ベルと災厄の巨人
第七話 ベルと災厄の巨人
漆黒の巨人が一歩踏み出した。
ドゴォン!!
それだけで遺跡全体が揺れる。
「大きいね……」
僕は現実逃避気味に呟いた。
高さは十メートル以上。
腕一本だけでも家くらいありそうだ。
「アキラ」
メイアが前に出る。
「下がって」
「でも」
「大丈夫」
そう言ったメイアの表情は真剣だった。
学園最強。
その異名に恥じない雰囲気。
しかし。
「勝率は?」
僕が聞く。
メイアは少し考えた。
「三割」
「低い!」
思ったより危なかった。
◇◇◇
その時。
管理者の少女が前へ出た。
「訂正します」
「ん?」
「私は管理補助人格ユニットNo.7ではありません」
「今さら?」
「正式名称があります」
少女は胸を張った。
「ベルです」
「ベル?」
「はい」
どこか嬉しそうだった。
「ベル・アーカイブ」
「かっこいい名前だね」
ベルは少しだけ照れた。
「ありがとうございます」
どうやら名前を褒められるのが好きらしい。
◇◇◇
だが。
そんな和やかな空気を許してくれる相手ではなかった。
巨人が拳を振り上げる。
「来る!」
メイアが叫ぶ。
ドォォォォン!!
拳が地面に叩きつけられた。
爆風。
衝撃。
石床が砕ける。
「うわあああ!?」
僕は転がりながら避けた。
「危ない!」
「危なかった!」
「同じ意味です!」
ベルがツッコんだ。
意外とノリがいい。
◇◇◇
メイアが飛び出す。
銀色の軌跡。
神速の一撃。
「はっ!」
キィィィン!!
剣が巨人の腕を斬る。
しかし。
浅い。
「硬い」
メイアが眉をひそめた。
今までの敵なら一撃だったはずだ。
なのに傷しか付かない。
「ベル!」
僕は叫ぶ。
「弱点とかないの!?」
「あります!」
「あるんだ!」
「胸部中央です!」
「もっと早く言って!?」
◇◇◇
巨人の胸を見る。
確かに。
黒い装甲の奥で赤い光が脈打っていた。
「あれか」
「はい!」
ベルが頷く。
「あれを壊してください!」
「簡単に言うね!?」
「頑張ってください!」
他人事だった。
◇◇◇
その時だった。
腕輪が光る。
僕の右腕。
遺跡で手に入れた管理者の腕輪。
「え?」
文字が浮かび上がる。
【権限確認】
【戦闘支援機能起動可能】
「戦闘支援?」
僕が呟く。
するとベルの目が大きくなった。
「それです!」
「どれ!?」
「起動してください!」
「どうやって!?」
「なんかそれっぽく!」
「説明が雑!!」
◇◇◇
でも。
今までもそんな感じだった。
魔法も。
異世界生活も。
なんかそれっぽくやってきた。
「よし」
僕は腕輪を掲げる。
「戦闘支援、起動!」
その瞬間。
ゴォォォォォ!!
遺跡全体が輝いた。
壁。
床。
天井。
すべての古代文字が光り始める。
「成功です!」
ベルが叫んだ。
次の瞬間。
僕の前に大量の光が集まる。
そして。
一本の剣が現れた。
◇◇◇
「え?」
真っ白な剣だった。
透明にも見える。
不思議な武器。
「管理者専用武装」
ベルが説明する。
「名称は――」
少し間を置いて。
「アークブレイドです」
「なんか強そう」
「とても強いです」
ベルが自慢げだった。
自分が作ったわけではないはずなのに。
◇◇◇
巨人が再び迫る。
時間がない。
「アキラ!」
メイアが叫ぶ。
「任せる!」
「え?」
「信じる」
その言葉に驚いた。
でも。
不思議と怖くなくなった。
「分かった」
僕は剣を握る。
温かい。
まるで最初から使い慣れていたみたいだった。
◇◇◇
そして。
走る。
巨人へ向かって。
「うおおおおお!」
もちろん剣術なんて知らない。
だから。
いつも通り。
なんかそれっぽく振った。
その瞬間。
ドォォォォォォォォン!!
巨大な光の斬撃が飛び出した。
「えぇぇぇ!?」
僕が一番驚いた。
光は巨人の胸を貫く。
赤い核へ直撃。
次の瞬間。
巨人の身体に無数の光が走った。
◇◇◇
パキッ。
パキパキッ。
そして。
巨人は崩れ落ちた。
光となって消えていく。
静寂。
誰も動かない。
数秒後。
「終わった?」
僕が聞く。
「終わりました」
ベルが答えた。
「本当に?」
「はい」
「よかったぁ……」
その場にへたり込んだ。
緊張が一気に抜ける。
◇◇◇
しかし。
安心したのも束の間だった。
ベルが急に固まる。
「……あ」
「どうしたの?」
「問題が発生しました」
嫌な予感。
最近この流れが多い。
「どんな問題?」
ベルは珍しく青ざめていた。
「災厄を倒した影響で」
「うん」
「最深部の封印が解除されました」
「うん?」
「もっと強いものが起きます」
沈黙。
「え?」
「もっと強いものです」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
まただった。
◇◇◇
一方その頃。
王立アルカディア学園。
学園長の前に一枚の古文書が開かれていた。
そこに記されている名前。
それを見た学園長は目を見開く。
「まさか……」
震える声で呟く。
「ベルが目覚めたというのか」
そして。
さらに下に書かれていた一文を見て顔色を変えた。
『最終管理者覚醒の時、世界樹の封印もまた解かれる』
「これはまずいのう……」
第八話へ続く




