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ベル、学園に興味を持つ

第八話 ベル、学園に興味を持つ


 遺跡の最深部へ向かう途中。

 僕たちは長い通路を歩いていた。

 敵は今のところ出てこない。

 平和だ。

 とても平和だ。


「ベル」


「はい」


「さっき言ってた学園の話だけど」


「はい」


 ベルの目が少し輝く。


「本当に行きたいの?」


「行きたいです」


「なんで?」


 ベルは即答した。


「友達が欲しいです」


 僕は思わず足を止めた。


「友達?」


「私は千年間ずっと一人でした」


「……」


「なので友達というものに憧れます」


 そう言われると断りにくい。

 というか断れない。

 隣のメイアも頷いた。


「友達いい」


「だよね」


「アキラも友達」


「うん」


「シオンもうるさいけど友達」


「本人本人が聞いたら喜ぶよ」


「リンも友達」


 メイアは少し考えた。


「だからベルも友達」


 ベルが固まった。


「え」


「友達」


「え」


「友達」


 ベルの処理能力が追いついていない。

 顔が真っ赤になっている。


「わ、私は管理者ですよ?」


「関係ある?」


「ありませんでした」


 即落ちだった。

◇◇◇

 そんな話をしていると。

 前方から声が聞こえた。


「アキラーーー!!」


「お?」


 聞き覚えがある。

 数秒後。


 全力疾走してくるシオンが見えた。


「アキラ!」


「シオン!」


「無事だったか!」


「うん」


「心配したぞ!」


 シオンは思いっきり肩を掴んだ。

 その後ろからリンも歩いてくる。


「よかった」


「二人ともどうしてここに?」


 リンがため息をつく。


「シオンがね」


「うん」


「『友達が消えたんだから助けに行く!』って」


 シオンは胸を張った。


「当然だろ!」


「それで学園の先生たち巻き込んで遺跡調査隊ができたの」


「へぇ」


「大騒ぎだったよ」


 なんだか申し訳ない。

◇◇◇

 するとシオンがベルに気付いた。


「ん?」


 じーっと見る。


「誰?」


 ベルは姿勢を正した。


「私はベルです」


「おう!」


「遺跡管理者です」


「へぇ!」


「千年前からいます」


「へぇ!」


 シオンは数秒考えた。


「千年前!?」


 反応が遅かった。

◇◇◇

「千年前!?」


「はい」


「マジで!?」


「はい」


「不老不死!?」


「私は人間ではありません」


「すげぇ!」


 シオンの目がキラキラしていた。

 だが次の瞬間。


「シオン」


 リンが言う。


「なに?」


「後ろ」


「え?」


 振り向く。

 壁。

 だったはずだ。

 しかし。

 そこには巨大な穴が開いていた。


「いつの間に!?」


 全員が振り返る。

 メイアが首を傾げた。


「たぶん私」


「何したの!?」


「壁が邪魔だった」


「だからって壊さないよね!?」


 メイアは本気で不思議そうだった。

◇◇◇

 さらに奥へ進む。

 すると巨大な扉が見えてきた。

 高さ二十メートルほど。

 金色の装飾。

 中央には巨大な樹の紋章。


「これが最深部です」


 ベルが説明する。


「この先に世界樹の封印があります」


 空気が少し緊張する。


「開ける?」


 僕が聞く。


「開けます」


 ベルが答えた。


「どうせもう封印解除されてますので」


「雑だなぁ」


◇◇◇

 扉がゆっくり開く。

 ゴゴゴゴゴ……

 中はとても広かった。

 そして。

 中央に巨大な樹が立っていた。

 天井まで届くほど大きい。

 金色の葉が輝いている。


「綺麗だ……」


 思わず呟く。

 その時だった。

 樹が光り始める。

 無数の光が集まり。

 一人の少女の姿になる。

 緑色の長い髪。

 透き通るような肌。

 神秘的な雰囲気。

 まるで精霊そのものだった。


「久しぶりですね」


 少女が微笑む。


「ベル」


「はい」


 ベルが深々と頭を下げた。


「世界樹様」


 どうやら本物らしい。

◇◇◇

 しかし。

 少女は僕たちを見るなり。

 開口一番。


「お腹空きました」


 全員固まった。


「……え?」


 神秘的な雰囲気はどこへ行った。


「千年寝てましたので」


「そりゃそうだけど!」


「ご飯あります?」


 シオンがポケットを漁る。


「メロンパンなら」


「ください」


 即答だった。

◇◇◇

 数分後。

 世界樹の精霊は床に座ってパンを食べていた。

 もぐもぐ。

 もぐもぐ。


「美味しいです」


 なんだろう。

 想像していた伝説の存在と違う。

 かなり違う。


「アキラ」


 リンが小声で言う。


「うん」


「この世界って思ったより自由だね」


「僕もそう思う」


◇◇◇

 すると世界樹の精霊が立ち上がった。

 表情が少し真剣になる。


「さて」


 空気が変わる。


「本題です」


 全員が耳を傾けた。


「世界の外側が少し壊れ始めています」


 笑顔でとんでもないことを言った。


「え?」


「封印が弱くなりました」


「え?」


「放っておくと大変です」


「どれくらい?」


 僕が聞く。

 すると。


「たぶん世界が滅びます」


 沈黙。

 数秒後。


「軽く言わないで!?」


 僕の叫びが遺跡に響いた。

 世界樹の精霊は少し首を傾げた。


「軽かったですか?」


「かなり!」


「失礼しました」


 全然悪びれていなかった。

◇◇◇

 こうして。

 僕たちは実力測定試験の最中に、

 なぜか世界滅亡を防ぐ話を聞かされることになった。

 ちなみに。

 試験の結果はまだ誰も覚えていない。


第九話へ続く

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