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白き扉の前で

第十八話 白き扉の前で


 第三封印解除まで残り二日。

 学園全体がどこか落ち着かない雰囲気になっていた。


 とはいえ。


 生徒たちは普通に授業を受けているし。

 シオンは相変わらず元気だし。

 ルミナとミナは相変わらず食堂の新メニューを探している。


 見た目はいつも通りだった。

 ただ。

 ベルだけは違った。


 放課後。

 僕たちはベルに呼び出された。

 場所は古代遺跡の入口。

 何度も来た場所だ。

 だけど今日は空気が違う。


「来ましたね」


 ベルが静かに言う。


「何かあったの?」


 リンが聞く。


 ベルは頷いた

。

「第三封印の反応が強くなっています」


 その言葉に全員の表情が引き締まる。


「つまり?」


 シオンが尋ねる。


「封印が解除される場所が判明しました」


「おぉ」


 思わず声が漏れた。

 ついに。

 ここまで来たのだ。


 ベルの案内で遺跡の奥へ進む。

 見慣れた通路。

 見慣れた石壁。


 だけど。


 奥へ進むほど魔力が濃くなっていく。


「なんか空気重くない?」


 僕が言う。


「気のせいじゃない」


 メイアが答えた。


「魔力が集まってる」


 確かに。

 肌が少しピリピリする。

 ルミナとミナも真剣な顔になっていた。

 しばらく歩くと。

 大きな広間へ辿り着いた。


 そして。


 僕は足を止めた。


「……え?」


 そこにあったのは。

 巨大な扉だった。

 真っ白な扉。

 どこまでも美しい装飾。

 無数の紋章。


 そして。


 圧倒的な存在感。

 見覚えがある。

 間違いない。


「夢で見た扉だ……」


 僕は小さく呟いた。

 全員がこちらを見る。


「夢?」


 リンが聞く。

 僕は頷いた。


「前に見たんだ」


「全く同じ扉を」


 ベルの目が少し見開かれた。


「やはり……」


「やはり?」


「アキラさん」


 ベルが真剣な表情になる。


「あなたは第三封印と強く繋がっています」


「僕が?」


「はい」


 意味が分からない。

 僕はただ転生しただけだ。

 魔法も偶然使えるようになっただけ。

 平凡な学生だったはずなのに。


 その時だった。


 扉が淡く光り始める。

 ゴォォォ……

 低い音が広間に響く。


「なに!?」


 シオンが身構える。

 リンも杖を握る。

 ルミナとミナは驚いている。

 すると。


 扉の表面に文字が浮かび上がった。


【資格者確認】


【転生者確認】


【封印解除準備開始】


 全員が固まる。

 そして。

 一斉に僕を見る。


「……僕?」


「アキラだな」


 シオン。


「アキラね」


 リン。


「アキラだね」


 ルミナ。


「アキラだね」


 ミナ。


「アキラ」


 メイア。


「みんな見ないで!?」


 なんだか恥ずかしかった。

 だが。

 ベルは笑っていなかった。

 むしろ青ざめていた。


「おかしい……」


「何が?」


 僕が聞く。

 ベルは扉を見つめる。


「本来なら解除まで二日あるはずなんです」


「うん」


「なのに」


 ベルの声が少し震える。


「封印が予定より早く動き始めています」


 広間が静まり返る。


「つまり?」


 シオンが聞く。

 ベルはゆっくり答えた。


「今日かもしれません」


 その瞬間。

 空気が変わった。

 誰も言葉を発せない。

 残り二日のはずだった。

 準備期間もあると思っていた。


 なのに。


 今この瞬間。

 運命が動き始めている。

 すると。

 ルミナが僕の袖を掴んだ。


「アキラ」


「ん?」


「怖い?」


 少しだけ考える。

 正直。

 怖くないと言えば嘘になる。

 でも。

 僕は笑った。


「ちょっとだけ」


「私も」


 ルミナが笑う。

 ミナも隣で頷いた。


「でも」


 シオンが肩を組んでくる。


「一人じゃないだろ?」


「うん」


「俺たちがいる」


 リンも笑う。


「今さら置いていかないよ」


 メイアも小さく頷く。


「プリンもある」


「それは違うと思う」


 思わずツッコんだ。

 緊張していたはずなのに。

 少しだけ気持ちが楽になる。


 そして。


 白い扉の向こう側。

 誰も知らない場所で。

 一人の人物が静かに目を開いた。


「ようやくか」


 その瞳は金色に輝いていた。

 そして。

 静かに微笑む。


「待っていたよ」


「アキラ」

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