秘密
「わらわ達は全員お主より年上なのじゃ・・!!!」
はい?あんなに溜めてそんなことかよ!
というか・・・
「いや、うん、知ってる。」
「なんじゃと!?」
「いやどう考えてもわかるだろ!お前280歳とか自分で言ってるし!コハルやヨギリは年増呼ばわりすると悪鬼の如く怒るし!サクヤ達も俺の事『可愛い弟』扱いするし!!!」
むしろわからない方がおかしい。秘密でもなんでもない。
「うむ。冗談じゃ。」
「なんでだよ!?」
立ち上がって大声で叫んでしまった。
「くくく・・・ハルは面白いのお。」
あ、この女・・・揶揄いやがった。
「うるさい!・・・でそれで終わりなのか?」
「い、いやすまん。つい誤魔化してしまっただけじゃ。いざ言うとなるとその・・・」
ああ、なるほど。緊張しているのは俺だけじゃないらしい。まあそれもそうか。今までずっと秘密にしてた事を俺に話すんだから、むしろ緊張するのはアマネ達なのかもしれない。
「大丈夫。今更何聞いても変わらない。気にせず教えてくれ。」
「わかったのじゃ・・・。その・・・わらわ達は全員・・・」
アマネは一呼吸入れると、意を決したかのように口を開く。
「人族ではないのじゃ。まあわらわ、コハル、ヨギリそしてサクヤについては一目瞭然じゃろう。じゃが他の子らもな・・・そうなんじゃよ。」
そうなのか。それは気付かなかった。確かにこの3人とサクヤは見た目で直ぐにわかる。だが他の嬢は人族と何ら変わりはない姿だ。
でも・・・
「それだけ?」
「一応そうじゃが・・・」
正直大した秘密ではない気がする。
「うーんじゃあ俺から聞くけど・・・アマネは鬼人族、コハルはエルフ。そしてヨギリとサクヤは狐人族だろ?それは確かに見ればすぐわかる。でも他の子達は人族にしか見えないけどなんで?魔法?」
「そ、そうじゃの!なら・・・そこから説明するの!」
どこか緊張した面持ちで話し始めるアマネ。
「まず見た目はお主の言う通り、魔法じゃ。正確には人化の術であって魔法ではないのじゃが・・・まあそこはどうでもよい。では何故魔法を使っているのかなんじゃが・・・わらわ達のように完全に人型ではないからなのじゃ。」
アマネ曰く、同じ種族でも個人によって見た目が色々と違うらしい。個体差という奴だろうか。アマネの鬼人族としての特徴は可愛らしい角だけだが、鬼人族によっては肌の色が違ったり、牙が生えていたりするのだとか。
それが獣人になってくるともっと個体差がでるらしい。ヨギリやサクヤは尻尾と耳があるだけ、いわゆる人型の狐人族。だが人によっては体中が毛深かったりする。完全に四足歩行の狐の場合もあるらしい。それでも知能を持ち、言葉を喋り、意思疎通が出来るから、獣ではなく獣人に分類される。
「なるほど・・・完全に狐の姿だったら色々不便だから?」
「うむ、人の姿の方が何かと便利なのじゃ。まああくまでこれは獣人のような種族に限っての場合じゃがな。」
「どういうこと?」
「他の種族なんかは見た目だけで恐れられたりするからな。そもそも人型と言っていいのかわからん種族もある。そういう意味で魔法を使って人化しているというわけなのじゃ。」
凄く納得した。多分妖精、獣人、鬼人族あたりは人型種族に入る。それが蜥蜴族、蛇人族あたりになってくると確かに人型と言っていいか微妙になってくる。それに見た目も多分普通の人族には受け入れられない可能性が高い。犬や猫を可愛いと言う人は多いが、蛇や蜥蜴を可愛いと言うのは少数派。きっとそんな感じなのだろう。
「世知辛いね。」
「仕方ないの。それに娼婦として働くには人型でないとな。」
「それもそうか・・・」
「それでなんじゃが・・・ユイカやサラ達の人化してない姿を見てもらおうと思っておる。よいか?」
ああ、通りでさっきから全員が緊張した面持ちな訳だ。きっと人化してない姿を俺に見せるのが不安なのだろう。俺だったら間違いなくそうなる。
「ああ、もちろん。でもユイカ達がどんな種族でも、ユイカはユイカ。サラはサラ。だからそんな緊張しないで大丈夫だよ。」
俺がそう言うと、ユイカ達はどこかホッとした表情を浮かべている。
「で、では、ハルさん!私からいく!」
勢いよく手を挙げ、先陣を切ったのはマシロ。
「マシロか。マシロはなんの種族なの?」
「うん、私は・・・これ!」
そう言ってマシロはくるりと1回転する。
すると一瞬にして彼女の本当の姿に・・・・
「う、う、うさぎだー!よっしゃあああ!」
俺は全力で拳を突き上げる。
兎。そうマシロは兎人族だったのだ。ただヨギリやサクヤのように耳や尻尾だけではなかった。手や足も完全に兎だ。顔や体は人型の時のマシロのままだが、それ以外が全て兎。正直これくらいなら人化するまでもない気はするが、手や足が兎だと色々と不便があるのだろう。
しかしやはり兎はいた。
もうこれは全力で喜ぶしかない。やはり神は俺を見捨てていなかった。何を言ってるのかわからないと思うが大丈夫だ。俺もよくわかってない。
「マシロ!マシロ!」
「・・・えーっと・・・はい・・・なにハルさん?」
俺がマシロににじり寄ると、引き攣った笑みを浮かべながら後ずさりしている。
「少し・・・モ、モフモフしてもいいですか!?」
「・・・あー・・・なるほど・・・」
マシロは何か納得したらしく、しょうがないですねとため息を吐く。
「ふふ、じゃあ少しだけなら。特別ですよ?」
「やったー!」
「ところで・・・ハルさんは獣人が好きなの?」
・・・はっ!しまった!
