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胡蝶の夢、夜に舞う  作者: 天霧 翔
第一章 胡蝶編
37/106

素直

「そうですね、でしたらサラさんの件について確認と相談をさせてください。」


 サラの客だった貴族を処理した件について確認しておきたい。経緯はコハルやヨギリから既に聞いてはいるが、一応ちゃんとアマネとも話しておくべきだろう。


「うむ、なんじゃ?」

「とりあえず・・・」


 俺はアマネの頭をおもいっきり引っ叩く。


「こ、こら!ハル!何をするのじゃ!」

「何うちの客に勝手な事してるんですか。」


 全く痛がる様子のないアマネ。どうやら俺程度の力じゃダメージなんてないに等しいらしい。


 なら俺が満足するまでこのロリババアを殴るとしよう。


「アマネさん?大体そんなことをしたら客が減るでしょうが。それに『娼婦』ではない仕事をする時は私に言ってくださいといつも言ってますよね。それを相談もせずに勝手に何をしてるんですか!大体アマネさんはいつもそうです。護衛の事だって・・・」


 アマネの頭をポカポカ叩きながら最近溜まっていた愚痴を全部ぶちまける。


 以前から「嬢の体調管理が俺の仕事だ」とアマネには口酸っぱく言ってきた。彼女達が気持ちよく仕事できるように、色々と胡蝶の改善にだって取り組んできた。その結果が今の胡蝶だ。


 勿論アマネ達の頑張りがあったからこその成果だし、凄いのは俺ではなく頑張った嬢達。だがその彼女達が頑張れるよう、必死にサポートした。サラやユイカ達からも「ハルさんのおかげでいつも楽しく仕事できます!」と言ってもらえる。俺なりに胡蝶に貢献したという自負はあるのだ。


 だから「娼婦」としてではない仕事は全部俺が引き受けるという主張は至極当然のものだ。もしアマネ達自身がどうしても動かなければならない場合は必ず相談しろと言ってきた。


 それなのにアマネは「処理」と称して客を勝手に処罰していたし、護衛だって俺になんの相談も無しにしていた。


 何勝手な事をしてるんだこいつらは。感謝はしている。だがそれでアマネ達が体を壊したらどうするんだ。


「わかりますか、アマネさん達が倒れたら困るんです。もう勝手にそう言う事はしないでください。しないと言いなさい。あと私の事を毎日毎日いじめるのはやめてください。私はアマネさん達のおもちゃではないんです。せっかくだしそれについても言わせてもらいますけどね・・・」


 結局そのまま15分くらいアマネに文句を言い続けてしまった。


「うぅ・・・いたいのじゃぁ・・・わらわを叩くとかひどいのじゃ・・・」


 アマネがすっかりいじけている。


「あんなにねちねち文句を言うとはおもわなかったでありんす・・・」

「け、結構陰湿なんですわね・・・」


 ヨギリとコハルが引き攣った笑みを浮かべながら失礼な事を言っているので、2人にもはっきりと言ってやろう。


「なんですか。ヨギリさんとコハルさんも何か文句でもあるんですか。とりあえず殴っていいですか。いえ、殴ります。覚悟してください。それから2人にも言いたい事が沢山あるんですよ。まずは・・・」

「ま、待って!文句なんかないわ!私が悪かったの、ごめん!ごめんね!」

「殴られるのはいやや!うちが悪かった!だから堪忍な!この通りや!」


 素の口調で素直に謝ってくるコハルとヨギリ。普段からこれだけ素直なら可愛げがあるのに。まあ謝ってくれたことだし許すとしよう。


「それで?アマネさんは何か言う事はありますか。」

「な、ないのじゃ・・・!だから叩くのはやめるのじゃああああ!」


 そういえばまだアマネの頭を叩いてた。忘れてた。


「すいません。忘れてました。」

「なんじゃと!?お主!わらわにこんな事してどうなるかわかっておるんじゃろうな!覚悟するのじゃ!」


 頭を叩くのを止めると、一転して強気な態度に出るアマネ。偉そうに踏ん反り返えって文句を言ってくる。


「嫌です。わかりません。余計な事いうならまた殴りますよ。いいから黙って俺に謝ってください。」

「わ、わらわが悪かったのじゃ!すまなかったのじゃ!」


 俺がこうして文句を言うと、何故かアマネ達はすぐ従順になる。いつもは自由奔放、傍若無人な彼女達。すぐ俺で遊ぶし、蹴るし、殴るし、酷い連中なのに、俺が文句を言い始めると態度が一変する。本気で苛ついている時は決してそれ以上踏み込んで来ない。そうでないときは一線どころか百線くらい余裕で越えてくるのに。


 これが国随一の娼婦の腕ということなのだろうか。相手を不快にさせない方法を心得ているのかもしれない。それにあれだけ遊ばれても、どこか不思議と心惹かれる。憎むに憎めない。サクヤ達だってそうだ。彼女達は俺の許容範囲の境界線をよくわかっている。


 結局俺はいつもアマネ達の手のひらで転がされているだけと言う事なのだろう。うちの娼婦達の人心掌握術には脱帽だ。


 まあだからこそうちの店が人気なわけなんだが。


 「わかってもらえたならいいんです。じゃあ最後に今後は『処理』はしないと約束してください。」

 「それは無理じゃ!絶対嫌じゃ!」


 まあそうだろうな。アマネがそう言うのはわかってた。


「なら次からやる前に相談してください。それならいいでしょう?」

「むぅ・・・まぁそれならいいかの・・・」


 アマネには俺から話しておくとヨギリに約束したので、これで大丈夫だろう。しかしこの一言を言う為に大分遠回りした気がする。


「目立つような事をして例の噂が酷くなるような事は避けたいんですよ。あ、でも感謝はしてますよ。アマネさんありがとうございます。」


 俺の身を守るためにやってくれていた事だ。感謝はすれど怒ってはいない。


「いいのじゃ。ハルは胡蝶にとって大事な人間じゃからの。」

「そう言って貰えて嬉しいです。ではそろそろアマネさんの話に移りましょうか。もしかしなくても例の噂の件ですか?」

「そうじゃの。その事について色々話しておきたかったのじゃ。」

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