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胡蝶の夢、夜に舞う  作者: 天霧 翔
第二章 新天地編
90/106

カミール王国③

「ハル様、お初にお目にかかります。クレシア商会の商会長を任されておりますクレア=クレシアと申します。以後お見知りおきを。」


 そう挨拶するのは、長い金色の髪をした女性。まさか奴隷商の会長が女性だとは思わなかったので驚いた。そして若い。見た感じ、20台後半だろう。


 服装はコハルが娼婦の時に着ているようなドレスを着ている。ただ露出は少なめで、程よい色気と気品がある。まあ娼婦じゃないのだからこれが普通か。というよりコハルの色気が異常なだけとも言える。あれはやばい。


「クレシアさん、よろしくお願いします。お若くてびっくりしました。」

「あら、ありがとうございます。確かに皆さん驚かれます。とは言っても父が早くに亡くなったので受け継いだだけなんです。凄くはありませんよ。あ、私の事はクレアとお呼びください。」


 くすくすと笑うクレア。


 雰囲気がどことなくサクヤに似ている。まあサクヤの方が遥かに美人だが。


 しかしクレアは凄くはないと言っているが、彼女はきっと一流の商人だ。いくら親から受け継いだ商会とは言え、その後も順調に経営しているのだから優秀なのは間違いない。


「わかりました、クレアさん。」

「アマネ様とヨギリ様におかれましてもお変わりないようでなによりです。」


 クレアが2人に頭を下げる。それに対してアマネ達は特に口を開く事はせず、軽く頷くだけだった。これもきっと俺を立てる為の行動なのだろう。


「早速ですがコハル様、本日は如何なされました?」

「ええ、少々御用がございまして・・・ハルさん、私の方から説明します?」


 わざとらしく俺に確認をいれるコハル。


「あ、いいよ。俺から話す。」

「はい。」


 コハルは静かに頷くと、テーブルの上にある紅茶を優雅に飲む。「私の仕事は終わったのでもう何も話しません」という仕草だろうか。


 凄いな、コハル達は。一つ一つの行動に卒がない。


 俺も負けてられない。心の中でそう気合を入れなおす。


「実は奴隷の購入を考えておりまして。」

「そうなんですね。当商会をお選び頂きありがとうございます。それでどういった奴隷をご所望でしょうか?」

「その前に幾つか質問してもいいですか?」

「はい、私がお答え出来る事であればかまいませんよ。」


 さてどう切り出そうか・・・俺はしばし逡巡する。


 クレシア商会のような大手と関係を持っておくのに越したことはない。だが奴隷商会とうちが懇意にするメリットは特にない。それに俺は奴隷が欲しいわけでもない。なら回りくどいやり取りは逆効果では・・・


 うん、変に誤魔化す必要はないな。聞きたい事を聞こう。アマネ達には好きにしていいと言われたし、何かあったら彼女達がフォローしてくれるだろう。

 

「アマネ達の事はどの程度知ってますか?」

「そうですね・・・S級の冒険者。1~2年ほど前に突如冒険者を引退。そして何故か娼婦になった・・・と言う事くらいでしょうか。」


 合ってる。まあ有名な話だから当然か。当時はその話題で持ち切りだったとアマネも言っていたし。


「はい。私がその娼館の支配人です。」

「・・・なるほど。コハル様から『ご主人様』とお伺いしていましたが、そう言う事でしたか。」

「ええ、その娼館の2号店を作ろうという計画がありまして。」

「このカミールにでしょうか?」

「いえ、そこはまだ決めておりません。ただ娼館で働いてくれる奴隷が欲しくてお話を聞きにきました。私、そしてアマネ達も奴隷契約については疎いので教えて頂けないでしょうか。」


 クレアは手を顎にあて難しそうな顔をしている。俺の質問の意図を考えているのだろう。敢えてちょっと曖昧な言い回しをしたしな。


「わかりました。私からハル様にお伺いしたい事がいくつかありますが、とりあえず奴隷契約についてお話ししましょう。基本的な事からでいいでしょうか。」

「はい、何も知らないので、基本からお願いします。」


 どういう種類の奴隷がいるのか、契約はどうなっているのか、俺は奴隷について何も知らない。一から説明して貰いたいからここへ来た。奴隷商会最大手の会長であれば間違った事は言わないだろう。


