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旅立ちの準備

第二十一話 旅立ちの準備


 遺跡から帰ってきて数日。

 王立アルカディア学園はいつも通りだった。


 授業を受けて。

 昼ご飯を食べて。

 放課後にみんなで集まる。

 そんな平和な毎日。


 だけど。


 僕たちは知っていた。

 もうすぐ何かが始まることを。


 昼休み。

 いつもの中庭。

 僕とシオンは木陰のベンチに座っていた。


「なぁアキラ」


「ん?」


「結局あれは何だったんだろうな」


「どれ?」


「世界の果て」


 僕も少し考える。


 数日前。

 ベルを通してアルスから手紙が届いた。

 内容はとても短い。


世界の果てへ来てほしい。

君たちに見せたいものがある。


挿絵(By みてみん)


 それだけだった。


「世界の果てってどこなんだろう」


「名前からして遠そう」


「雑な感想だな」


 シオンが笑う。

 でも僕も同意だった。

 その時。


「見つけたー!」


 元気な声が聞こえた。

 振り向く。

 ルミナだった。

 その後ろにはミナ。

 さらにリンとメイアもいる。


「みんな集合!」


 ルミナが言う。


「何かあったの?」


「大変!」


 ミナも真面目な顔をしている。

 珍しい。

 本当に珍しい。

 シオンも察したらしい。


「大事件か?」


「うん!」


 二人同時に頷く。

 そして。

 ルミナが叫んだ。


「食堂の限定プリンが売り切れてた!」


 沈黙。


「平和だなぁ……」


 僕は空を見上げた。


「いや聞いて!」


 ミナが抗議する。


「三十個限定だったんだよ!?」


「多いな」


 シオンが呟く。


「買えなかった……」


 ルミナがしょんぼりする。

 すると。

 隣のメイアが静かに箱を取り出した。


「予備」


「え?」


「買っておいた」


 ルミナとミナが固まる。


「神様だ!」


「神様だ!」


「違う」


 メイアはいつも通りだった。

 そんな平和な時間。


 だけど。


 その日の夕方。

 ベルが慌ててやって来た。


「皆さん!」


 かなり急いでいる。

 珍しい。


「どうしたの?」


 リンが聞く。

 ベルは一枚の地図を広げた。


「世界各地で異変が起きています」


 空気が変わる。

 僕たちは地図を見る。

 そこには印が付いていた。


 東の大森林。

 西の砂漠。

 北の雪原。

 南の海。

 世界中だ。


「何が起きてるの?」


 僕が尋ねる。

 ベルは答える。


「空間の歪みです」


「歪み?」


「第三封印解除の影響でしょう」


 どうやら世界のあちこちで不思議な現象が起きているらしい。

 空に裂け目が見えたり。

 光の柱が現れたり。

 見たことのない遺跡が出現したり。

 どれも大きな被害は出ていない。


 だけど。


 放置もできない。


「つまり」


 シオンが腕を組む。


「調査が必要ってことか」


「はい」


 ベルは頷く。

 そして。

 僕を見る。


「アキラさん」


「え?」


「アルスさんが言っていた旅」


「これが始まりだと思います」


 その言葉に。

 胸が少し高鳴る。

 怖さもある。


 でも。


 どこかワクワクしていた。

 その日の夜。

 寮の部屋。

 僕は窓の外を眺めていた。

 学園の灯り。

 静かな夜。


 ここへ来てから色々なことがあった。

 シオンと出会った。

 リンと出会った。

 メイアと出会った。

 ルミナと出会った。

 ミナとも出会った。

ベルとも出会った

 いつの間にか。

 一人じゃなくなっていた。


「何考えてるんだ?」


 シオンだった。

 いつの間にか部屋に入ってきている。


「ノックして」


「したぞ」


「本当に?」


「たぶん」


 怪しい。

 シオンは隣に座った。


「不安か?」


 少し考える。


「少しだけ」


「だろうな」


 シオンは笑う。


「でも」


「ん?」


「俺は楽しみだ」


 真っ直ぐな目だった。


「知らない場所」


「知らない人」


「新しい冒険」


 シオンらしい。


「まぁ確かに」


 僕も笑う。

 すると。

 窓の外から声がした。


「おーい!」


 見ると。

 ルミナとミナがいた。


「何してるの?」


「旅の計画!」


「早いよ!?」


 まだ決まってない。

 その後。

 なぜか全員集合した。


 いつものメンバー。

 みんな楽しそうだった。


「旅かぁ」


 リンが微笑む。


「楽しみ」


 メイア。


「お菓子いっぱいあるかな!」


 ルミナ。


「あるといいな!」


 ミナ。


「まずそこか」


 僕とシオンが同時にツッコんだ。

 みんなが笑う。

 その笑い声は夜空へ消えていった。


 そして。


 翌朝。

 学園長から正式な許可が下りる。

 異変調査のための旅。

 期間は未定。

 行き先は世界各地。

 それは。

 ただの調査ではない。

 新しい冒険の始まりだった。


 こうして。


 王立アルカディア学園での日々は一区切りを迎える。

 もちろん。

 学園がなくなるわけじゃない。

 いつかまた戻ってくる。

 だけど。

 物語の舞台は少しずつ広がっていく。

 学園から世界へ。

 そして。

 まだ誰も知らない場所へ。

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