救出
――コツコツ
複数の足音が近づいてくる。
「時間か・・・」
俺は牢の床に寝転がりながら小さく溜息を吐く。
「・・・」
足音がしなくなった。兵士が牢の前まで来たのだろう。だが起き上がって確認するのも面倒だ。どうせ無理矢理連れて行かれるのだからこのままでいい。
「ハァ・・・。お主、なにしておるんじゃ・・・?」
「・・・!?」
溜息と共に聞き覚えのある声色が地下牢に響く。
「え・・・?ア、アマネ?」
鉄格子に背を向けていた俺は慌てて声がした方へと顔を向ける。
「ハル!助けにきてやったのに何故こっちを見んのじゃ・・・!!!」
「え!?だ、だって・・・!あれ!?あ、ヨギリも!?」
「こら!うちはついでかいな!」
アマネの隣にヨギリもいる。もの凄く不機嫌そうだが。
でもなんでだ。なんでここにいるんだ。俺は見捨てられたんじゃないのか。
「な、なんで?」
「は?なんでとはどういうことなのじゃ?」
「いや・・・俺はてっきり見捨てられたのかなって・・・」
「だから不貞腐れておったのか・・・?」
「う、うん・・・そ、そうだけど・・・」
「こんの・・・アホ!お主をわらわが見捨てるわけないじゃろうが!!!」
めっちゃ怒鳴られた。
「正座じゃ。」
「え・・・?」
「そこに正座じゃ!!!」
「は、はい!」
あれ・・・?何故俺は正座させられてるんだろうか。何故牢に閉じ込められたまま説教されてるんだろうか。こいつら俺を助けに来てくれたんじゃないのか・・・?
「アマネ・・・早く助けてよー・・・」
俺は涙目でアマネを見つめる。
(ぐ・・・っ・・・そ、その目を卑怯なのじゃ・・・!)
何かぼそぼそと呟いているアマネ。何を言っているのかは聞こえないが、早く助けて欲しい。早く帰りたい。
「し、仕方ないの・・・ヨギリ。」
「ん。ちゃちゃっとやるで。」
ヨギリは手に持っていた扇子を軽く振る。すると目の前にあった鉄格子が一瞬にして塵と化した。
凄い。さすがヨギリ。何したのかまったくわからない。何らかの魔法を使ったのだろうが俺にはさっぱりだ。
「ヨギリ・・・」
俺は残された力を振り絞って立ち上がり、ふらふらとヨギリの胸へ飛び込む。
「頑張ったな、ハル。遅うなって堪忍な?」
「うん・・・」
ヨギリがそっと俺を抱きしめ、頭を撫でてくれる。
「あ、ごめん・・・俺、汚い・・・」
「ええんよ、そんなん気にせんでええ。」
落ち着く。なんか泣きそうだ。
「・・・なんでヨギリなのじゃ・・・そこはわらわの方に来るところじゃろ・・・」
なんか隣でアマネがぶつぶつ言っている。
「アマネ、なんか言った?」
「な、なんも言っておらんのじゃ!と、とにかく無事でよかったのじゃ!」
「うん、来てくれてありがと。」
「当然なのじゃ!」
ギリギリだった気もするが、きっとそれもアマネ達の計画だったのかもしれない。このタイミングで俺を助けたのには何か意味があったのだろう。彼女達が俺を無駄に焦らす事なんてしないはずだ。
「アマネやヨギリに慕われててよかったー・・・」
「「なななななっ!?」」
顔を真っ赤にしてわけのわからない言葉を叫ぶアマネとヨギリ。
一体何をそんな驚いているのだろうか。
「どしたの?」
「い、いや・・・!わらわがお主を慕ってるって・・・!?」
「ん?アマネやヨギリと友達だから助けてくれたんでしょ?嫌われてたら助けにこないだろうし。だから仲良しでよかったなーって。」
「「はぁあああああ!?」」
だから何をそんなに驚いているのか。
そしてなんか怖い。めっちゃ睨んでくる。
「えっと・・・」
「「正座。」」
「えー・・・?」
「「正座!!!」」
「は、はい!」
あれ?なんで俺はまた正座で説教を受けているのだろう。
いい加減帰りたい。
でもなんかいつも通りの2人を見ていたら落ち込んでたのが段々と阿保らしくなってきた。感動の再開すらどっか飛んでった。
まあこれがある意味俺達らしいのかもしれない。
「あはは・・・」
「何がおかしいのじゃ!」
「何がおかしいんや!」
「なんか2人がいつも通りだから・・・ちょっとホッとした。」
俺がそう言うと、アマネとコハルもくすくすと笑いはじめる。
「くくく、そうじゃな。」
「ふふ、やっぱハルはおもろいなぁ。」
「そうかな・・・?それより、帰ろう?」
「うむ!」
「せやね!」
早く胡蝶に帰ってご飯が食べたい。風呂に入りたい。ベッドでゆっくり寝たい。さすがに疲れた。
「・・・ととっ」
俺は立ち上がろうとするが、足に力が入らずよろけてしまう。どうやら色々限界のようだ。
「大丈夫や、うちに任せとき。」
「ち、ちょっと、ヨギリ!」
よろけた俺をヨギリがそっと受け止め、抱きかかえる。
うん、いわゆるお姫様抱っこだ。なんでこうなった。
「は、恥ずかしいから、下ろせって!」
「う、うるさいわ!黙ってうちに抱かれとけばええんや!」
おかしい。女に言われてみたいセリフの1つなのに全くときめかない。というかそのセリフはもっと違うシチュエーションで言われたかった。
だがまあ・・・今日は彼女に甘えるとしよう。
「うん、わかった。ごめんな。」
「ん・・・ま、まあ今日は特別やし。」
どこか嬉しそうな顔で呟くヨギリ。
その一方で何故かアマネがぐぬぬと歯を噛みしめ睨んでくる。今にも歯ぎしりが聞こえてきそうで怖い。
(ヨギリ・・・お主はまた・・・許さんのじゃ・・・!)
ぼそぼそと独り言も言っているし、なんであいつはあんなに怒ってるんだ。
「アマネ、どうした?」
「な、なんでもないのじゃ!」
「そうなのか?めちゃくちゃ怒ってるように見えたんだけど・・・」
「そ、そそそれはあれじゃ!ハルをこんな目に合わせたのが許せんだけじゃ!」
「あー・・・そういうことか。」
兎にも角にもこれでひと段落だろう。
助けてくれたアマネやヨギリには感謝しかない。
ん?・・・あれ?
というかさっきから1人足りなくないか?
この2人が居て、あいつが居ないというのは絶対におかしい。
「えっと、あのさ・・・」
「ん?どないしたん?」
「どうしたのじゃ?」
「・・・コハルは?」
「「・・・あっ。」」




