特別クラスと学園最強の少女
第三話 特別クラスと学園最強の少女
入学式当日。
僕は今、とても緊張していた。
理由は簡単。
特別クラスだからだ。
「絶対変な人しかいないよねぇ……」
教室の前で立ち止まる。
シオンとリンは一般クラスなので別々だ。
「まあ、なるようになるか」
僕は扉を開けた。
ガラッ。
その瞬間――
ドォォォン!!
教室の奥で爆発が起きた。
「うわぁ!?」
思わず閉めそうになった。
中から煙が出ている。
「失敗したー!」
「だからその実験を教室でするなと言っただろ!」
「まあまあ!」
「全然まあまあじゃない!」
大騒ぎだった。
「……帰っていいかな」
「ダメだぞ」
後ろから声がした。
振り向くと担任らしき先生が立っていた。
眼鏡をかけた女性だ。
「君がアキラだな」
「はい」
「頑張れ」
「先生が諦めた顔してるんですけど」
「気のせいだ」
絶対気のせいじゃなかった。
◇◇◇
教室に入る。
するとクラスメイトたちの視線が集まった。
「お、新入りだ!」
「例の水晶全部壊した奴?」
「火柱出したって聞いたぞ」
「面白そう」
情報が広まっている。
恥ずかしい。
「静かにしろ」
先生が手を叩いた。
「今日から編入するアキラだ」
僕は軽く頭を下げる。
「アキラです。よろしく」
拍手が起こる。
思ったより優しそうだ。
……いや。
一人だけ違った。
窓際の席。
そこに座る銀髪の少女。
年齢は僕と同じくらいだろう。
長い銀髪。
青い瞳。
整った顔立ち。
まるで人形みたいだった。
でも。
誰よりも存在感がある。
教室の空気そのものを支配しているような不思議な雰囲気。
「あ」
目が合った。
少女は少しだけ首を傾げた。
そして。
ぷいっと窓の外を向いた。
「……?」
なんだったんだろう。
◇◇◇
ホームルーム終了後。
先生が僕を呼び止めた。
「アキラ」
「はい?」
「席はあそこだ」
指差された場所を見る。
窓際。
そして。
さっきの銀髪の少女の隣。
「えっ」
「頑張れ」
「先生また諦めた顔してません?」
「気のせいだ」
二回目だった。
◇◇◇
席に座る。
隣の少女は本を読んでいた。
話しかけるべきかな。
でも嫌そうだったし。
どうしよう。
「……」
「……」
気まずい。
「えっと」
僕は勇気を出した。
「よろしく」
少女は本から目を離した。
そして一言。
「メイア」
「え?」
「私の名前」
「あ、僕はアキラ」
「知ってる」
「そうなんだ」
会話終了。
早かった。
ものすごく早かった。
◇◇◇
昼休み。
シオンが飛び込んできた。
「アキラー!」
「おー」
「特別クラスどうだ!?」
「個性的」
「だろ!」
なぜ誇らしげなんだろう。
するとシオンが急に固まった。
「……」
「どうしたの?」
「お前」
「うん」
「なんでメイアの隣に座ってるんだ?」
「そこが席だから」
シオンの顔色が変わった。
「アキラ」
「うん」
「知らないのか?」
「何を?」
シオンは小声になった。
「メイアは学園最強だぞ」
「学園最強?」
「入学試験で試験場を半分吹き飛ばした」
「怖い」
「教師との模擬戦で十七勝」
「怖い」
「魔物討伐記録も歴代一位」
「怖い」
なんだその化け物。
僕は隣を見る。
メイアは黙々とサンドイッチを食べていた。
もぐもぐ。
「普通の子に見えるけど」
「見えるだけだ!」
◇◇◇
その日の午後。
戦闘実技の授業が行われた。
「今日は模擬戦だ」
先生が言う。
「ペアを組め」
ざわつく教室。
すると。
「アキラ」
メイアが立ち上がった。
「え?」
「来て」
「どこへ?」
「模擬戦」
周囲が静まり返った。
嫌な予感しかしない。
「えっと」
「嫌?」
「嫌じゃないけど」
「なら決まり」
断れなかった。
◇◇◇
訓練場。
僕とメイアは向かい合っていた。
観客席にはクラスメイトたち。
「アキラがんばれー!」
シオンまでいる。
いつ来たんだろう。
「始め!」
先生の合図。
その瞬間。
メイアの姿が消えた。
「え?」
次の瞬間には目の前。
速い。
速すぎる。
「うわっ!?」
反射的に手を前へ出した。
すると。
ゴォォォォォ!!
巨大な風の壁が発生した。
メイアが初めて驚いた顔をする。
「!」
風が訓練場全体を包み込む。
観客席も大騒ぎだ。
「また暴走した!」
「アキラだ!」
「やっぱりか!」
ひどい言われようだった。
しかし。
メイアは笑っていた。
本当に少しだけ。
でも確かに笑った。
「面白い」
「え?」
「初めて」
メイアは剣を下ろした。
「アキラ」
「なに?」
「友達になる」
それは疑問形ではなかった。
完全に決定事項だった。
「えっと……」
「嫌?」
青い瞳がじっと見つめてくる。
「嫌じゃないかな」
「なら決まり」
メイアは満足そうに頷いた。
その瞬間。
ドゴォォォン!!
僕の風魔法が暴走して訓練場の壁を吹き飛ばした。
沈黙。
先生が空を見上げる。
「アキラ」
「はい」
「放課後、修理作業な」
「ごめんなさい」
入学初日。
僕はしっかり学園の施設を破壊したのだった。
第四話へ続く




