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学園最強の少女と迷子事件

第四話 学園最強の少女と迷子事件


 放課後。

 僕は訓練場の壊れた壁の前に立っていた。


「はぁ……」


 ため息が出る。

 入学初日。

 普通なら友達を作ったり、校舎を見て回ったりする日だと思う。

 なのに僕は――壁の修理をしています

なぜだろう。


「自業自得だな!」


 シオンが笑う。


「うるさいよ」


「ははは!」


「ごめん....手伝って」


「もちろん!」


 そう言いながらシオンはレンガを運び始めた。

 意外といいやつである。

 そこへリンもやってきた。


「差し入れ持ってきたよ」


「おお!」


「ありがとう」


 リンは籠を置いた。

 中にはパンや果物が入っている。


「頑張ってね」


「なんか保護者みたい」


「よく言われる」


 本人も否定しなかった。

◇◇◇

 数時間後。

 修理は無事終了した。


「終わったー!」


 シオンが両手を上げる。


「疲れた」


 僕は芝生に寝転がった。

 青空が綺麗だ。

 異世界に来たんだなぁ。っと

 今さらながらそんなことを思う。


「そういえば」


 リンが辺りを見回した。


「メイアは?」


「確かに」


 さっきまでいた気がする。

 修理作業も少し手伝っていた。

 なのに今はいない。


「帰ったんじゃないか?」


 シオンが言う。

 その時だった。

 遠くから先生が走ってきた。


「お前たち!」


「はい?」


「メイアを見なかったか!?」


「え?」


 先生は頭を抱えた。


「またいなくなった!」


◇◇◇


「また?」


 僕が聞く。

 先生は深いため息をついた。


「あいつは重度の方向音痴なんだ」


「方向音痴?」


「学園内で迷子になる」


「広いですしね」


 リンが言う。

 先生は首を横に振った。


「教室から隣の保健室へ行こうとして王都の外まで行った」


「どうやって?」


「私も知りたい」


 全員黙った。

 意味が分からない。

◇◇◇

 こうして。

 僕たちはメイア捜索隊になった。


「右側探す!」


 シオンが走る。


「私は図書館を見てくる」


 リンも向かう。

 そして僕は校舎裏へ向かった。

◇◇◇

 十分後。


「いないなぁ」


 池の近くまで来た。

 すると。


「……」


 ベンチに誰か座っている。

 銀髪。

 長い髪。

 青い瞳。

 間違いない


「メイア」


「アキラ」


 いた。

 普通にいた。


「何してるの?」


「帰ろうと思った」


「うん」


「気付いたらここ」


「うん」


「帰れない」


「なるほど」


 全然なるほどじゃない。

◇◇◇

 メイアは真顔だった。

 本当に困っているらしい。


「ちなみに寮はどっち?」


 僕が聞く。

 メイアは左を指差した。


「そっち」


「反対だよ」


「……」


「反対だよ」


「そう」


 全然動揺していない。

 慣れているのだろう。


「よく迷うの?」


「毎日」


「毎日?」


「毎日」


 重症だった。

◇◇◇

 帰り道。

 僕とメイアは並んで歩いていた。


「アキラ」


「なに?」


「聞きたいことある」


「どうぞ」


 メイアは少し考えた。


「どうして怖がらない?」


「何を?」


「私」


 僕はきょとんとした。


「なんで?」


「みんな怖がる」


 メイアは空を見上げる。


「学園最強だから」


「なるほど」


 確かにそうかもしれない。

 強すぎる人って近寄りづらい。


「でも」


 僕は笑った。


「僕からすると迷子の女の子だし」


「……」


「あとサンドイッチ食べてる人」


「……」


「あと友達」


 メイアが立ち止まった。

 風が吹く。

 銀髪が揺れる。


「友達」


「うん」


「そう」


 少しだけ。

 本当に少しだけ。

 メイアは嬉しそうに笑った。

◇◇◇

 翌日。

 教室。

 僕が席に座ると。

 机の上にパンが置いてあった。


「?」


 横を見る。

 メイアが本を読んでいた。


「これ」


「お礼」


「昨日の?」


「うん」


 僕はパンを見た。

 とても美味しそうだ。


「ありがとう」


「どういたしまして」


 その時だった。

 シオンが飛び込んできた。


「大事件だ!」


「朝からうるさい」


 リンが言う。


「聞けよ!」


 シオンは興奮していた。


「来週、実力測定試験があるらしい!」


「へぇ」


「しかも!」


 嫌な予感。


「上位者には特別報酬が出る!」


「特別報酬?」


「学園地下の宝物庫見学権!」


 クラス全員がざわついた。


「宝物庫!?」


「見てみたい!」


「レア魔道具あるらしいぞ!」


 盛り上がっている。

 ただ一人を除いて。


「アキラ」


 メイアが言った。


「なに?」


「頑張ろう」


「うん」


「一位取る」


「えっ」


「一緒に」


「えっ」


 学園最強と組むことになった。

 そして僕はまだ知らない。

 この実力測定試験が――

 学園中を巻き込む大騒動の始まりになることを。


第五話へ続く

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