お泊まり会と静かな予兆
第十七話 お泊まり会と静かな予兆
王都観光から帰ってきた翌日。
ルミナの部屋ではちょっとした騒ぎになっていた。
「お泊まり会しよう!」
ミナが元気よく言った。
「する!」
ルミナも即答した。
話が決まるまで一秒もかかっていない。
その日の夜。
ルミナの部屋には。
ルミナ。
ミナ。
リン。
そしてなぜかメイア。
四人が集まっていた。
「なんでメイアもいるの?」
僕が聞く。
「誘われた」
「なるほど」
納得した。
メイアの腕には大きな箱が抱えられている。
「それ何?」
「プリン」
「やっぱりか」
予想通りだった。
シオンが隣で笑っている。
「もうプリンはメイアの一部だろ」
「違う」
即答だった
。
「プリンは友達」
「重症だった
」
僕は静かに呟いた。
その夜は賑やかだった。
恋バナをしたり。
最近の出来事を話したり。
ミナが外の世界で見た変わった生き物の話をしたり。
ルミナが学園祭の思い出を語ったり。
笑い声が絶えなかった。
そして。
夜も更けた頃。
みんなが眠り始める。
だが。
ミナだけは窓の外を見ていた。
「……」
いつもの明るい表情ではない。
どこか不安そうだった。
その時。
「眠れないの?」
声を掛けたのはルミナだった。
ミナは少しだけ笑う。
「ちょっとね」
「どうしたの?」
「分からない」
ミナは夜空を見上げた。
「でもね」
「うん」
「もうすぐ何かが起こる気がする」
ルミナは黙って聞いていた。
「怖い?」
「少しだけ」
その言葉を聞いて。
ルミナは優しく笑った。
「大丈夫」
「え?」
「一人じゃないから」
ミナは目を丸くした。
そして。
少しだけ笑う。
「そうだね」
二人は並んで夜空を見上げた。
満月が静かに輝いていた。
一方その頃。
学園の地下。
ベルは古代遺跡の最深部にいた。
目の前には巨大な石碑。
そこに刻まれた文字を見ている。
「やはり……」
石碑にはこう刻まれていた。
【第三封印が解かれる時】
【世界の真実への扉が開く】
ベルの表情が険しくなる。
「世界の真実……」
それは。
アキラたちがまだ知らない話。
異世界の成り立ち。
封印の意味。
そして。
アキラ自身に関わる秘密。
全てに繋がっていた。
翌日。
学園はいつも通りだった。
授業。
昼休み。
放課後。
平和な日常。
だけど。
少しずつ変化が起き始めていた。
学園の魔力測定器が反応する。
夜空に不思議な光が見える。
遺跡の一部が勝手に動き出す。
小さな異変。
本当に小さな異変。
けれど。
確実に何かが近付いていた。
放課後。
僕たちはいつもの中庭に集まっていた。
「平和だねぇ」
僕が言う。
「最近その台詞よく聞くな」
シオンが笑う。
「だって平和だし」
「フラグにしか聞こえない」
「やめて」
僕は即座に否定した。
しかし。
その時だった。
学園の時計塔が突然光り始めた。
「え?」
全員が空を見上げる。
淡い金色の光。
それは数秒で消えた。
だけど。
誰もが見ていた。
「今の何?」
リンが呟く。
ベルだけが静かに目を閉じる。
「始まりましたね」
その日の夜。
アキラは夢を見た。
白い空間。
どこまでも続く光。
そして。
見覚えのない扉。
巨大な扉だった。
その向こうから声が聞こえる。
『もうすぐ会える』
『転生者よ』
その瞬間。
扉が少しだけ開いた。
眩しい光が溢れる。
そこで夢は終わった。
翌朝。
僕はいつもより早く目を覚ました。
「変な夢だったな……」
窓の外を見る。
いつもの学園。
いつもの朝。
だけど。
なぜだろう。
胸が少しだけ騒いでいた。
何かが始まる。
そんな予感がしていた。
そして。
第三封印解除まで――
残り二日。
平和だった学園生活は。
静かに終わりへ向かっていた。
そしてその先には。
世界の真実。
アキラの転生の秘密。
封印の正体。
新たな仲間と敵。
全てが待っている。




