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世界の真実

第二十話 世界の真実


 白い世界。

 どこまでも続く光の大地。

 僕たちはアルスの前に座っていた。

 なんだか授業みたいだ。


 ただし。


 先生が伝説の英雄らしい。

 規模がおかしい。


「さて」


 アルスが穏やかに話し始める。


「何から話そうかな」


「大事なところからで!」


 シオンが即答した。


「了解」


 アルスは笑った。

 意外とノリが軽い。


「まず結論から言おう」


 アルスの表情が少し真剣になる。


「この世界は滅びかけたことがある」


 全員が息を呑んだ。


「滅びかけた?」


 リンが聞く。


「うん」


 アルスは頷く。


「今から千年以上前」


「世界そのものが崩壊寸前だった」


 静かな声だった。

 だけど重みがある。


「原因は?」


 ベルが尋ねる。


「魔力の暴走」


 アルスは答えた。


「世界中の魔力が制御不能になったんだ」


 空が裂け。

 大地が崩れ。

 海が消え。

 多くの命が失われた。

 想像もできない話だった。


「その時に生まれたのが封印なんだ」


 アルスが続ける。


「四つの封印によって世界は安定した」


「じゃあ封印は悪い物じゃないの?」


 ルミナが聞く。


「悪い物じゃないよ」


 アルスは優しく答える。


「むしろ世界を守るための仕組みだった」


 なるほど。

 今までなんとなく危険な物だと思っていた。

 でも違うらしい。


「じゃあ何で解除するんだ?」


 シオンが腕を組む。

 当然の疑問だった。

 すると。

 アルスは少しだけ悲しそうに笑った。


「限界だからだよ」


「限界?」


「封印は永遠じゃない」


 千年以上も世界を支え続けた。

 その代償として。

 少しずつ弱くなっている。


「だから新しい形へ作り直さなきゃいけない」


 アルスは空を見上げた。


「そのために必要なのが」


 そして。

 僕を見る。


「転生者なんだ」


「僕?」


 思わず指を差す。


「うん」


「なんで?」


 アルスは少し笑った。


「君は偶然ここへ来たわけじゃない」


 その言葉に。

 胸がドクンと鳴る。


「君の魂は選ばれたんだ」


「選ばれた?」


「世界を繋ぐ役目として」


 意味が分からない。

 僕はただの高校生だった。

 勉強も普通。

 運動も普通。

 特別な人間じゃない。


 すると。


 まるで心を読んだようにアルスが言う。


「特別な力があったから選ばれたんじゃない」


「え?」


「君だから選ばれたんだ」


 優しい声だった。


「優しさも」


「仲間を大切にするところも」


「諦めないところも」


「全部含めてね」


 なんだか照れる。

 すごく照れる。


「褒められてる?」


 僕。


「褒められてるな」


 シオン。


「褒められてるね」


 リン。


「褒められてる」


 メイア。

 逃げ場がなかった。

 すると。

 ミナが手を挙げる。


「質問!」


「どうぞ」


 アルスが答える。


「私は?」


 全員がミナを見る。

 アルスは微笑んだ。


「君も大事な存在だよ」


「やった」


 ミナが喜ぶ。


「ルミナもね」


「やった!」


 ルミナも喜ぶ。

 なんだろう。

 この姉妹。

 緊張感をどこかへ置いてきている。


 その時だった。


 アルスの表情が少しだけ曇る。


「だけど」


 空気が変わった。


「問題もある」


 みんなの表情が引き締まる。


「第三封印が解除されたことで」


「世界の外側にいる者たちも動き始める」


「外側?」


 僕が聞く。

 アルスは頷いた。


「今の君たちではまだ知らない存在だ」


 世界の外。

 その言葉だけで想像が追いつかない。


「敵?」


 シオンが聞く。


「敵もいる」


 アルスは静かに答える。


「でも全員が敵じゃない」


「味方もいるんだ」


 すると。


 白い世界の空が光った。

 キラキラとした光の粒が舞う。

 綺麗だった。

 本当に綺麗だった。


「時間みたいだね」


 アルスが立ち上がる。


「もう?」


 ルミナが少し残念そうに言う。


「また会えるよ」


 アルスは笑う。


「次はもっと色々話そう」


 そして。


 アルスは最後に僕を見る。


「アキラ」


「はい」


「次に会う時」


 その金色の瞳が優しく細められる。


「君は新しい旅へ出ることになる」


「旅?」


「うん」


 アルスは頷いた。


「学園の外へ」


「世界の向こうへ」


 その言葉を聞いた瞬間。

 胸が少し高鳴った。

 怖さもある。


 でも。


 楽しみな気持ちもあった。

 光が強くなる。


 そして。


 気付けば。

 僕たちは遺跡の広間へ戻っていた。

 白い扉は静かに閉じている。


 だけど。


 もう以前とは違って見えた。

 僕たちは知ったのだ。

 この世界がどれだけ広いのか。


 そして。


 まだ見ぬ世界が待っていることを。

 帰り道。

 シオンが笑いながら言った。


「つまり」


「うん」


「また面白そうなことが始まるんだな」


「そのまとめ方でいいのかな」


 僕は苦笑する。

 リンも笑った。

 ルミナとミナも楽しそうだ。

 メイアはプリンを食べている。

 やっぱり通常運転だった。


 だけど。


 その何気ない帰り道が。

 学園編最後の穏やかな時間になることを。

 この時の僕たちはまだ知らなかった。

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