容赦~side胡蝶~
「先ず・・・ハルの元へはわらわ達で向かう。よいな、コハル、ヨギリ?」
「ええ、勿論よ。」
「それでかまへんで。」
徹底的に暴れてやるんだからとコハルとヨギリが嬉しそうに頷く。
「あのアマネ姐さん、私達は・・・?」
自分も行きたいのにと不満気のサクヤ。
「全員で押しかけても仕方ないじゃろ。わらわ達3人で十分じゃ。それにサクヤ達には別に任せたい仕事があるしの。」
「別のですか?」
「うむ。サクヤ達は・・・」
アマネが計画の概要を説明する。
「・・・というわけじゃ。」
「なるほど、そういう事ですか。」
サクヤは納得したような顔で頷く。
「それではもう完全にこの国を見限るという事ですね?」
「そうじゃ。もういい。もう今更この国でやり直そうとは思わんしの。」
「まあそうですね・・・わかりました。そのお役目、引き受けさせて頂きます。」
「頼んだのじゃ。では・・」
「待ってください。1つ聞きたいのですが。」
アマネは解散を宣言しようとするが、サクヤが待ったをかける。
「うん?なんじゃ?」
「この件が片付いたら・・・ハルさんには全部話すんですよね?」
アマネ達がこれからする事を考えれば、ハルに全てを説明する必要があるだろう。さすがに適当に誤魔化せるはずもない。
「とうとう話す時が来てもうたんかな・・・?」
「そうね、話すしかないわね。仕方ないもの。」
ヨギリとコハルも話すしかないと結論づけている。
「いや・・・」
だがアマネの考えは違うらしい。
「まだハルには話さないでおこうと思っておるのじゃ。」
「アマネ・・・それは無理なんじゃないかしら?」
「うん、流石に話さんとハルかて納得せえへんよ。」
話したくない気持ちはわかるけどとコハルとヨギリ。
今まで隠してた事を今更話すというのは気まずい。だがこんな状況になって何も話さないというのもおかしい。
「そうじゃの・・・じゃがわらわが『話したくない』と言ったらハルは追及してくると思うか?」
「そ、それは・・・うん・・・しないわね。ハルさんは・・・」
アマネの指摘に口籠るコハル。
そう、アマネの言う通りなのだ。彼女達が「言いたくない」と言えば、ハルは絶対に追及しない。それはここにいる全員がわかっている。拗ねたりはするだろうが、無理に聞き出そうとはしない。ハルはそういう人間だ。
「でも・・・それはどうかと思うんやけど・・・!」
流石に筋は通すべきだとヨギリが主張する。
「わかっておる。だから少しは話そうと思う。じゃが全てを話すのは・・・ハルを『かの地』へ連れて行った時にしたいのじゃ。」
「・・・」
アマネの一言に完全に口を噤むヨギリとコハル。サクヤ達もアマネの気持ちがわかるのか、複雑そうな表情を浮かべている。
事の顛末をハルに話したい。だが言わないで済むならそれに越した事はない。
「確かにそれが一番だと・・・私も思います。」
サクヤが小さな声で呟く。
「・・・ちなみにいつ頃連れて行くつもりなんですか?」
「うむ。次の国で地盤を築いて、ある程度落ち着いたら・・・と考えておる。」
「私達の夢を叶えてからではないんですね?」
「流石にそれではハルに悪いしの。わらわとしてはそのくらいが丁度いいタイミングだと思うんじゃ。」
正直なところ、今すぐハルをかの地へ連れて行って、全てを打ち明けても構わない。だがこんな事態が起こった後、さらに追い打ちをかけるように、重大な事実を告げるのはどうなのか。先ずは現状を収束させ、次の国へ移る。そしてある程度落ち着いた頃に全てを伝えるのがいいのではとアマネが提案する。
「一気に話すとハルに負担をかけてしまうかもしれんしの。お主らはどう思う?」
サクヤ達の意見も聞かせて欲しいとアマネが尋ねる。
「アマネ姐さんの言う通り、一気に全部を話すのは憚られますね。彼は今大変な目にあっているのですから。色々と落ち着いた頃の方が確かに・・・」
アマネの意見に概ね賛成だとサクヤが頷く。
「コハルやヨギリはどうじゃ?」
「うん・・・私もその方がいいと思うわ。」
「ハルにあんま負担かけたないしな・・・。うちもそれでええよ。」
納得のいく結論ではないが、これが今は最善。そう割り切るのがきっと正しい。
「まあ・・・なんにせよ全てはハルを連れ戻してからじゃ。」
「はい、そうですね。・・・今から動きますか?」
何時でも行けますと目を細めるサクヤ。
「いや、行動は明日の朝じゃ。ハルを処刑するとなれば宰相は必ず見に来るじゃろ。わらわ達はそこを狙う。そしてサクヤ達はその隙に手筈通りに頼む。」
サクヤは無言で頷く。
「ハル・・・もうちょっとだけ待っててな・・・!」
「そうよ!もうすぐお姉さん達が助けてあげるからね!」
ヨギリとコハルが気合を入れるように叫ぶ。2人はやる気満々だ。やっとハルを助けに行けるのが嬉しいのだろう。
ただこの2人に加えてアマネが怒りに任せて暴れたら、恐ろしい事になりそうだとサクヤは一抹の不安を拭えない。他の嬢達も同じ気持ちなのか、戦々恐々といった表情を浮かべている。
「あの・・・程々にしてくださいね?」
ハルの事になると手加減というものを知らないアマネ達。サクヤは無駄とわかりつつも、一応注意はしておく。
「くく・・・本気で暴れるのも久々なのじゃ・・・!」
だがサクヤの声はもうアマネ達に届いていない。
不敵に笑っている姐達を見て、「あぁこの国もう終わりかも」と諦めるように溜息を吐くサクヤだった。




