報告書六百二十七ページと世界樹の精霊
第九話 報告書六百二十七ページと世界樹の精霊
結論から言うと。
僕たちは怒られた。
とても怒られた。
◇◇◇
「説明してもらえるかのう?」
学園長室。
学園長が笑顔で座っている。
怖い。
ものすごく怖い。
笑顔なのに怖い。
「えっと……」
僕は周囲を見る。
シオン。
リン。
メイア。
ベル。
全員集合している。
「どこから話せば?」
するとベルが手を上げた。
「報告書があります」
「おお」
助かった。
そう思った。
その時までは....
「こちらです」
ドンッ。
机の上に積まれた紙。
山だった。
「何ページ?」
リンが聞く。
ベルは誇らしげに答えた。
「六百二十七ページです」
「多い!!」
全員のツッコミが重なった。
◇◇◇
「要約して」
学園長が言った。
「はい」
ベルは咳払いする
「まずアキラ様が遺跡を起動しました」
「うん」
「その後、災厄を倒しました」
「うん」
「世界樹の封印が解けました」
「うん」
「世界滅亡の危機が判明しました」
「うん」
「以上です」
「短すぎる!!」
今度は逆だった。
◇◇◇
数十分後。
ようやく説明が終わった。
学園長は深いため息をつく。
「なるほどのう」
「信じてもらえます?」
「ベルがおる時点で信じるしかないのう」
そう言って学園長はベルを見る。
「久しぶりじゃな」
「お久しぶりです」
僕たちは驚いた。
「知り合いなの!?」
「昔ちょっとのう」
「ちょっと?」
ベルが答えた。
「約百年前です」
「全然ちょっとじゃない!」
時間感覚がおかしい。
◇◇◇
その時。
学園長室の扉が開いた。
入ってきたのは。
あの世界樹の精霊だった。
「こんにちは」
のんびりしている。
なぜいるのか。
「来ちゃいました」
本人もよく分かっていなかった。
◇◇◇
「そういえば名前は?」
僕が聞く。
世界樹の精霊は少し考えた。
「名前ですか」
「うん」
「あります」
「あるんだ」
「失礼ですね」
確かに失礼だった。
「私の名前はエルフィアです」
「エルフィア」
「はい」
とても綺麗な名前だった。
しかし。
「好きな食べ物はメロンパンです」
一気に神秘性が減った。
◇◇◇
その後。
学園長から重要な話があった。
「まずお主たち」
「はい」
「実力測定試験じゃが」
そういえばあった。
完全に忘れていた。
「結果発表じゃ」
全員が姿勢を正す。
「第一位」
ドキドキする。
「アキラとメイア組」
「えっ」
「やった」
メイアは少し嬉しそうだった。
「第二位がシオンとリン組じゃ」
「おお!」
「やったね」
二人も喜んでいる。
どうやら遺跡へ行く前にかなりポイントを稼いでいたらしい。
◇◇◇
しかし。
学園長は真顔になった。
「ただし問題がある」
「問題?」
「宝物庫見学じゃが」
「うん」
「今のお主らに見せると危険じゃ」
「なんで?」
「絶対何か起こるからじゃ」
否定できなかった。
誰も否定できなかった。
特にメイア。
特に僕。
◇◇◇
数日後。
平和な学園生活が戻ってきた。
……はずだった。
朝。
教室。
僕が席に着くと。
「おはよう」
メイアがいる。
「おはよう」
「おはようございます」
ベルがいる。
「おはよう」
エルフィアもいる。
「おはようございます」
「なんで!?」
僕は立ち上がった。
◇◇◇
「ベルは遺跡管理者だよね!?」
「はい」
「エルフィアは世界樹の精霊だよね!?」
「はい」
「なんで教室にいるの!?」
二人は顔を見合わせた。
そして。
「学園楽しそうなので」
「来ました」
息ぴったりだった。
◇◇◇
そこへシオンがやって来る。
「おっす!」
リンも来る。
「おはよう」
そして。
二人とも固まった。
「……」
「……」
ベルとエルフィアを見る。
「増えてる」
「増えてるね」
冷静だった。
◇◇◇
すると先生が入ってきた。
「席に着けー」
全員が座る。
しかし。
先生も固まった。
「なんで世界樹の精霊がいるんだ?」
「見学です」
「そうか」
先生は普通に受け入れた。
慣れてしまったらしい。
◇◇◇
その時だった。
突然。
教室の窓の外が光った。
空に巨大な魔法陣が現れる。
学園中が騒ぎ始める。
「また?」
僕が呟く。
メイアが頷く。
「また」
ベルが青ざめる。
「嫌な予感です」
エルフィアも珍しく真剣な顔になる。
「来ましたね」
「何が?」
僕が聞く。
二人は同時に答えた。
「世界の外からのお客様です」
全然意味が分からなかった。
そして。
学園の平和な日常は。
またしても終わろうとしていた。
第十話へ続く