兎を見たせいでついテンション爆上げになってしまった。ずっと獣耳や尻尾が大好きというのを隠して来たのに。
どうしよう・・・今からでも誤魔化せるか?いやさすがに無理だ。拳を突き上げてガッツポーズまでしたのだからどう考えても無理だ。
「あー・・・そのなんだ。みんなが秘密を話してくれたんだし、俺も言うよ。驚かないで聞いて欲しい。実は俺・・・こういう耳や尻尾が大好きなんだ!今まで黙っててごめん!仕事仲間をそういう目で見るのはどうかなって思ってずっと隠してた!!」
俺は全力で頭を下げる。
ついに言ってしまった。
きっとみんな驚いてるに違いない。特にヨギリやサクヤはショックだろう。彼女達の尻尾や耳をモフモフしたいと考える邪な男とずっと一緒に仕事していたのだから。
「「「・・・」」」
誰も一言も言葉を発さない。やっぱり驚かせてしまったのだろうか。頭を上げたいが、怖い。彼女達の表情を見るのが怖い。
(サ、サクヤ!こ、これどないする!?)
(う、うーん・・・ど、どうしましょう・・・)
(知ってたでって言うたほうがええんかな!?)
(そ、それはハルさんがいじけそうです。驚いてあげた方がいいかもですね)
(せ、せやな!そうしよか・・・頑張って驚いた振りするわ)
(はい、それがいいでしょう・・・私も頑張ります)
ヨギリとサクヤがヒソヒソと小声で話しているのが聞こえる。やはり気分を害させてしまったか。でもここまで来たらもう引き下がれない。
「ヨギリ!サクヤ!ごめんな!」
「だ、だ、大丈夫やでー!でもほんまにび、びっくりしたわー!」
「えぇ!ハ、ハルさんが私の尻尾をそういう風に見てたなんて全然、それはもう全然気付きませんでしたー!」
どうやら俺が獣人好きというのは気付かれてなかったらしい。やはり俺の演技は完璧だったようだ。だがその分どこか罪悪感がある。ヨギリやコハルは気にしないと言ってくれているが、申し訳なさでいっぱいだ。
「ハル、ほんまに気にせんでええんよ?尻尾や耳はうちらの象徴でもあるし、それを好きや言うてくれるんは嬉しいんやから。び、びっくりはしたけどな!」
「そうです。び、びっくりはしましたが・・・!嬉しいですよ?」
「ありがとう・・・そう言ってくれて安心したよ・・・」
よかった。蔑んだ目で見られるのを覚悟していたが、そんな事はなかった。やっぱりみんな優しい。
しかしやはり俺は隠し事が上手いようだ。自分の長所を1つ見つけた気がする。ヨギリ達は人の心を操るプロ。娼婦として客の心を掴み、あっという間に自分の虜にしてしまう。だが俺はそんな彼女達を欺ける。
つまり大抵の人間であれば、俺は余裕で欺けると言う事だ。
(見てください、ヨギリ姐さん。あのハルさんの自信に満ち溢れた顔)
(うちらに隠し通せたことにめっちゃ満足してるんやな)
(全然隠せてないし、顔に出まくりなんですけどね)
(でもそこがかわええなぁ・・・)
(ええ。ほんと可愛いですねぇ・・・)
「ん・・・?なんでみんなそんな目で俺を見てるの?」
ヨギリやサクヤだけでなく、みんな俺の事をどこか優しい目で見つめてくる。何か子供を見る母親の目付きなんだけど。
「な、なんでもないのじゃ!なあ、コハル!」
「そうよ!な、何でもないわよ!気にしないでね!」
2人の態度がどこかよそよそしい。
「それより次じゃ!他の子らの人化を解いた姿も見たいじゃろ!」
そうだった。まだ見せてもらったのはマシロだけ。自分の秘密を話してすっかり満足していた。よし、気持ちを切り替えて次に行こう。
ちなみに当然マシロにはたっぷり耳や手をモフモフさせてもらった。
うん、最高。




