遊女がいるとわかってよかったです。またきます。これ、少ないですが・・・」
ヨシノにチップとして1金ほど渡しておく。
「え・・・あ、いいの?私何もしてないのに。」
「説明してくれたので、そのお代です。」
情報にはそれ相応の対価がいる。彼女の時間も使わせてしまったことだし、多少の心付けは必要だろう。
「そう・・・じゃあ頂いておくわ。」
「はい、では失礼します。」
「ま、まちなさい!」
踵を返そうとしたらヨシノ呼び止められた。
「はい?」
「あなた、名前は?」
「ハルですけど・・・」
「なら、ハル、また来なさい。約束よ?お姉さん、ハルの事が気に入ったの。だから普段なら3金はとるんだけど・・・ハルになら1金で買われてあげる。だから絶対買いにきなさい。わかった?」
「・・・はぁ。」
「返事は『はい』よ!」
「は、はい!」
「うん、いい返事ね。じゃあまた会いましょ。」
なんかもの凄い約束をさせられた気がする。しかも最後の一言のせいで何かアマネ達がめっちゃ睨んでくるし。でも今回俺は何も悪くないからな!
「お主は女に気に入られんと死ぬ病気にでもかかっておるのか?」
「ハルなんか狐に蹴られてしまえばええんや・・・!」
「変態獣人趣味で年上キラーのハルさん、帰りますよ?」
何かもの凄い言われようなんだが。しかもまた新たなる称号増えてるし。
勿論アマネ達の文句がこの一言で済むわけがなく、帰る道中ずっとぶつぶつ言わ続けた。転移も当然無理矢理だったのは言うまでもないだろう。せっかく転移酔いしない方法みつけたのに・・・




