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第三部 世界巡遊編 大森林エルフィリア

第一話 大森林エルフィリア


 学園を出発して三日後。

 僕たちを乗せた馬車は大森林エルフィリアへと続く

街道を進んでいた。


 窓の外には広大な森が見える。

 本当に大きい。

 見渡す限り緑だ。


「すごい……」


 僕は思わず呟いた。


「でかいな」


 シオンも感心している。

 リンは地図を広げていた。


「この森だけで小さな国くらいの広さがあるらしいよ」


「森が?」


「森が」


「広すぎない?」


「広い」


 メイアが頷く。

 そして。


「プリン食べる?」


「なぜ今」


 もはや挨拶みたいになっていた。

 一方。

 ルミナとミナはというと。


「見て!」


「見て!」


 窓に張り付いていた。

 子供か。

 いや実際子供寄りだけど。


「鳥!」


「鳥!」


「うん鳥だね」


「鹿!」


「鹿!」


「うん鹿だね」


 元気だった。

 とても元気だった。

 しばらく進むと。

 馬車が止まった。


「到着です」


 御者さんが声を掛ける。

 僕たちは外へ出た。

 そして。


「おぉ……」


 全員が思わず声を漏らした。


 目の前には巨大な森。

 見上げるほど高い木々。

 木漏れ日。

 澄んだ空気。

 風に揺れる葉の音。

 まるで別世界だった。


「綺麗……」


 リンが感動している。

 ルミナとミナは目を輝かせていた。


「冒険っぽい!」


「冒険っぽい!」


「冒険だからね」


 僕は苦笑した。

 その時だった。


 ガサガサッ!


 近くの茂みが揺れる。

 全員が身構える。


「敵か?」


 シオンが剣に手を掛ける。


 すると。


 茂みから飛び出してきたのは――

 小さな白い生き物だった。


「……」


「……」


「うさぎ?」


 僕が言う。

 だが違った。

 耳は長い。

 見た目もうさぎっぽい。


 でも。


 なぜか葉っぱを頭に乗せていた。


「なんだあれ」


 シオンが呟く。

 すると。

 白い生き物がこちらを見る。


 そして。


「ぷきゅ」


 鳴いた。


「可愛い」


 リンが即答した。


「可愛い」


 ルミナ。


「可愛い」


 ミナ。


 女子陣が秒で陥落した。

 しかし。

 次の瞬間。

 白い生き物はルミナのバッグを咥えた。


「あっ」


 そして。

 全力疾走。


「逃げた!?」


 僕が叫ぶ。


「お菓子が入ってる!」


 ルミナ。


「大変!」


 ミナ。


「追えぇぇぇ!!」


 なぜか全員で追いかけることになった。

 森の中。

 白い生き物はものすごく速かった。


「待てー!」


 シオンが叫ぶ。


「止まれー!」


 ルミナ。


「お菓子返してー!」


 ミナ。


 白い生き物はどんどん奥へ進む。


「速いな!?」


 僕も走る。

 そして。

 気付けば。

 かなり森の奥まで来ていた。


 その時。


 白い生き物がぴたりと止まった。


「あれ?」


 ルミナが首を傾げる。

 すると。

 目の前の木の上から声が聞こえた。


「そこまでだよ」


 知らない声だった。

 僕たちは一斉に見上げる。


 木の枝の上。

 そこには一人の少女が立っていた。

 長い翠色の髪。

 透き通るような緑の瞳。

 森を思わせる装束。


 年齢は僕たちと同じくらい。


 そして。

 かなり美人だった。


挿絵(By みてみん)


「え?」


 僕たちが固まる。

 少女は軽やかに地面へ降り立つ。

 そして。

 白い生き物を抱き上げた。


「また悪戯したの?」


「ぷきゅ」


 反省してなかった。

 少女は僕たちへ向き直る。

 そして。

 少し申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめんなさい」


「この子、人の荷物を持っていく癖があって」


「癖なの!?」


 僕は思わずツッコんだ。


「よくあること」


 少女は真顔で答えた。


「よくあるんだ……」


 大丈夫なのかこの森。

 すると。

 少女は少し不思議そうな顔になる。


「あなたたち」


「うん?」


「学園から来た人たち?」


 僕たちは顔を見合わせる。


「そうだけど」


 答えると。

 少女は少し驚いた顔をした。

 そして。

 どこか嬉しそうに笑った。


「やっと会えた」


「え?」


「アルス様から聞いてた」


 その言葉に。

 全員が反応する。


「アルス?」


「うん」


 少女は頷いた。

 そして。

 胸に手を当てる。


「私はフィア」


 優しい笑顔だった。


「エルフィリアの案内役だよ」


 こうして。

 アキラたちは新たな仲間――

 フィアと出会う。

 そしてまだ誰も知らない。

 この森で起きている異変が。

 第三部最初の大事件へ繋がっていることを――。

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