「では最初から説明しますね。まず奴隷は主人と契約します。奴隷の義務は主人の契約通りに働く事。主人の義務は最低限の衣食住を保障し、病気にならないよう、死なないように面倒を見る事です。ここまではよろしいですか?」

「その最低限とは誰が決めるんですか?」


 何を根拠に最低限と判断するのか。人によって尺度が違うのは問題だ。1日に水1杯、パンが一切れあれば生きるには十分だと言い張る人間もいれば、1日3食、ちゃんとした食事が必要だという人間もいるだろう。


「それは主人次第です。」

「なら他人から見て明らかに衣食住が不十分だったとしても、主人が必要最低限は与えてると言い張ればそれまでと言う事ですか?」

「まあ・・・端的に言うとそうなります。」

 

 つまりすべては主人次第。それによって地獄も天国もあり得る。奴隷になった時点で明るい未来が待ってるとは言い難いようだ。


「もしその扱いで奴隷が病気になったり、死亡してしまった場合は罰則かなにかあるんでしょうか。」

「特にないですね。あくまで奴隷は奴隷なので。」

「奴隷に人権はないのですね。」

「ええ。ただどいういう扱いを受けるかは、契約内容次第です。」


 なるほど、契約内容で全てを縛るというわけだ。契約で最低限の衣食住の内容を決めておけば、その通り扱われる。


「その契約内容ですが、奴隷の種類によって変わります。まず奴隷は犯罪奴隷、借金奴隷、戦争奴隷、特殊奴隷に分けられます。」


 犯罪奴隷、借金奴隷はその名前の通りだろう。他2つはピンとこない。


「前者2つは説明するまでもないので割愛します。戦争奴隷は戦争の際、捕虜となった人間が奴隷になる際の呼称です。特殊奴隷は国が何らかの理由で奴隷堕ちを命じた場合です。ただ後者2つはあまりいないので考えなくていいかと。」


 基本的には犯罪奴隷、借金奴隷しか市場に出回らない。戦争、特殊奴隷は稀と言う事か。想像してた以上に色々種類があるんだな。


「では続けて契約について説明します。長くなりますが一気にいきますね。わからなければいつでも止めてください。


 まず奴隷は出来る事出来ない事で項目分けされます。家事、料理、房事、戦闘、特殊技能。特殊技能は鍛冶、裁縫など一般的に特殊な技術が必要とされている物を指します。全て出来れば売値は高いですし、出来なければ安いです。単純労働しか出来ないと言う事になりますからね。


 これに基づいて各奴隷がどういう仕事に従事するかの契約を行うのですが、奴隷からも契約内容を指定できます。食事はこのレベルの物を出して欲しい、暴力を振るったら契約解除、睡眠は毎日何時間、休日は週に何回欲しいなどです。ただこの要望は奴隷の種類によってどの程度指定出来るか異なります。


 犯罪奴隷は一切指定できません。すべて主人の裁量にまかせられます。借金、戦争奴隷は大体何でも要望通りの指定が出来ます。ただ面倒な要望をすればする分、売れなくなるので、その辺りは主人との交渉ですね。ちなみに特殊奴隷は国がその辺りも全て指定するのでちょっと特殊です。


 ・・・すいません、ちょっとお水を飲ませて頂きますね。」


 そこまで一気に話すと、クレアは唇を濡らすように少しだけ水を飲む。


 この世界の奴隷事情についてはなんとなくわかった。


 つまり借金や戦争奴隷に関しては完全に契約内容次第と言う事だ。奴隷側はここできっちり内容を決めないと地獄を見る。主人はその要望を盾に、色々と仕事内容について交渉が出来る。犯罪奴隷に関しては・・・まあただの地獄と言う事だろう。


「奴隷は解放される事はあるんでしょうか?」

「犯罪奴隷に関しては奴隷何年と罪が決まっておりますので、それに従う形になります。借金奴隷は主人の裁量次第ですね。良い主人と出会い、真面目に働けば、恩赦という形で解放して貰える事もあります。戦争奴隷も同じです。特殊奴隷は国次第でしょう。」


