説明
どうやら俺が飯を食ってる間にアマネが色々と説明してくれるらしい。
「とは言っても説明するこなんてほとんどないんじゃがの・・・」
アマネは苦笑いを浮かべ、ゆっくりと事の顛末を語り始める。
「なるほどねー・・・」
彼女の話を簡単にまとめると、噂を信じた国王や大臣が俺を捕縛した。勿論その噂とは「アマネ達を使ってハルが国家を転覆させようとしている」というやつだ。そして捕縛後、アマネ達は情報操作で俺が釈放されるように動いた。だが上手くいかず、俺は処刑される事になり、アマネ、コハル、ヨギリの3人が実力行使で俺を助けに来た。
「まとめるとこんな感じ?」
「うむ、そう言う事じゃな。」
「噂なんて放っておけばいいと思ったんだけど・・・考えが甘かったか。」
「この国の王は愚王での。小心者と言ってもいいかもしれん。」
アマネ曰く、どんな小さな噂にも怯えてしまうくらいに臆病らしい。自分の地位を守るのに必死で「疑わしきものには罰を」という考えなのだとか。仮にも一国の王なんだからドンと構えておけばいいのに。
「ふーん・・・っていうかアマネ知ってたんなら教えてよ。」
「そ、それはじゃの・・・!ハルに余計な心配させたくなかったというか・・・ごにょごにょ・・・」
身振り手振り必死に言い訳するアマネ。
くっ・・・ちょっと可愛い。こんなロリババアを可愛いと思ってしまうとは・・・一生の不覚だ。
「な、ななななんじゃと!!!だ、誰がロリババアじゃ!!!」
「え、アマネ。」
「こんの!お主!今日という今日は許さんのじゃ!!!」
地団駄を踏む姿がまさに幼女。
まあそれを言うとさらに怒りそうだから黙っておこう。
「俺に教えなかった理由はわかった。ありがとね。」
「う、うむ・・・わらわもごめんなのじゃ。」
「いいよ、俺の事を思ってやってくれたことだしね。」
ここまではいい。想像の範囲内だ。
だが気になるのはアマネ達のその後の対応。
「で・・・俺を助ける為にあんなことしてよかったの?」
「当然じゃ!!!ハルはうちの大事な従業員じゃからの!」
アマネは胸を張って宣言するが、俺が言っているのはそう言う事ではない。
「いや、あんなことして胡蝶は大丈夫なの?」
「む・・・そのことかの・・・」
国の施設を消し飛ばしておいて、明日からも平然と胡蝶が営業出来るとも思えない。アマネ達の情報操作や隠蔽でどうにかなるレベルの問題でもないだろう。俺としては胡蝶がどうなるのか・・・それが一番気がかりだ。
「隠しててもしょうがないしの・・・結論からいうと胡蝶は今日で閉店じゃ。」
「・・・やっぱり・・・」
なんとなくわかってはいた。
国に歯向かったのだ。当然だろう。今までは噂だったかもしれないが、アマネ達が実力行使に出た事で、国家反逆罪が純然たる事実になってしまった。
当然アマネ達がこれを予想してなかったわけはないだろう。誰でもわかる事だ。つまりこうなるのを承知の上で俺を助けてくれたのだ。
俺は彼女達の大事な店を潰した。だが俺に出来る事なんて何もない。
謝るくらいしか出来ない。
「ごめん。」
「いいんじゃ。また一から始めればよかろう?それに国はここだけじゃないしの!娼館ができる国は他にも沢山ある!なんも心配いらんのじゃ!」
「でもまた最初からだし・・・」
「なに、わらわ達にとって1~2年は誤差!だからハルが気にする事はなんもない!ほれ、わらわはロリババアなんじゃろ?」
そう言ってくすくす笑うアマネ。
彼女が自分の事をロリババアと呼称したのは初めてだ。
この場の空気を和ませようと気を使ってくれたのかもしれない。
「・・・そっか、じゃあもう気にしない。」
「うむ!ハル、新しい娼館作るの手伝ってくれるかの?」
「ああ、もちろん。喜んで。」
むしろ土下座してでも手伝わせてもらうつもりだ。
「みんなもごめんね。」
「何言うてんの。ハルと胡蝶ならハルの方が大事やし。」
「そうそう、ハルさんは何言ってるのかしら。」
ヨギリとコハルだけでなく、サクヤ達もうんうんと頷いている。
嬉しい。ちょっと感動で泣きそう。
「ありがと。」
「くく・・・泣いてもいいんじゃぞ?」
「な、泣かないから!」
アマネ達の「ハルは可愛いなぁ」って目付きが鬱陶しい。
「それより、いつこの国を出るの?っていうかどこの国にいくの?もう次の娼館の計画はあるのか?」
「ハル!お、落ち着くのじゃ・・・!」
「あ、ごめん。」
