様子見
「これで一段落ですかね・・・?」
さすがに少し疲れましたと軽く伸びをするサクヤ。
結局あれから嬢達全員がきっちり5分ずつハルに説教した。まあハルもサクヤ達に迷惑をかけたという罪悪感があったのか、大人しくしていた。
「というより食べるのに夢中でほとんど私達の話を聞いてなかった気もしますが・・・まあそれはいいでしょう。」
自分達が作った料理を美味しそうに食べるハルを見ていたら、なんだかんだサクヤ達も説教なんてどうでもよくなってしまっていた。
そして説教と夕飯が終わると、ハルは眠いと言って部屋へさっさと戻っていった。なんでも昨日はアマネ達に部屋に居座られ、徹夜だったらしい。
「何でハルさんに徹夜させてるんですか、姐さん達は。」
「し、しゃあないやん!」
「全然仕方なくないです。反省してください。」
「う、うちは悪ないもん・・・!」
全く反省の色が見えないヨギリ、そしてアマネとコハル。自分達はなにも間違ってないと言わんばかりの表情だ。
「しかしそんなにハルさんと過ごしたのに・・・まだ構い足りないんですか?さっきから不機嫌なのバレバレですよ。」
サクヤやユイカがハルをずっと介抱していたのが気に入らなかったのだろう。ずっと仏頂面でこっちを睨んでいる。でもサクヤ達からしれみれば、自分の客がハルに迷惑をかけたのだから介抱するのは当然の事だ。
「ち、ちゃうし!別にそんなんちゃうし!」
必死に否定するヨギリだが、図星なのは誰が見てもわかる。
「・・・っていうか分かってるなら私達に譲りなさいよね!」
「そうじゃ!そうじゃ!わらわ達にさせてくれればいいじゃろ!」
アマネ達3人がハルを慕っているのは全員が知っている事。むしろ知っているのだから、ハルを譲るのは当然。少しは気を使えとアマネとコハルが主張する。
「はぁ・・・いいですか?以前言いましたよね?ハルさんは私達の弟なのだと。家族なのだと。つまり私達は彼のお姉さんなのです。」
サクヤがやれやれと言わんばかりの顔で説明する。
「アマネ姐さん達のような人に『弟』はあげられませんね。私達の可愛い弟が欲しいなら、ちゃんと姉である私達に認められてください。わかりますか?」
「・・・です!み、認められてくださいです!」
サクヤに続いてあのユイカまでもが「お前らにハルはあげられない」と宣言する。
「な、なんじゃと・・・!お主ら・・・!わらわに向かってその態度!」
「そうよ!私にそんな事言ってどうなるかわかってるんでしょうね!」
「せやで。覚悟は出来てるんやろな。うちを怒らせんほうがええよ?」
サクヤとユイカを威嚇するアマネ達。だがサクヤはそれに怯むことなく平然とした顔で告げる。
「あら、そんなに顔を真っ赤にして・・・可愛い姐さん達ですね。」
普段なら怖いアマネ達。恐ろしいまでに冷酷で、残忍。とてもではないが逆らえない。だがハルの事になった途端、全然怖くない。ただの乙女だ。数百年も生きているのに何故こんなにも初心なのか。まあそんな姐だからこそ、サクヤ達は可愛いと思っているのだが。
「ぐぬぬ・・・コハル!何か言い返すのじゃ!」
「アマネこそ何か言いなさいよ!」
反論する言葉が見つからない様子のアマネとコハル。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて悔しがっている。
だが一方でヨギリは不敵な笑みを浮かべている。何か反論を思いついたらしい。
「何偉そうな事言うてんねん。お姉さんとか言ってる割にはさっきハルに抱き着かれて顔真っ赤にしてたやん。かっこいいお姉さんやねー?」
くつくつと笑いながらサクヤを煽るヨギリ。
「な、な、な、何を言ってるんですか!そんな事ないです!」
「動揺してるのが何よりの証拠や!この変態ショタコン狐!」
「はぁ!?姐さんと言えどその暴言・・・!許しませんよ!この腐りかけ年増狐!」
「なんやて!?誰がババアや!」
ヨギリとサクヤが激しく睨み合う。そして・・・
「やめよか・・・アホらし・・・」
「そうですね・・・なんで私達が喧嘩してるんでしょう・・・」
急に我に返る2人。狐人族同士何か通じるものがあったのかもしれない。
「そうじゃの、わらわ達で争う意味はないのじゃ・・・」
「はぁ・・・酷い茶番よ・・・もう・・・」
アマネとコハルもその意見には同意らしく、疲れた表情を浮かべている。
「とりあえずあと数週間じゃ。」
あと少しでアマネ達の夢が叶う。
だがそれはこのまま何事もなかった場合の話。
「問題は愚王よね。いずれ暴挙に出るとは思うわ。」
「せやね。それがもう少し先なら別にええねんけど・・・」
数週間後であれば、好きなだけ阿保な事をしてくれていい。どのみちその頃にはもうアマネ達はこの国にはいない。だがそれまでに動かれると非常に面倒だ。
「今はそれを祈るしかないじゃろな。お主らハルから目を離さんようにな。」
「ええ、わかってるわ。」
「もちろんや。今日で反省したわ。」
コハルとヨギリに続いてサクヤ達も頷く。今日からは一時たりとも気を抜かない、そんな意気込みを全員から感じる。




