実力測定試験と地下の秘密
第五話 実力測定試験と地下の秘密
実力測定試験当日。
僕は朝から緊張していた。
「眠い……」
教室の机に突っ伏す。
昨日、試験対策として魔法の教科書を読んでいたら夜更かししてしまった。
「アキラ」
隣から声がする。
メイアだった。
「大丈夫?」
「たぶん」
「顔が死んでる」
「まだ生きてるよ」
そんな会話をしていると、シオンとリンがやってきた。
「おはよう!」
「おはよー」
「今日は頑張ろうね」
リンが微笑む。
「ほどほどにね」
「なんでだよ!」
シオンが突っ込んだ。
「一位狙えよ!」
「いやだよ」
「なんで!?」
「目立つから」
「今さらだろ!」
それは確かにそうだった。
水晶破壊事件。
火柱事件。
壁破壊事件。
すでに十分目立っている。
否定できなかった。
◇◇◇
試験内容はシンプルだった。
学園が管理する森で魔物を倒しながらポイントを集める。
ペア戦形式。
「それでは開始!」
先生の合図で生徒たちが森へ向かう。
僕とメイアも歩き始めた。
「まず何する?」
僕が聞く。
「探す」
「うん」
「魔物」
「うん」
「あと道」
「道?」
「迷うから」
真顔だった。
まず自分の現在地を把握することが大事らしい。
◇◇◇
森の中。
開始から三十分。
僕たちは順調だった。
メイアが強すぎる。
「はっ」
ヒュン!
一振り。
それだけで魔物が倒れる。
「すごい」
「普通」
「普通じゃないよ」
学園最強の実力は本物だった。
一方で僕は――
「えい」
ボンッ!
魔物の足元から突然土が盛り上がった。
魔物が転ぶ。
「また変な魔法」
メイアが言う。
「自分でも何が出るか分からないんだよね」
僕の魔法は相変わらず不安定だった。
火が出たり。
風が出たり。
水が出たり。
たまに意味不明な現象も起きる。
先生たち曰く、
『属性が特定できない』
らしい。
そんな人はほとんどいないらしい。
◇◇◇
昼頃。
事件は起きた。
「ん?」
僕は違和感に気付いた。
森の奥。
木々の間に何か見える。
「メイア」
「なに?」
「あそこ」
二人で近づく。
すると――
「階段?」
地面に石造りの階段があった。
地下へ続いている。
苔むしていて古い。
「地図にない」
アキラが呟く。
「どうする?」
「行く」
「即決だね」
◇◇◇
地下は薄暗かった。
魔法灯を使いながら進む。
すると広い空間へ出た。
「うわ……」
思わず声が漏れる。
壁一面に古代文字。
中央には巨大な魔法陣。
今まで見たこともないほど複雑だった。
「なんだろう」
「分からない」
メイアですら知らないらしい。
その時だった。
ブワッ!!
魔法陣が光り始めた。
「えっ!?」
床が揺れる。
空気が震える。
そして。
巨大な光の柱が現れた。
そこから現れたのは――
黒い狼だった。
いや。
狼なんて言葉では足りない。
体長は三メートル以上。
赤い瞳。
圧倒的な威圧感。
「まずい」
メイアの表情が変わった。
初めて見る緊張した顔だった。
「強い?」
「かなり」
「どれくらい?」
「先生たち呼ぶレベル」
「それはまずいね」
◇◇◇
狼が吠えた。
ドォォォン!!
衝撃波が飛ぶ。
「っ!」
メイアが前に出る。
剣が光る。
激突。
轟音。
しかし狼はほとんど動かない。
「嘘でしょ」
学園最強の一撃だ。
それなのに。
「アキラ」
メイアが言った。
「逃げてもいい」
「でもメイアは?」
「時間稼ぐ」
「それは嫌かな」
僕は前へ出た。
怖い。
正直かなり怖い。
でも。
友達を置いて逃げるのはもっと嫌だった。
「なんかそれっぽいことやってみるか」
僕は手を伸ばした。
すると。
魔法陣が反応した。
「え?」
光が集まる。
空気が震える。
そして。
頭の中に声が響いた。
――資格を確認。
――適合者を認識。
――起動します。
「え?」
何が起きてるの?
次の瞬間。
巨大な光が僕を包み込んだ。
狼も。
メイアも。
地下空間そのものも。
全てが白く染まる。
「アキラ!」
メイアの声が聞こえた。
でも。
その直後。
僕たちの姿は地下空間から消えていた。
◇◇◇
一方その頃。
地上。
「アキラたち遅くないか?」
シオンが首を傾げた。
「確かに」
リンも心配そうだった。
その時。
森の奥から巨大な光が空へ伸びた。
全員が見上げる。
「え」
「何あれ」
「またアキラ?」
誰も否定しなかった。
第六話へ続く