 なるほど。ではここからが本題だ。


「クレアさんのところで扱っているのは主に犯罪と借金奴隷と言う事でしょうか。」

「ええ、たまに戦争や特殊奴隷も入ってきますが、基本はその2つです。ただ犯罪奴隷は単純労働者として商会や国などが買っていきますね。私も個人で買う事はおススメしませんし、買いたがる人もいません。ですのでハル様にご紹介するのは基本的に借金奴隷になります。ご要望があるなら犯罪奴隷もお見せできますが・・・」


 確かに殺人を犯した奴隷をメイドや執事として屋敷においておくのは怖いな。身の回りの世話をさせるのに、犯罪奴隷を買う人間はいないのは当然か。


「いえ、借金奴隷で大丈夫です。それでその借金奴隷ですが、性奴隷として扱う事も可能なのでしょうか?」

「やはりハル様が聞きたいところはそこですよね。」


 そう、これが一番重要だ。性奴隷として奴隷を買う事が可能なら、奴隷売買が許可されているこの国で、高級娼館を運営するのはやめた方がいい。


「奴隷の契約に房事という項目があるので既にお気づきかと思いますが、性奴隷は可能です。但し、娼婦をさせる事は不可能です。房事というのはあくまで主人との契約であり、不特定多数ではありません。もちろん奴隷が同意すれば可能ですが、同意する事はないでしょう。」


 クレアがはっきり言い切る。


 いい感じに勘違いしてくれたようだ。俺は娼婦として働かせる為に奴隷が欲しいと言ったわけではない。娼館で働く奴隷が欲しいと言っただけだ。おかげでクレアが聞きたい事を全部説明してくれた。


「娼婦を奴隷で賄うつもりはありませんよ。うちには最高の娼婦が十分にいますので。ただ彼女達の身の回りの世話、私の秘書、そう言った事が出来る奴隷が欲しかったのです。」

「あ・・・な、なるほど、先走りました。申し訳ありません。」


 少しだけ苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるクレア。房事=主人のみと言うのを説明しなければ、俺に勘違いさせたまま、大量に奴隷を売りつけられたかもしれないとか考えているのだろう。


 まあそうなっても買うつもりはないが。


「それではそう言った事が出来るかはおいておいて、一番高い奴隷、一番安い奴隷、そしてクレアさんおススメの奴隷、この3人を見せて頂く事は可能でしょうか。あ、奴隷は全員女性でお願いします。」

「はい、わかりました。手配します。少々お待ちください。」


 クレアは10分ほどお待ちくださいとだけ言い残し、部屋を出て行った。


「あー・・・疲れる。」

「頑張ってますわよ?」

「ふふ、悪くないでありんすよ、ご主人様?」

「そうじゃの、40点じゃ!」


 評価微妙だな。まあいいけど。


 しかしアマネ達のおかげで緊張しないですんだ。彼女達は紅茶を飲んだり、足を組みかえたりして、上手く場を繋いでくれる。何気ない仕草だが、絶妙なタイミングなので、凄く自然とクレアと話せた気がする。






「お待たせいたしました。」


 ぴったり10分でクレアが3人の奴隷をつれて戻ってきた。


「ではそこに並びなさい。」


 クレアが奴隷達を一列に並ばせる。


 一番左の女は人族で、どこかやつれており、目に覇気がない。おそらくこの子が一番安い奴隷だろう。年齢は10代中盤。そこそこ可愛い。


 真ん中の女も人族で、どこか気品ある雰囲気が漂っている。ただ性格がもの凄くきつそうだ。所謂プライドが高い感じ。まあ美人の部類には入るだろう。


 そして最後の一番右の女は・・・これはエルフだろうか?コハルのように真っ白な肌。長い耳。髪は薄い水色で、瞳は透き通ようなエメラルドグリーン。そして何より顔立ちが整っていて、滅茶苦茶美しい。コハル達を見慣れてる俺でさえ一瞬見惚れてしまったくらいだ。この子が間違いなくクレアのおススメ奴隷なのだろう。


