報告~side胡蝶~
ハルが処刑されると決まる数日前の胡蝶。
「ユイカよ、ハルの様子はどうなのじゃ?」
アマネが尋ねる。
「は、はい・・・あの・・・」
ユイカが言いにくそうに口籠る。
現在、胡蝶は開店前。アマネ達は胡蝶の待合室に集まり、ユイカの報告を聞いている。ハルが審問官に連れて行かれ、丁度1日経った。だがハルはまだ戻らない。
アマネは当初の宣言通り、胡蝶を休もうとも考えた。だが胡蝶を閉めてもやることがない。ハルの事は様子見すると決めたのだから。それなら何もせずハルの事で悶々とするより、仕事をしていた方が遥かにましだ。
「どうしたん?はよ言ってや。」
「そうよ、早く教えなさい。気になるじゃない。」
ヨギリとコハルが急かすようにユイカに詰め寄る。
「えっと・・・ハルさんが・・・」
ユイカの言葉を固唾を飲んで待つアマネ達。
「か、可愛いんです・・・!」
「・・・はい?」
まさかの報告につい素っ頓狂な声を出してしまうコハル。
「ど、どういうことかしら・・・?」
戸惑いながらもユイカに確認する。
「えっと・・・その、ハルさんが寂しそうに『アマネ・・・』とか牢屋で呟いているんです・・・!か、可愛いじゃないですか・・・!」
今すぐ抱きしめてあげたいんですとユイカが興奮気味に報告してくる。ハルが小動物みたいに震えていて庇護欲を掻き立てられるんだとか。
「そ、それは可愛いですね・・・」
サクヤが同意するように頷く。弟分であるハルのそういう姿はやはり彼女達の母性を擽る。
「・・・?アマネ姐さん・・・?」
床に蹲っているアマネ達を心配そうに見つめるユイカ。
「気にしないでいいですよ、ユイカ。アマネ姐さん達のあれは、ハルさんが可愛くて乙女心を擽られ、悶えているいつもの発作です。」
溜息を吐きながらサクヤが状況を説明する。相変わらずの姐達に他の嬢達も呆れ顔だ。
「そ、そうなんですね・・・」
「とりあえず姐さん達は放っておいて話を続けましょう。ユイカ、お願いします。」
「は、はい。ハルさんは宰相に取り調べをされていました・・・それで・・・」
* * *
「なるほど・・・。ヨギリ姐さんとコハル姐さんの客が上手く妨害工作をしてくれたようですね。」
ユイカから一部始終を聞いたサクヤが安心した表情を浮かべる。
「は、はい・・・これで数日は・・・大丈夫だと思います・・・。」
「そうですね・・・大臣を説得するにはいくら宰相と言えど数日はかかるでしょう。上手くいけばハルさんが釈放されるかもしれません。」
サクヤは顎に手を当てながら呟く。
「でもあかん、ハルを殴ったのは許せへんわ。殺すのは決定や。」
悶えていたはずのヨギリがいつの間にか鬼の形相で仁王立ちしている。まあ勿論サクヤ達もそのつもりだ。時間稼ぎが出来てホッと安心はしたが、ハルが暴行を受けた事には当然納得していない。宰相だけでなく、ハルを殴った兵士も当然殺す。命令だったとかは関係ない。
「当たり前よ。ふん・・・今に見てなさい。」
今すぐ飛び出してハルを助けに行きたいが、必死に堪えているコハル。
「そうじゃの。後始末はきっちりやるのじゃ。しかしハルがこれで帰れればいいのじゃが・・・あの宰相が諦めるとも思えん。」
「そうですね。どうしますか、アマネ姐さん。」
サクヤの問いに「そうじゃの」と悩むアマネ。
だがすぐに結論が出たのか、静かに口を開く。
「まあ・・・やはりもう暫くは様子見じゃの。もしハルが釈放されるならそれが一番じゃしな。それに暫くは取り調べもないじゃろうからハルも殴られたりはせんじゃろ。わらわ達の魔法の効果も後数日なら持つ。」
「せやね。うちらが乗り込んでもええけど、この国にはおられへんようになるしなぁ・・・」
「ハルさんへの仕打ちは納得いかないけど私もそれでいいわ。ハルさんが解放されてこのまま胡蝶のを続けられるってのがやっぱり一番だもの。」
アマネの意見にヨギリとコハルが同意する。
「私達もそれで問題ありません。ヨギリ姐さん達の客の働きに少しは期待するとしましょう。」
サクヤ達も異論はないようだ。
「うむ。ではユイカ、引き続き監視を頼むのじゃ。」
「は、はい・・・!何か異変があったら・・・すぐに・・・言います!」
任せてくださいと気合を入れているユイカ。
「なら今日も仕事するのじゃ。仕事でもしないと気が気でないじゃろうしな。・・・でもお主ら、客の前ではその殺気は隠すのじゃぞ?」
ハルが無事だとわかっていても、やはり可愛い弟が虐められてるのは許せないヨギリやサクヤ達。さっきからおぞましい程の殺気が全員から漂っている。
「わかってるわ。っていうかアマネこそさっきからだだ漏れやで。」
「そうよ。私より酷いんじゃないかしら?」
「わ、わかってるのじゃ・・・!」
そんな姐達の様子にまた溜息を吐くサクヤ。
「あの・・・姐さん達は3人とも酷いですから。私達も大概ですが・・・」




