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胡蝶の夢、夜に舞う  作者: 天霧 翔
第二章 新天地編
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候補地

 ひとしきりアマネ達にお世辞を言ったら満足してくれた。


 しかしそれでいいのか・・・


 まあ嬉しそうにしているし、何も言うまい。


「ちなみにどのくらいここにいるつもり?」

「そうじゃの、まあ娼館を作る国を決めるまでじゃな。」

「あれ?まだ決めてないのか?」

「うむ、お主と相談してからにしようと思ってな。」


 この世界を知らない俺が相談に乗れるとは思えないんだがと首を傾げる。


 だがどうやらそう言う事ではないらしい。


 アマネの説明によると、この世界には花街が許可されている国が沢山ある。そして当然許可されてない国もある。聖王国や教国などの宗教国家がそうだ。まあそれらは論外として、許可されてる国々の中で胡蝶の新天地としてどこか適しているのか、それを俺に判断して欲しいのだとか。


 さらには次の地では、娼館の管理自体を俺に任せたいとも言ってきた。どうやら胡蝶を短期間で成長させた俺の実力をアマネは高く評価してくれているらしい。


「じゃからお主は従業員ではなく支配人にしようと思うのじゃ。」

「はい!?」

「ん、嫌か?」

「嫌とかそういうことではなくおかしいだろ!?」

「落ち着け、そしてわらわの説明を聞け。」

「お、おう・・・」


 肩書まで変えられるとは思わなかったから驚いてしまった。だが一介の従業員がいきなり支配人とか言われたら誰でも焦るだろう。


「お主を支配人において、わらわ達が下につく。表向きはそういう風にしておいたほうが何かと便利じゃ。」

 

 以前のようなトラブルを避ける為、俺を従業員ではなく支配人にした方がいいのだとアマネは主張する。


 だがそれは逆効果ではないだろうか。「アマネ達を使って国を乗っ取る」という噂がまた立ったとしたら、支配人という立場のせいで余計箔が付いてしまう。従業員にしておいたほうがいいと俺は思うのだが。


「ああいう噂はお主がどんな立場であれ立つときは立つ。気にしても仕方なかろう。そうではなくわらわが言うトラブルとは客とのトラブルじゃ。」


 なるほど。嬢を身請けしたいとか客が起こすいざこざの事か。確かに俺がいつも嬢と客の間に入って仲裁していた。


「うむ。お主が支配人ともなればそう言ったのも無くなるはずじゃ。いや・・・無くなりはせんか。じゃがあっさり解決できるようになるじゃろ。」


 確かにアマネの言う事には一理ある。嬢と客が揉めた際、従業員として出ていくより支配人を名乗って出て行った方が明らかに効果的だ。


 それに支配人ともなればコソコソする必要はないだろう。アマネ達が影で俺を護衛する必要もなくなる。支配人であれば、アマネ達を連れ堂々と街を歩いていてもなんらおかしくはない。


「うん、それは確かにいい提案だと思う。けどいいの?その・・・表面上とは言え俺の下につくことになるけど。」

「ま、まぁ・・・思わんことが無いわけではないが・・・お主じゃし構わん。」

「そうね、普通なら絶対お断りだけどハルさんならいいわ。」

「うちもハルならええよ?」


 アマネに同意するようにコハルとヨギリが首を縦に振る。


「それなら俺は構わないけど・・・サクヤ達に聞かないで決めていいのか?」

「心配ないわ、あの子達なら大丈夫よ。」

「そう?まあコハルが言うなら大丈夫か。あ、でも支配人になるといっても俺がやる事は一緒でいいんだよね?」

「うむ、今まで通りでよい。支配人として表に出る事は多少増えるじゃろうがな。」

「まあ多少なら・・・」


 支配人として偉そうにしてろとか言われても無理だ。俺はそんな器じゃない。


「どの国にするかはどうやって決めるつもりだ?」

「うむ、候補地はいくつかある。じゃから一緒にその国を見て回るぞ。実際に見て意見してくれ。わらわ達じゃ気付かない事もあるじゃろうしな。」


 男目線というやつか。まあ娼館の客は基本的に男だしな。


「わかった、明日から行く?」

「こらこら、休暇じゃと言うておろう。1週間くらいしたらでよい。じゃがまあサクヤ達が来るまでまだ少しあるしの・・・いい機会じゃ。どんな国があるか、候補地がどれかくらいは説明しておこかの。」


 そう言ってアマネは地図らしきものを取り出し、広げる。


 っていうか今どこから出した?虚空から出て来た気がするのだが。


「それが噂の収納魔法?」

「そういえばハルには見せたことなかったの。うむ、そう言う事じゃ。」


 本当に魔法は便利だな。


「これが世界地図じゃ。貴重なものなんじゃぞ?」

「おー!」


 目の前に広げられた地図に俺は感嘆の声をあげる。初めて見る世界地図にちょっと感動してしまった。


「へー・・・大陸は2つか。」


 地図の左右に巨大な大陸が描かれていた。五角形と長方形を歪に崩したような大陸が2つ。小さな島はそこら中に点在しているが、基本的に大陸と呼べるのはこの2つだけのようだ。