「ではご紹介させて頂きます。左からエリカ、レミーア、そしてエルフィリアです。ではみなさん、お客様にご挨拶を。」


 クレアがそう言うと、1人1人丁寧にお辞儀をしてくれた。


「エリカです。よ、よろしくおねがいしますです。」

「レミーア。よろしく・・・お願いしますわ。」

「エルフィリアです。よろしお願いします。」


 全員どこか笑顔がぎこちない。緊張しているのだろうか。


「お値段はエリカが10金、レミーアが500金、エルフィリアが100金ほどになっております。」

「・・・1つお伺いしますが、エルフィリアさんはエルフ族なのでしょうか。」

「はい。あ、いえ、ハーフエルフになっております。人族とエルフの混血です。私のおススメの奴隷です。いかがでしょう?」


 正直買いたい。エルフィリアを買って、メイド服着せて、俺専属のメイドになって貰いたい。彼女の儚くも美しい感じがとても素晴らしい。なによりコハルのように殴りそうじゃないところがいい。


 ――ドンッ!!


「・・・っ!?」


 コハルにおもいっきり足を踏まれた。痛い、まじで痛い。


「どうかされました?」

「い、いえなんでもないです。」


 どうやら俺の考えは全部コハルにバレているらしい。もの凄い目で睨んでくる。


「出来る契約についてもお話しますか?」

「お、お願いします。」


 コハル、いい加減に踏むのやめて。変な汗をかいてきた。


「みなさん戦闘は×です。元Sランクのアマネ様やコハル様がいらっしゃいますし、必要ないですよね。エリカは家事〇、料理△、房事〇、特殊技能×。レミーアは家事△、料理△、房事は条件付きで〇、特殊技能×。エルフィリアは家事〇、料理〇、房事は条件付きで〇、特殊技能〇でございます。」

「エルフィリアさんよりレミーアさんの方が高いのはどうしてですか?」


 どう考えても能力も見た目もエルフィリアのほうが上だ。それなのに全然値段が違う。ハーフエルフだからだろうか。


「はい、ハーフエルフだからなのが1つ。もう1つはレミーアが元貴族だからです。その場合、自然とそういう値段になります。元貴族の奴隷を所有するのは一種のステータスなので、この金額でも売れるんです。」


 そうか、予想通り高い奴隷を所持するのがこの国ではステータスの1つになっているのか。これだとこの国で胡蝶を作るのは避けた方がよさそうだ。


「なるほど・・・」

「あ、私からもハル様にご質問いいでしょうか。」

「はい、答えられる事なら。」


 クレアの質問はなんとなく予想がつく。俺が娼館をこの国で開けば、間違いなく今後商売敵になるだろうし、その辺りが気になるのだろう。


「ハル様の娼館はどのような娼館なのでしょうか・・・?」

「はい、娼婦はここにるアマネ、ヨギリ、コハルを始め、33人程おります。全員彼女達レベルの娼婦ですよ。」

「そ、それはそれは・・・」

「ちなみにアマネはいくらだと思いますか?」

「そうですね・・・100金・・・くらいでしょうか。」

「一晩で1000金です。」


 その金額を聞いた瞬間、クレア、そして奴隷達が驚きの表情を浮かべる。まさかアマネとの一夜の恋愛がレミーアより高いとはさすがに思わなかったのだろう。


「買う方いらっしゃるんでしょうか・・・?」

「はい、うちの娼婦の集客率は100%です。予約で常に埋まっております。」

「な、なるほど。それでハル様はこの国で娼館をされるご予定で?」


 どこか緊張した面持ちのクレア。まあこの国に胡蝶を作り、貴族達が通うようになれば、奴隷の売り上げはきっと落ちる。うちの娼婦は安くないからな。


「いえ、この国では考えておりません。」

「どうしてでしょうか、この国にも娼館はありますよ?」

「ええ、ですが高級娼館はありますか?」

「あるにはありますが・・・ハル様のところほどでは・・・」

「はい。うちは『通える事自体がステータス』となるように娼館を運営しております。その点ではクレアさんと商売敵になってしまいますよね。争う事が目に見えているのに、この国で娼館を作る意味はありません。なので他の国で作りますよ。」


