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胡蝶の夢、夜に舞う  作者: 天霧 翔
第一章 胡蝶編
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荷物再び

 食事も終わり、胡蝶への帰り道。俺は気になっていた事をアマネに尋ねる。


「さっきの魔法なんだったの?」

「ん?コハルのあれかの?あれは最上級炎魔法と消滅魔法じゃな。ちなみに消滅魔法はこの世界では禁術とされておる。」

 

 ただの虫になんてもの使ってんだ。あとなんでそんなもの使えるんだ。


「ちなみにアマネがいなかったら?」

「お主ごと消えておったの。」

「おいこら、コハル。」


 消し炭どころか存在ごと消滅させられるところだったのか。アマネを連れてきておいて本当によかった・・・。


「だ、だって!仕方ないじゃない!」


 仕方ないで消滅させられてたまるか。


「まあ・・・コハルをあんなところに連れてった俺も悪かったけど。」

「う、ううん。私こそちょっと取り乱したわ・・・ごめんなさいね。」


 どこがちょっとだ。


 とりあえずコハルと虫を混ぜては駄目、絶対。もう覚えた。






「ただいま。って何でまだいるんだ?」


 胡蝶に戻ると何故かサクヤ達が待合室にいた。てっきりもう全員帰ったと思っていたのに、どうしたのだろう。


「あ、いえ一応待っていようかと。お引越しですし、お手伝いする事あるかなと思いまして。」

「別にいいのに。悪いな、サクヤ。」

「あ、いえ、は、はい。」


 どこかぎこちない様子のサクヤ。


「どうした?」

「そ、その・・・ハルさんが『サクヤ』って呼ぶのは珍しいので・・・」


 吃驚したらしい。なるほど、確かにそれもそうだ。彼女達にこの口調で話した事はほとんどない。アマネ達ですら滅多にないのだから、サクヤ達にしてみれば何事かと思った事だろう。


「なるほど、悪いけど慣れてくれ。」

「どういうことです?」

「これからここに住むだろ?なら余計に仕事とそうでない時はちゃんと分けないと駄目だと思ってね。」


 仕事とプライベートの境界線が曖昧になるのはよくない。仕事は仕事、プライベートはプライベートだ。仕事だと常に気を張っているので、体が疲れる。そして胡蝶にいると、つい「仕事」だと思ってしまうので、仕事じゃない時間はこうして意識的に「休み」だと思うようにしないと体がもたない気がするのだ。


「そう言う事なんですね。わかりました。」

「悪いな。嫌だったら言ってくれ。」

「平気です。ねえ、皆さん?」


 サクヤの問いかけに嬢達は「問題ない」と頷く。


「助かる。じゃあ部屋の片づけしてくるわ。」


 仕事も終わったし、引っ越しも終わった。あとはあの部屋の掃除だけだ。コハルやヨギリが色々私物を持ち込んでいるから、片づけないといけない。


 正直あれがなければ夜に備えてもう寝られた。あれのせいで徹夜だ。


「はい。ってあれ・・・?」


 サクヤが首を傾げる。今度はどうしたのだろう。


「ハルさん?ところであの・・・お荷物は?」

「ん?ほら、これ。このカバンだけど。」

「・・・?家具などはアマネ姐さん達の収納魔法ですか・・・?」


 収納魔法だと。そんな便利な魔法があるのか。俺に魔力があったなら是非覚えたい魔法だ。


「いんや、ハルの荷物はそれだけじゃ。」


 自分は何も手伝ってないと首を振るアマネ。


「え?ハルさん、どういうことですか?」


 ここでもか。ここでもまた説明させられるのか。まあ仕方ない。俺はアマネとコハルにした説明を再度サクヤ達にもする。

 

「ハルさん!今度私とも遊びにいきましょう!そうしましょう!」

「私も行きたいです!行きましょう!」


 すると急に大声をあげるサラ。そしてユリ。


「お、おう。」


 彼女達の迫力に押されてしまい、つい頷いてしまった。まあこの子達に誘われたのなら付き合うのは吝かではない。しかしサラやユリも行きたいところがあるのか。


「ハ、ハルさん・・・わ、わ、私も・・・その・・・行きましょう・・・!」

「ユイカまで?うん、別にいいけどみんなそんなに行きたいところあるのか?」


 ユイカにまで誘われたのは驚いた。いつもサクヤ達の影に隠れて静かにしているあの人見知りのユイカから誘われるとは思わなかった。


「え・・・いや・・・違っ・・・」

「まあまあ、ユイカ。ハルさん、そう言う事です。みんな行きたいとこがあるので私達ともいきましょうね?」


 サクヤがうんうんと頷いている。


 サクヤ達が是非というなら付き合うのは別に構わない。・・・しかしそのサクヤ達の可哀そうな動物を見るような目はなんだ。なんでそんな憐みの目で俺を見つめてくるんだ。


「ハルさんは馬鹿ですね?」

「おい、サクヤ。なぜ俺に今暴言を吐いた。」

「さあ、何のことでしょう。」


 ころころと可愛らしく微笑むサクヤ。


 無理だ。これは勝てる気がしない。逃げるが勝ちだ。


「とりあえず部屋を片付けてくる。・・・あれ?ところでヨギリは?」


 さっきからヨギリの姿が見えない。アマネ達の説教を回避する為、帰ったのだろうか。


「えっと・・・ヨギリ姐さんならハルさんのお部屋にいます・・・」


 サクヤがボソボソっと呟く。


 いるのか。というかなんでいるんだよ。しかも俺の部屋に。


「・・・ヨギリは人の部屋で何してんの?」

「なんか掃除するとか張り切ってました・・・よ?」

「あ、そうなのか。それは助かるな。うん、さすがヨギリ。」

「そ、そうですね・・・。」


 素晴らしい。ヨギリのおかげで徹夜しなくて済みそうだ。サクヤ含め、うちの娼婦達は本当によく気が利く。


「本当に助かるな。」

「え、ええ・・・さすがヨギリ姐さん・・・ですね?」


 ただどこかさっきから歯切れの悪いサクヤ。


「じゃあまた夜に。みんなもちゃんと休めよ。」

「は、はい・・・ハルさん、お達者で。」


 なんだその不穏な挨拶は。不安になる。

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