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森の案内人フィア

第二話 森の案内人フィア


 フィアと出会った翌日。

 僕たちはエルフィリアの森の中を案内してもらっていた。


「改めてよろしくね」


 フィアが微笑む。


「よろしく!」


 ルミナ。


「よろしく!」


 ミナ。


 二人はすっかり仲良くなっていた。

 昨日会ったばかりなのに。

 順応力が高い。


「それにしても綺麗な森だね」


 僕が周囲を見渡す。

 どこを見ても緑。

 風が吹くたび葉っぱが揺れる。

 鳥の鳴き声も聞こえる。

 とても平和だ。


「エルフィリアは自然と共に生きる場所だからね」


 フィアが説明する。


「森そのものが私たちの家なんだ」


「すごいなぁ」


 僕は感心した。

 すると。


「見て!」


 ルミナが叫ぶ。


「見て!」


 ミナも叫ぶ。


 嫌な予感がした。

 二人の視線の先。

 そこには赤い木の実がなっていた。

 なんだか美味しそうだ。


 そして。


 二人の目も輝いていた。

 非常に危険だった。


「食べられるかな?」


 ルミナ。


「食べられるかな?」


 ミナ。


「待って」


 フィアが即座に止める。


「それは駄目」


「え?」


「なんで?」


「眠るから」


「眠る?」


「三日くらい」


 全員が固まった。


「危なかった!」


 僕は慌てる。


「もう少しで食べるところだった!」


「うん!」


「うん!」


 二人とも反省しているように見えない。

 シオンが頭を抱える。


「お前ら森で生きていけないだろ」


「生きていけるよ!」


「たぶん!」


「たぶんって言った!」


 そんなやり取りをしながら進む。

 すると。

 途中で小川が見えてきた。

 透き通るほど綺麗な水。


「綺麗……」


 リンが目を細める。

 フィアも嬉しそうだった。


「森の自慢の場所なんだ」


 すると。

 メイアが川を見つめる。


「魚いる」


「本当だ」


 小さな魚が泳いでいる。

 平和な光景だった。

 だが。

 その時だった。

 フィアの表情が少し曇る。


「……あれ?」


「どうしたの?」


 僕が聞く。

 フィアは川の上流を見る。


「水が濁ってる」


 確かに。

 よく見ると上流から少しだけ黒っぽい水が流れてきている。


「昨日は綺麗だったのに」


 フィアが呟く。

 その声には不安が混じっていた。

 みんなで上流へ向かうことにした。

 しばらく歩く。

 すると。

 奇妙な光景が目に入った。


「何だあれ……」


 シオンが呟く。

 そこには大きな岩があった。

 だけど普通じゃない。

 黒いモヤのようなものがまとわりついている。

 しかも。

 周囲の植物が少し元気を失っていた。


「これが原因?」


 リンが聞く。

 フィアは真剣な顔で頷く。


「たぶん」


 その時。

 ポケットの中で白い結晶が光った。

 アルスからもらった結晶だ。


『見つけたみたいだね』


 アルスの声が響く。


「これ何なの?」


 僕が尋ねる。

 すると。

 アルスの声が少し真剣になる。


『世界の歪みだ』


 空気が変わる。


『第三封印解除の影響で生まれたもの』


『放っておくと自然や魔力に悪影響を与える』


 フィアの表情が険しくなる。


「森が弱っている原因……」


『その可能性が高い』


 アルスが答えた。


「どうすればいいの?」


 僕が聞く。

 すると。


『近付いて浄化するしかない』


「簡単に言うなよ」


 シオンがツッコむ。

 僕も同感だった。

 その時だった。

 黒い岩が突然震え始める。

 ゴゴゴゴ……


「え?」


 ルミナが後ずさる。

 ミナも驚いている。

 そして。

 岩から黒い霧が溢れ出した。


「まずい!」


 フィアが叫ぶ。

 次の瞬間。

 霧が一つの形になる。

 巨大な狼だった。

 真っ黒な毛並み。

 赤い瞳。

 普通の魔物とは明らかに違う。


「うわぁ!?」


 僕は思わず声を上げた。


「でかい!」


 シオンは剣を抜く。

 リンも杖を構えた。

 ルミナとミナも身構える。

 フィアは弓を取り出す。


 そして。


 狼は低く唸った。

 森の空気が張り詰める。

 だが。

 不思議なことに。

 僕はその狼を見ていて思った。

 敵意はある。

 でも。

 どこか苦しそうだった。


「……?」


 その違和感が胸に残る。


 こうして。


 アキラたちの最初の事件が始まる。

 そしてこの出会いが。

 森の異変の真相へ繋がっていくことになるのだった。

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