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胡蝶の夢、夜に舞う  作者: 天霧 翔
第一章 胡蝶編
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誘惑

「ん・・・うるさいな・・・でもなんか・・・気持ちいい・・・」


 心地いい。柔らかい何かに包まれている、そんな感じがする。俺は無意識に手を伸ばす。すると何かが手に当たる。


「おぉ・・・気持ちいい・・・」


 無意識に手でそれを握る。程よく弾力があり、最高の触り心地だ・・・


「・・・って・・・ん・・・?」


 何かがおかしい。


 俺はそっと目を開く・・・


「あっ・・・んっ・・・ハ、ハルさん・・・あんっ・・・」


 目の前に色っぽい吐息を漏らすユイカがいた。


「え・・・・えぇ!?あ、ユイカごめん・・・!」


 彼女から飛び退くようにして離れる。


 どうやら俺はユイカに抱き着いて、程よく大きい彼女の胸を揉みしだいていたらしい。そんなの触り心地がよくて当然だ。


「ハ、ハルさんが・・・そ、その触りたいなら・・・好きなだけどうぞ・・・!」


 ユイカが顔を真っ赤にしながら胸を差し出してくる。


 待て。何でそうなる。


「ハルあんた何してんねん!この阿保!!!」

「痛い!耳抓るのやめて!ヨギリ!痛いから!」

「うるさいわよ!この馬鹿!この!この!」

「コハルも蹴るのやめろ!痛い!まじで!」


 何故俺は目を覚まして早々ヨギリとコハルに暴行を受けているのだろうか。


「アマネ・・・助けて・・・」

「このど阿保が!!!くらうがよい!」


 アマネにもおもいっきり平手打ちされた。


「いたっ・・・!な、なにするんだよ・・・!!!」

「「「うるさい!!!」」」


 えぇ・・・何で。


 ってあれ、そもそもなんで俺はここにいるんだっけ・・・


「あぁそうか・・・街で殴られて・・・ユイカが助けてくれたのか?」

「あ、はい・・・間に合って・・・よかったです!」

「ありがと、ユイカ。」

「それでハルさん・・・わたしの・・・胸・・・さ、触りますか?・・・どうぞ!」

「い、いや大丈夫・・・!!!」


 さっきの触り心地の良さを思い出し、つい頷きそうになってしまったが、背後から恐ろしい殺気を感じたので慌てて否定する。


「俺がここにいる理由はなんとなくわかったけど・・・なんで俺は今アマネ達に殴られたんだ?」

「な、なんのことかの?ハルはまだ寝ぼけておるんじゃろ。」


 まさか今のを全部無かったことにする気か、このロリババア。


「コハル、何で?」

「う、うるさいわね!この!」


 問答無用で蹴られた。酷い。ただ蹴飛ばされた先にはサクヤがいて、俺をそっと受け止めてくれた。まさに天国と地獄。


「・・・サクヤ?」

「ふふ、ハルさんは私がいい子いい子してあげますからね?」


 何故かそのままサクヤに抱きしめられ、膝の上に座らせられた。抵抗しようとしたが、全く出来なかった。どれだけ力が強いんだ。っていうか俺はどんだけ弱いんだ。まあ・・・弱くなかったら街でボコボコにされてないだろうが。


「なに?なんで?」

「はいはい、ハルさんはよく頑張りました。今日は特別にお姉さんが抱きしめてあげますからねー?」


 サクヤの胸に顔を押し付けられる。何か子ども扱いされているようで屈辱だが・・・気持ちいい。サクヤのいい匂いがするし、胸も柔らかくて夢見心地だ。それにもふもふの尻尾でそっと撫でてくれているのが何より最高だ。


「サクヤいい匂いする・・・胸も・・・やわらかい・・・」

「えっ・・・あっ・・・そ、そうですか・・・?」


 何故か急にしどろもどろになるサクヤ。


「な、何をしておるのじゃ!ハル!」

「そうよ!ハルさん!ユイカの次はサクヤなの!?」

「次から次へと節操ないんか!ハル!」


 何故俺はまた怒られているのだろうか。サクヤにこうして捕まっているのはどう考えてもコハルが俺を蹴飛ばしたせいだろうが。


「サクヤ・・・なんかあの3人怖いんだけど。」

「ああ、あれですか。理由知りたいです?」

「是非教えてくれ。」

「あのですね。アマネ姐さん達はハルさんの事が・・・」


 サクヤがそう言葉を発した瞬間、この世の終わりみたいな顔をするアマネ達。


 何故そんなに絶望的な顔をしているんだ。


「心配だったんです。」

「ああ、そう言う事?」


 アマネ達のあの表情は俺を心配してくれていたということなのか。それは悪い事をした。俺のせいでアマネ達に余計な気苦労をかけてしまったようだ。


「心配させて悪かった。サクヤもごめん。」

「いえ、私もすいません・・・だから・・・これはその・・・お詫びなので・・・胸、揉んでもいいですよ・・・?」


 頬を染めて艶かしく言うのはやめろ。


 しかしうちの娼婦達は誘惑がめちゃくちゃ上手い。顔を赤らめる演技まで完璧とはさすがだ。ユイカもそうだったが、サクヤにこんな表情で「好きにしていいですよ?」とか言われたらどんな男でもいちころだ。


「そうしたいのは山々だけどサクヤにそんな事するわけにはいかないな。」

「・・・ふふ、そういえば・・・そうでしたね?」

 

 俺が胡蝶で働いてなかったら、今すぐにでもサクヤを押し倒していた事だろう。だが彼女達と働く従業員である以上、それは出来ない。


「とりあえず・・・ハルさん?」

「なに?」

「お説教です。」


 逃がしませんとサクヤがしっかりと俺を抱きしめて動きを封じてくる。まさか俺を捕まえたのはこの為なのか・・・


「えっと・・・許して?」

「面白い事言うハルさんですね。ダメです。今から1人5分ずつお説教しますね?」


 待て。1人5分ってことは最低でも2時間半かかるじゃないか。嘘だろ。


「本当です・・・でもまぁ私達も鬼ではありません。ハルさんはこれでも食べながらお説教を聞いていてください。」


 サクヤがテーブルを指差す。するとそこにはいつの間にか料理が並んでいた。


「え?」

「お腹空いてると思ってみんなで作っておきました。」

「いただきます。よし、いくらでも説教聞くから早く話せ。」


 腹が減ってしょうがなかったんだ。これはありがたい。


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