「そうじゃ。東がアナトリカ大陸、西がディテカ大陸じゃな。」

「うん、覚えられる気がしない。」

「心配するな。ハルが覚えられるとは思っておらん。」


 失礼な。物覚えが悪いと駄目だしされているようでちょっとムカつく。


 ・・・だが否定出来ないのが悲しいとこだ。


「それで?新しく胡蝶を作る候補地はどこ?」

「まてまて、せっかくじゃ。他の国についても軽く説明しておこう。まずこっちのディテカ大陸じゃが・・・この辺は宗教国家じゃ。エリシア聖王国、エスト教国などがある。」

「へー・・・」


 俺は軽く相槌を打ちながらアマネの説明を聞く。


 どうやら西大陸には宗教国家が数多くあり、それぞれ信仰する神が違うようだ。ちなみにどの宗教がこの世界では主流なのか聞いたところ、国土が大きければ大きい程、信者も多いらしい。


 なるほど、分かりやすい。


「まあ宗教国家は花街の存在自体を禁止しておるところが多いから除外じゃがの。わらわ達が行く事は基本的になかろう。」

「そうだね、いつかは行ってみたいけど。」


 美人な聖女とかいるなら是非見てみたい。


 まあ俺はアマネ達という絶世の美女に囲まれて過ごしてるから感動なんてあまりないかもしれない。ただ「聖女」というものが実際どういう者なのかは正直興味ある。


「そうじゃの・・・色々片付いたら連れてってやるぞ?世界旅行でもするのじゃ。」

「頼む。」


 転移魔法なんて使わないでゆっくり旅するのも悪くない。きっとヨギリやコハルも付いてきてくれるだろう。


「それでわらわ達がいたノーテファル王国がここじゃ。」


 ディテカ大陸の中央部分を指差すアマネ。


 へえ・・・そんなとこにあったのか。全然知らなかった。


「他にはレガス帝国、ファミリア王国などがデティカ大陸では大きい国じゃな。次にアナトリカ大陸じゃが・・・こちらは宗教国家が極端に少ない。理由はしらんがの。そして国は基本的に沿岸部に集中しておる。」


 なんでもアナトリカ大陸は中心に向かうにつれ厳しい自然環境になるらしく、険しい山脈、迷い込めば出てこれないような樹海、灼熱の砂漠と、とても人が住める環境ではないらしい。そしてそのせいか、魔物も格段に強大で、高レベルの冒険者くらいしか足を踏み入れる事がないのだとか。


「沿岸部に集中しているせいか、船舶技術についてはデティカ大陸より遥かに進んでおる。そして候補としている国は5ヶ国あるんじゃが・・・4ヶ国はアナトリカ大陸にある。まあノーテファル王国で起こした騒ぎがあるしの・・・デティカ大陸を避けた方がいいと思っただけなんじゃがな。」


 それもそうだろう。胡蝶という娼館が一晩で煙のように消え、国の施設が破壊されたんだ。真相はわからないにしても、噂は広まりそうだ。


 まあそのあたりは今頃サクヤ達が上手く処理してるんだろうけど。


「でも1ヶ国はディテカなんだね?」

「うむ、レガス帝国じゃな。この国は巨大じゃが閉鎖的での。外の噂はあまり入ってこないし大丈夫じゃろ。」

「なるほど。ちなみに残りは?」

「こっちじゃ。アナトリカ大陸にあるシミール王国、カミール王国、サンクレア公国、そしてここ、キョクトウ連邦じゃな。」


 うん?最後のはもしかして「極東」だろうか?国名ではなさそうだが・・・。まあ連邦という時点で幾つかの国が集合していると考えるのが妥当だろう。


 それに名前からして、俺が転生前にいた日本という国に近い文化があるのか?小説や漫画だと大抵そうだが。


「どんな国なんだ?」

「うーむ・・・うん、内緒じゃ。お主の目で確かめるがよい!」


 気になって聞いてみたが、アマネは教えてくれなかった。だが一理ある。予備知識が無い方が色々と楽しめそうだ。


「あ、そうじゃ。ちなみに・・・デティカは人族が多い。アナトリカは『獣人』、妖精、エルフ、鬼人・・・などなど多種多様な種族が多いのが特徴なのじゃ!」


(なんだと!!!!)


 大声を出すのを必死に我慢する。危ない。


 でもこの時点で胡蝶の新天地はもうアナトリカ大陸に決定だ。獣人が多いという時点で一択だろう。


 もっとヨギリやサクヤのような狐人族に会いたい。モフモフしたい。


 もしかして兎とか狼とかもいるのだろうか・・・いやいる。絶対いる。


(あーあー目の色変えて・・・ほんまわかりやすいんやから・・・)

(ね。アマネもわかってて絶対わざと言ったでしょ・・・)

(ハルももう隠すの止めたらええのにな。バレてるんやし・・・)

(アレでバレてないって思ってるのよ。そこがまた可愛いんじゃない。)


 なんかヨギリとコハルが俺の後ろでヒソヒソ話をしている。もしかして俺が獣人に反応したのがバレたのだろうか?いや、まさか。興奮するのを必死に抑えたんだから絶対大丈夫だ。


「そ、そうか。うん、そんな違いがあるんだな。まああまり場所選びには関係ない事だよな、うん。とりあえず実際行ってみて決めるしかないな。」


 よし、完璧なフォローだ。これでバレない。


 しかしよく考えればアマネ達は「今」は娼婦じゃない。


 別に隠す必要ないのでは?という思いがふと頭を過る。


 この機会に告白して思いっきりヨギリやサクヤの尻尾をモフらして貰うのはどうだろう。仕事モードに戻るのは胡蝶を再開してからでいいしな。


 そしたら俺にとって最高の休暇になる。


 うん、いい案だ。ちょっと後でじっくり考えてみよう。


「・・・あ!いました!ハルさん!戻りましたよ!」


 そんなどうでもいい(超重要な)事を考えていたら、背後から声が聞こえた。


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