 別に勝負してもいいのだが、アマネ達の目標は世界一の娼館を作る事ではなく、お金を稼ぐ事。それなら競争がない国を選んだ方がいい。だからカミール王国は無し。これはもう決定だ。


「ふふ、よかったです。安心しました。」

「でも奴隷が欲しい時はクレアさんにお願いしてもいいですか?」

「勿論です。是非当商会をご贔屓にお願いします。どういった奴隷をご希望ですか?詳細をおしゃっていただければ仕入れる事も可能です。」


 正直買う気はないのだが、メイドの1人くらいはいてもいいかもしれない。今までは支配人としての仕事はなかったが、これからはその仕事が増える。アマネ達の身の回りの世話にまで手が回らないかもしれない。


「料理、家事が出来る人がいいですね。うちの嬢達の身の回りの世話も含まれるので女性でお願いします。房事はどっちでもいいです。あとは読み書き、計算。私の秘書もやって頂きますので必須です。これらが全て出来るのであれば奴隷の要望は基本的に全て承諾します。」


 あれ・・・なんか奴隷の3人が「私を買って!」と目を輝かせてる気がする。もしかして俺が今提示した条件は破格なのだろうか。


「ご、ご予算は?」

「1000金くらいまでなら。」

「し、承知しました。それならこのエルフィリアは如何でしょう。ハル様のご要望に全て当てはまっておりますが。」


 あ、そうなの。


「エルフィリア、何か言いたい事はありませんか?」

「ハル様・・・わ、私を買ってくださいませんか・・・?」


 エルフィリアが目をうるうるさせながらお願いしてきた。


「う、うん、じゃあ・・・・いたっ!?」


 ――ギュッウウウウウウウウ


 痛い痛い痛い。アマネ達が脇腹を全力で抓ってくる。確かに今一瞬頷きそうになったけど、そんな全力で抓らないで。本気で痛いから。


「ご主人様、一度持ち帰って検討する方がよろしいかと思いますわ。」

「ふふ、そうでありんすね。今ここで決める必要はござりんせん。」

「そうじゃの、ハルさん、ゆっくり考えてからにするとよいぞ?」


 うん、怖い。


 クレア達には優しく微笑みながら「じっくり考えようね」とアマネ達が言ってるように聞こえるだろう。だが俺にはわかる。「買ったらしばきまわすぞ」と言ってる。絶対そう言ってる。


「と、とりあえず帰って検討させてください!奴隷が必要なのは新しく2号店を作ってからになりますので!ただ奴隷が必要な際はクレアさんにお願いしますね!」

「そうですか・・・いつ頃の予定なんでしょうか?」

「だ、大体1ヶ月くらいでなんとかしたいと思ってます!」

「わかりました。それまでエルフィリアは売らないようにしておきますね。」


 待って、なんで俺がエルフィリアを買う事が決定になってるの。


 不味い、これ以上ここにいると本当に買う約束をさせられそうだ。


「ま、まあタイミングが合いましたらよろしくお願いしますね。今日は貴重なお話ありがとうございました!それでは・・・」

「はい、お待ちしておりますね。ほら、エルフィリアも一言いっておきなさい。」

「ハ、ハル様!ずっとずっとお待ちしております・・・!」


 だからその目を潤ませるの本当にやめて。


「で、では失礼します!」


 俺はそのまま逃げるようにしてクレシア商会を出た。






 カミールは「無し」と決めたので、これ以上この国を下見する必要はない。後はコハルの拠点まで戻り、転移して帰るだけ。ただせっかくカミールに来たのだから、少しくらい観光して帰りたいなと思ったのだが、アマネ達に一直線で帰らされた。


 一応その道中で少々トラブルがあったのだが、不機嫌なアマネ達が一瞬で解決してしまった。だがそのせいでさらに不機嫌になったアマネ達。そんな彼女達が俺を無理矢理転移魔法陣に放り込んだのは言うまでもないだろう。


 もちろん転移酔いはした。


「気持ち悪い・・・」

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