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胡蝶の夢、夜に舞う  作者: 天霧 翔
第一章 胡蝶編
35/106

人形

「サクヤー!サクヤー!」


 俺は廊下に出て、全力で待合室に向かって叫ぶ。


 するとすぐにサクヤの声が階下から聞こえてきた。よかった、まだいてくれた。


「はーい!ハルさん!嫌ですー!自分でなんとかしてくださーい!」

「なんで!?」


 まさかの返答に焦る。頼む前に断られるとはさすがに思わなかった。というかサクヤは今この部屋で何が起こっているか想像が付いているというのか。


 そういえば・・・今思うと、ヨギリが俺の部屋にいるとサクヤが教えてくれた時、嬢達はどこかぎこちない様子だった。そしてアマネやコハルが俺について行くと言った時、さらに引き攣った笑みを浮かべていた。こう言う事だったのか・・・


 だが逃がさん。この部屋には彼女達の私物もあったはず。それを片付けさせるのを理由に助けてもらえばいい。


「あとハルさんー!その部屋にあった私達の物はもうさっき回収しましたー!あとは姐さん達の物だけですよー!」


 嘘だろ。唯一の突破口も既に潰された後だと・・・


 うちの嬢達の先見の明が凄すぎる。


 もうこうなったら彼女達の優しさにつけこむしかない。


「サクヤー!」

「嫌ですー!先に帰りますねー!」


 助けすら求めさせてもらえないらしい。


 こうなったらサクヤ以外に・・・


「ちょっと待ってよ!サラ!ユリー!」

「お疲れ様ですー!」

「ハルさんごめんなさい!」


 くそ、なら手当たり次第だ。


「ユイカ!ユイカー!」

「・・・・・」


 うん、ユイカは叫ぶの無理だ。呼んで悪かった。


「・・・マシロ!ユキ!・・・あと誰がいたっけ・・・ってもう全員か・・・じゃあもっかいサクヤー!」

「はーい!サクヤもう帰りまーす!」 


 そして本当に誰もいなくなった。もういくら叫んでも返事がない。結局全員にごめんなさいと言われた。悲しい。


「ほう、ハルはわらわを見捨て、サクヤ達に助けを求めたのじゃな?」

「いい度胸してるわね、ハルさん?」


 背後から殺気を感じる。怖い。だが俺は悪くないはず。ここで怯んでは男が廃る。


「もとはと言えばお前らの・・・って痛!痛い!耳、耳痛い!」


 問答無用と言わんばかりに、アマネとコハルに左右の耳を捻り上げられた。


「うるさいのじゃ!お主、ちょっとくるがよい!」

「そうよ!ちょっとこっちきなさい!」


 やっぱり今日の俺は厄日だったようだ・・・






「・・・ん?あれ?離してくれるのか?」


 部屋に連れ込まれ説教されると思ったのだが、彼女達にそんな気はなかったようで、すぐに離してくれた。


「それに部屋も片付いている・・・?」


 いつの間にか部屋が綺麗になっている。床に散らばっていた衣服やテーブルに置かれていたアクセサリーなどが綺麗さっぱりなくなっている。どういう事だ。


「お主が廊下に出てた時に片付けたのじゃ。」

「そうよ、お姉さん頑張ったんだからね。」


 部屋を片付けてくれたのは素直に嬉しい。でもなんでこんな回りくどいやり方をしんたんだ。ちゃんと片付けてくれるなら最初からして欲しかった。


「で、ヨギリは何してるの?」

「ん?一仕事のあとのティータイムやよ?」


 ベッドで死んでいたはずのヨギリがソファーに座って紅茶を優雅に飲んでいる。どうやらヨギリも掃除をしてくれていたらしい。


「ヨギリ・・・大丈夫なのか?」

「なんのこと?うちはよーわからんわ。」


 この狐、不死身か。よくあの肘鉄を2発も食らって平然としてられる。俺だったら間違いなく入院してるレベルだ。


「まあ・・・ありがとな。」

「うむ、それでいいのじゃ。」


 満足そうにうんうんと頷くアマネ。


「結局するんなら最初からしてくれよ。」

「そんなんおもろないやん。」

「面白さとかいらないんだけど。」

「まあ・・・い、色々あるねん。」


 ヨギリがそっぽを向きながら呟く。


 よくわからないがきっとこの3人は俺で遊びたかっただけなのだろう。相変わらず俺の事をおもちゃだと思っているらしい。


「でも1つだけいいか?」

「なにかしら?」


 まだ何かあるのとコハルが首を傾げる。


「いや、あのドレッサーの上に山盛りになってる呪いの人形なんとかして。」


 部屋自体は綺麗に掃除されているので文句ないのだが、何故か部屋の一角が大変な事になっている。何やら人形のようなものがドレッサーの上に大量に積み上げられているではないか。


