古代遺跡と眠る少女
第六話 古代遺跡と眠る少女
眩しい光が消えた。
「うわっ!」
思わず目を閉じる。
数秒後、ゆっくりと目を開けた。
「ここは……?」
見たこともない場所だった。
巨大な石柱。
天井が見えないほど広い空間。
壁には青白く光る文字が刻まれている。
まるでゲームのダンジョンみたいだった。
「アキラ」
「うん?」
「迷った」
「まだ歩いてないよね!?」
隣ではメイアが真顔だった。
どうやら異世界でも方向音痴は治らないらしい。
◇◇◇
しばらく歩く。
周囲には不思議な装置が並んでいた。
丸い水晶。
金属の柱。
浮かんでいる光の板。
「古代文明の遺跡かな」
僕は呟いた。
「たぶん」
メイアも頷く。
その時だった。
ピッ。
突然、光の板が点灯した。
「うわっ!?」
文字が流れ始める。
読めない。
はずだった。
なのに。
なぜか意味が理解できた。
『継承者を確認』
『最終管理システム起動』
『歓迎します』
「継承者?」
僕が首を傾げる。
すると光が集まり始めた。
そして。
僕たちの前に少女が現れた。
◇◇◇
銀色の長い髪。
透き通るような白い肌。
青い瞳。
年齢は僕たちと同じくらいに見える。
ただし。
身体が少し透けていた。
「幽霊!?」
「違います」
即答だった。
「私は管理補助人格ユニットNo.7です」
「何て?」
「管理補助人格ユニットNo.7です」
「もっと分からない」
メイアも珍しく困った顔をしていた。
少女は小さく首を傾げる。
「簡単に説明します」
「お願いします」
「私はこの遺跡の管理者です」
「あ、それなら分かる」
◇◇◇
少女は僕を見る。
じーっと見つめてくる。
「えっと?」
「確認完了」
「何が?」
「あなたが起動者です」
嫌な予感。
とても嫌な予感。
「つまり?」
「この遺跡の所有者になりました」
「はい?」
数秒沈黙した。
「はい?」
「所有者です」
「いやいやいや」
家じゃないんだから。
遺跡だよ?
しかも巨大だ。
「千年前の古代文明の研究施設です」
「そんな簡単に貰えるの!?」
「規定です」
規定らしい。
意味が分からない。
◇◇◇
その後、一時間ほど説明を受けた。
まとめると。
この遺跡は千年前の魔法文明が作った研究施設。
世界でも存在が知られていない。
そして。
僕がなぜか起動条件を満たした。
「なんで僕なんだろう」
「不明です」
「不明なんだ」
「不明です」
管理者なのに分からないらしい。
◇◇◇
その時。
ゴゴゴゴゴ……
遺跡全体が揺れた。
「地震!?」
「違います」
少女が答える。
「侵入者です」
「侵入者?」
次の瞬間。
警報が鳴り響いた。
赤い光が点滅する。
『警告』
『警告』
『封印区域より反応確認』
『危険存在接近中』
空気が一変した。
さっきまで穏やかだった少女も真剣な表情になる。
「まずいです」
「何が?」
「封印されていた個体が覚醒しました」
「それって」
「とても危険です」
嫌な予感しかしない。
◇◇◇
ドォォォォン!!
遠くで爆発音が響く。
床が揺れる。
何かが近付いてきている。
「アキラ」
メイアが剣を抜いた。
「うん」
「戦える?」
「たぶん」
本当は不安だった。
でも。
逃げられそうな状況でもない。
その時。
管理者の少女が僕に何かを差し出した。
光る腕輪だった。
「これを」
「なにこれ?」
「施設管理者権限の一部です」
「よく分からない」
「装備してください」
言われるまま腕にはめる。
すると。
腕輪が光った。
頭の中に大量の情報が流れ込む。
「うわっ!?」
「アキラ!」
メイアが支える。
そして僕は見た。
千年前の景色を。
空を飛ぶ魔導船。
巨大な魔法都市。
そして――
黒い影。
世界を滅ぼそうとした存在。
「まさか……」
記憶が途切れる。
同時に。
遺跡の奥の扉が砕け散った。
轟音と共に現れたのは。
漆黒の巨人だった。
赤い瞳がこちらを見る。
圧倒的な威圧感。
今まで戦った魔物とは比べ物にならない。
「封印個体No.01」
少女が呟く。
「古代文明を滅ぼした災厄です」
「え?」
さらっととんでもないことを言われた。
「えぇぇぇ!?」
僕の叫びが遺跡中に響いた。
◇◇◇
一方その頃。
王立アルカディア学園。
森の上空に巨大な魔法陣が出現していた。
学園長は空を見上げる。
「ほっほっほ」
笑っていた。
だが目は真剣だった。
「とんでもないものを起こしてくれたのう」
隣の教師が青ざめる。
「学園長、あれは……」
「ああ」
学園長は頷いた。
「千年前の遺跡じゃ」
そして小さく呟いた。
「アキラよ」
「どうやらお主は、ただの転生者ではなさそうじゃな」
第七話へ続く




