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旅立ちの日

第二十二話 旅立ちの日


 旅立ちの日は、驚くほど晴れていた。

 青い空。

 心地良い風。

 まるで僕たちを送り出してくれているみたいだった。


 王立アルカディア学園の正門前には、多くの生徒たちが集まっている。

 僕たちの旅を見送るためだ。


「なんか緊張するなぁ……」


 僕が呟く。


「今さらか?」


 シオンが笑った。


「今さらだな」


「だって本当に出発するんだよ?」


「だから今さらだって」


 その時だった。

 遠くから慌ただしい声が聞こえる。


「待ってぇぇぇぇ!!」


「まだ出発しないでぇぇぇ!!」


 聞き覚えしかない声だった。

 僕とシオンは同時に振り返る。


「やっぱり」


「予想通り」


 全力疾走してくる二人。

 ルミナとミナだった。


「忘れ物した!」


「私も!」


 やっぱりだった。


「何忘れたの!?」


 僕が聞く。

 ルミナが胸を張る。


「お菓子!」


 ミナも胸を張る。


「お菓子!」


 重要そうに言うな。


「旅の必需品!」


「必需品!」


 完全に意気投合している。

 リンが呆れたようにため息をつく。


「出発五分前だったんだけど……」


「間に合ったからセーフ!」


「セーフ!」


「アウトだと思う」


 僕は真顔で答えた。

 その時。

 メイアが静かに荷物を確認していた。


「プリン持った」

「確認するとこそこなんだ」


 シオンが苦笑する。


「大事」


 メイアは真面目だった。

 この人はぶれない。

 本当にぶれない。

 しばらくすると。

 ベルがやって来た。


「皆さん」


 その声で自然と空気が静かになる。


「準備は整いました」


 ベルの表情は穏やかだった。

 だけど。

 どこか寂しそうにも見えた。


「ベルは来ないの?」


 僕が聞く。

 ベルは首を横に振る。


「私は遺跡を守らなければなりません」


「そっか」


「ですが」


 ベルは少し笑った。


「また必ず会えます」


 その言葉に。

 僕たちも笑顔になる。

 学園長も見送りに来ていた。


「アキラ」


「はい」


「君たちはよく頑張った」


 学園長が静かに言う。


「だが」


「これから先は学園の外だ」


「うん」


「もっと広い世界を見てきなさい」


 僕は頷いた。


 ここで過ごした日々は無駄じゃなかった。

 仲間ができた。

 笑った。

 戦った。

 泣いたこともあった。


 全部。


 大切な思い出だ。

 そして。

 出発の時間がやって来る。

 馬車へ向かおうとした時だった。


「アキラ」


 声が聞こえた。

 振り返る。

 ベルだった。


「ん?」


 ベルは少し考えてから言った。


「気を付けて」


 短い言葉。

 だけど。

 それだけで十分だった。


「うん」


 僕は笑う。


「ありがとう」


 馬車がゆっくり動き出す。

 学園の門が少しずつ遠ざかっていく。

 ルミナが窓から手を振る。


「また帰ってくるからねー!」


 生徒たちも手を振り返す。

 ミナも身を乗り出している。


「お土産買ってくるー!」


 馬車の中に笑い声が広がる。


 僕は窓の外を見る。

 遠ざかる学園。

 王立アルカディア学園。


 僕が転生してからずっと過ごしてきた場所。

 初めて友達ができた場所。

 初めて居場所だと思えた場所。


「行ってきます」


 誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。

 そして。

 学園が見えなくなった頃。


 馬車の前方に大きな街道が見えてきた。

 その先には。

 まだ見たことのない景色が広がっている。


 森。

 山。

 海。

 砂漠。


 知らない街。

 知らない人々。

 知らない冒険。

 僕たちの物語は。


 ここからもっと大きくなっていく。

 その時だった。

 ポケットの中で何かが光る。


「ん?」


 取り出してみる。

 それは。

 いつの間にか入っていた小さな結晶だった。


 白く輝く結晶。

 見覚えがある。


「アルス?」


 結晶が淡く光る。

 そして。

 優しい声が聞こえた。


『聞こえるかな、アキラ』


「うわっ!?」


 全員が驚く。


『驚かせてごめん』


 アルスの声だった。

 みんなも集まってくる。


『君たちの最初の目的地が決まった』


「最初の目的地?」


 僕が尋ねる。

 すると。

 アルスは静かに答えた。


『東の大森林――エルフィリア』


 その名前を聞いた瞬間。

 ベルから聞いた地図を思い出す。

 異変が起きている場所の一つ。


『そこで君たちを待っている人がいる』


「待っている人?」


『きっと良い出会いになる』


 アルスは少し笑った。


『それじゃあ』


『新たな旅の始まりだ』


 結晶の光が消える。

 馬車の中は静かだった。

 そして数秒後。


「新たな旅の始まりだって」


 シオンが言う。


「なんか格好いい」


 ルミナが目を輝かせる。


「冒険っぽい!」


 ミナも嬉しそうだ。

 リンは苦笑する。


「実際冒険なんだけどね」


 みんなが笑う。

 僕も笑った。

 こうして。

 学園での日々は一つの区切りを迎えた。

 そして。


 新たな旅が始まる。

 仲間たちと共に。

 世界の真実を探すために。

 まだ見ぬ出会いと冒険のために。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

これで第二部 学園編 が終わりになります

次は第三部へ入ります


ちょっとでも「面白いかも!!」っと思ったら☆とブックマーク

ポチッと押してくれると嬉しいです


あと 誤字、脱字があれば教えていただけると助かります

これからものんびり書いて行きますので

暖かい目でお願いします

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