 っていうかあんなのどっから出て来た。さっきまでこの部屋になかっただろうが。


「・・・なんですって?」

「だから呪いの人形を・・・痛っ!コハル、お前!」


 また足が飛んできた。こいつ足癖が悪すぎる。


「呪いのなんですって?」

「呪いのコハル人形だろ?・・・痛っ・・・!痛い痛い痛いってば!」

「蹴られたいのね!そうなのね!この!この!」


 相当頭に来たのか、コハルが滅茶苦茶蹴ってくる。


 でも仕方ないだろう。よくわからない人形がてんこ盛りになってたら誰だって怖い。どんな可愛い人形であろうとあんなに大量にあればただのホラーだ。


「さすがにあの量は不気味だろうが!いくつあるんだ!」

「1000個くらいよ!なによ!文句あるの!?」

「むしろ今までなかっただろ、どっからでてきた!?」

「クローゼットにしまってあったのよ!ハルさんの為に空けたんだから感謝しなさい!」


 その理論は絶対におかしい。そもそも何故この部屋に置いてあるんだ。


「大体なんであんな人形があるんだよ!」

「仕方ないじゃない!作ってたら楽しくなったんだから!」

「コハルが作ったのかよ!凄いな!」

「ありがとう!」


 そんな言い合いをしていたら、アマネとヨギリが呆れた目でこっちを見つめていた。


「お主ら、褒めるのか喧嘩するのかどちらかにするのじゃ・・・」

「ほんまに・・・あんたらアホなん?」


 そんな事を言われても困る。適当に感情だけで話してたんだからしょうがないだろう。自分でも途中でよくわからなくなったしな。


「でもコハル、凄いけどさすがに作り過ぎだろ。どうすんだよ、あれ。」

「ハルさんにあげるわよ?」

「いらん、邪魔だ。っていうかコハルの客にでも配れよ。喜ばれるだろ。」

「はぁ!?絶対いやよ!なんで客にあげなきゃいけないのよ!人形でもあれはコハルの分身なのよ!客なんかに愛でられたくないわよ!」

「おい、お前娼婦だろうが。」


 何言ってるんだこいつは。娼婦が言うセリフとは思えない。


「嫌なものは嫌なの!」


 理屈じゃないらしい。まあ本人が嫌なら無理に配れとは言わないが、とりあえずあれは邪魔だ。


「アマネ、消滅魔法って使える?」

「使えるぞ?あれを消せばよいのか?」


 アマネはそう言って手を振りかざす。


「ハルさん!?アマネ!?ちょっと!?」

「はぁ・・・冗談だよ。いいよ、おいておけ。」


 どうせ俺は私物がほとんどないし、あの程度人形があっても大した問題ではない。怖いのは怖いけど。それにもとよりそのつもりだった。これはさっきいじめられた分の仕返しだ。


「もう・・・いじわるね。」

「お互い様だ。それで部屋も片付いたし、3人ともそろそろ帰るか?」


 結局彼女達のおかげで片づけも早く終わった。時刻もまだ昼過ぎ。店の開店まではまだ結構あるし、多少は寝られる。


「ハルよ、お主がよければじゃが・・・月次報告をやらんかの?」

「ああ、確かに全員揃ってるな。うーん、俺は別にいいけど、アマネ達は休まなくて大丈夫なのか?」


 俺はいくら徹夜しようが仕事に差し支えはない。眠気との戦いなだけだ。だがアマネ達は違う。彼女達は体が資本だ。ちゃんと休まないと仕事に差し支えるだろう。


「いや、わらわ達は大丈夫じゃ。人族とは違うからの。」

「そうね、1週間くらい寝なくても平気よ。」

「うちもや。」


 なるほど。種族の違いをすっかり失念していた。それならば問題ないだろう。


「ではやるか、月次報告会議。」

「うむ、そうするのじゃ。」 

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