話題を逸らすのに必死でつい興奮してしまった。
だが正直ちょっと楽しみだ。俺はこの世界の事をほとんど知らない。どんな国があるのか。どんな人が住んでいて、どんな文化があるのか。何も知らない。
うん、見てみたい。
「まったく・・・。とりあえずこの国で後処理が少々あるが・・・それはサクヤ達に任せる。わらわ達は一度別荘に行って少し休暇じゃ。新天地はその後ゆっくり探すとするのじゃ。」
おお、休暇か。それは悪くない。
今までは胡蝶で働いていたから休暇を取るのには抵抗があった。何故なら胡蝶には店休日がないからだ。嬢達はローテーションで休めるが、胡蝶唯一の従業員である俺はそうはいかない。だが店を一旦閉めるのであれば俺も心置きなく休める。
そもそも休みの日にする事なんて何もなかった。何故なら俺がボッチだからだ。この世界の唯一の知り合いである胡蝶の嬢達。だが彼女達は仕事がある。俺に休日があったとしても、ほとんどの嬢は働いてるので、遊びに誘えない。それに彼女達とデートまがいな事をして目立つのも避けたかった。まあ避けてたのにも関わらず、今回のような事態になってしまったのだが・・・
とにかく胡蝶を閉店させ、別荘で休暇を取るのであれば、心置きなく遊べる。それにいい機会だ。アマネ達にこの世界の事をもっと教えてもらおう。この世界に来て、胡蝶で働き始め1年ちょっと。そんな事を勉強する暇なんてほとんどなかった。アマネに少し教わったがそれくらいだ。
まあ胡蝶で仕事するだけだったし、必要な知識ではないと思い、俺が後回し後回しにしていたせいでもあるのだが。それによく考えれば俺はこの世界の事だけじゃなく、アマネ達の事も全然知らない。
うん、そうしよう。
この機会にアマネ達の事ももっと知ろう。世界の事を教えてもらおう。魔法をアマネ達から習うのもいいかもしれない。俺にはそもそも魔力が無いとは言われたが、もしかしたら何かが切欠で使えるようになるかもしれない。
「なんか急にやりたい事がいっぱい出て来たぞ!」
「くく、そうかそうか!それはよかったのじゃ!ハルはずっと頑張ってたしの!少しのんびりするとよい!」
「うん。でもそれはアマネ達もだからな?一緒にのんびりしよう。」
「そ、そうじゃの・・・。い、い、いいい一緒にするのじゃ・・・!」
なんでちょっと照れてるのだろうか。アマネ、コハル、ヨギリの照れるポイントは相変わらずよくわからない。
「しかし別荘なんてあるのか・・・さすがアマネだな。」
「まあちと昔に色々あっての・・・だが身を隠すにはもってこいじゃ。」
「そっか。で、別荘へはどうやって?」
「転移魔法じゃ。ハルがそれを食べ終わったらいくぞ。」
「あ、もう?まあそれもそうか。胡蝶にお別れを言う暇もないな。」
「ん?ああ、言う必要はないぞ?」
「え?」
どういうことだ?新しい娼館も「胡蝶」と名付ける気なのだろうか。でもこの建物はさすがに破棄しなければならないだろうし、少々名残惜しいのだが・・・
「いや、この建物ごと転移させるしの。」
「あ、そっかなるほど・・・ってはい?・・・えぇ!?」
何言ってるのか一瞬わからなかった。
え?っていうか本当に?
いやいやまさかアマネ達でもそんな・・・と思って嬢達を見回すが、全員「当然です」って顔をしている。
驚いてるのは俺だけなのか・・・?
「くく、その顔がみたかったのじゃ!」
「いや、でも・・・えぇ!?」
魔法ってそこまで便利なのか。凄い。いや、もう凄いとかいうレベルじゃない。
「あ、ハルさん、ハルさん。」
「ん?え?なに?」
「もの凄く勘違いしてそうなので言っておきますが・・・そんな事できるのはアマネ姐さん達だからですからね?普通は出来ませんからね?」
サクヤが教えてくれた。
「あ、そうなの?でも・・・うーん・・・サクヤでも出来ないの?」
「んー・・・胡蝶の子達と数人で頑張れば出来るかもしれません・・・ね?」
「えっと・・・それは普通・・・なのか?」
「・・・」
おい、こらサクヤ、目を逸らすな。
というかやっぱり普通じゃないのか。つまりアマネ、ヨギリ、コハルは規格外。そしてサクヤ達はそれには劣るが、彼女達も十分規格外。まあ今更彼女達に普通が通じるとは思ってないけどな。
しかしうちの娼婦凄い。っていうかなんで娼婦やってんだ。
「何で娼婦してるの?」
聞いてみた。今なら色々教えてくれるかもしれない。




